Yahoo!ニュース

なぜ「若者に強く言えない」超草食系上司が増えているのか? その背景とは?

横山信弘経営コラムニスト
(ChatGPT DALL-E 3 にて筆者作成)

「若者に辞められると困るので、強く言えません」

そう言って、若者に厳しく指導できない上司が急増している。褒めたり承認はするが、組織の利益のために、そして若者本人の成長のために必要な指導ができない「超草食系」の上司たちである。

直属の上司だけではない。

「厳しく指導しろと言いますが、今の若者はちょっと厳しくすると辞めてしまいますから」

といって、踏み込んだ対策をとらない経営者も増えている。多くの企業で「期待最大化」ではなく「不安最小化」の思考が蔓延している。

その背景とは何か?

今回の記事では、サイレントマジョリティとノイジーマイノリティという言葉を使って解説していきたい。

■サイレントマジョリティとは何か?

サイレントマジョリティとは、積極的に発言しない多数派のことだ。サイレントマジョリティの反対は、積極的に発言する少数派である。あまりに声高に主張するので「ノイジー(うるさい)」「ラウド(やかましい)」という言葉をつけて「ノイジーマイノリティ」「ラウドマイノリティ」と呼ぶこともある。

サイレントマジョリティを無視してはならない。

「月曜日に有給休暇をとるなんて、社会人として失格だ」

「入社一年目は有給休暇をとらないことが常識だぞ」

このようなことを日ごろからマネジャーが口にしていたら、メンバーは有給休暇をとりづらいだろう。「同調圧力」が働くからだ。

だからこそ心理的安全性が重要なのだ。サイレントマジョリティが「サイレント」にならないために。

■ノイジーマイノリティとは何か?

いっぽう声の大きなノイジーマイノリティは、厄介だ。少数派の意見も、もちろん無視できない。しかしマネジャーが心理的安全性の概念を誤解し、ノイジーマイノリティの意見を重視し過ぎると、組織内のバランスが崩れることがある。

学校の給食でたとえてみよう。

生徒の中に海老アレルギーの人がいた。その生徒が、

「私は海老を食べられないので、給食で海老が出たら食べなくてもいいですか?」

と言ってきたら、無視してはいけない。

「そんなことを言っていたら、みんなも真似する。君だけ例外は許さない。何でも残さずに食べろ」

などと先生が言ったらハラスメントだ(ハラスメントで済まないかもしれない)。本人だけ別のメニューを提供するか、お弁当持参を許可する等の個別対応が必要だろう。

しかしその生徒(もしくは親)が、

「海老アレルギーの生徒がいるのに、給食に海老が入ったメニューがあるのはおかしい。すぐに給食のメニューから外すように」

と訴えたら、ノイジーマイノリティである。個別対応ではなく、全体対応してしまうと、前述したとおりバランスが保てなくなる。

新刊『若者に辞められると困るので、強く言えません:マネジャーの心の負担を減らす11のルール』では、どのようにバランスをとるのか11のルールを解説した。

心理的安全性は大事だ。もちろん傾聴も重要だ。しかし、どの意見に耳を傾け、どの主張は個別対応し、どんな提案はスルーすべきか。それを見極めないといけない。

「若者に強く言えません。強く言うと辞めてしまうから」

という超草食系上司の訴えは、本当に正しいのか。中には厳しく言われると、退職したくなる若者もいるだろう。しかしそれは大多数なのか、それとも一部の少数なのか? それを見極めるべきだ。

厳しいかどうかは別にして、キチンと指導してほしいという若者も多いのではないか。

ノイジーマイノリティに惑わされていると、職場におけるモラルハザードを引き起こすリスクがある。マネジャーのバランス感覚が問われている。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

横山塾~「絶対達成」の思考と戦略レポ~

税込330円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

累計40万部を超える著書「絶対達成シリーズ」。経営者、管理者が4万人以上購読する「メルマガ草創花伝」。6年で1000回を超える講演活動など、強い発信力を誇る「絶対達成させるコンサルタント」が、時代の潮流をとらえながら、ビジネスで結果を出す戦略と思考をお伝えします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

横山信弘の最近の記事