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もしも「やる気のない若者」の上司が「働かないおじさん」だったら

横山信弘経営コラムニスト
(ChatGPT DALL-E 3 にて筆者作成)

■日本にも「静かな退職」をするZ世代が増えている

もしも「やる気のない若者」の上司が「働かないおじさん」だったら?

可能性があるシナリオを3つ考えてみた。

(1)「やる気のない若者」が奮起する
(2)「働かないおじさん」が奮起する
(3)「両者」ともに変わらない

これら3つのシナリオの内容と、起こり得る可能性の順位については後述するとして、まずは「やる気のない若者」と「働かないおじさん」の定義について言及する。

やる気のない若者とは、いったいどのよう若者を指すのか。近年、日本でも見られるようになった「静かな退職(Quiet Quitting)」という現象を知っているだろうか。表面上は企業に所属しながらも、実質的には最低限の仕事をこなすだけの状態を指し、まるで退職したかのような働き方をするZ世代の若者たちのことだ。

アメリカのティックトッカーによって拡散された独特の概念である。現在では世界中のZ世代で使われるようになった。

■「働かないおじさん」が及ぼす影響3選

「働かないおじさん」という言葉は、それほど新しい言葉ではない。

変化に対して消極的で、定年まで時間を潰すだけの高齢の社員を指すことが多い。まったく働かないわけではないが、「静かな退職」をする若者と似て、必要最低限の仕事しかこなさないと周りから見られている。

働かないおじさんが職場に及ぼす影響は、大きく分けると以下の3つだ。

(1)リーダーシップの欠如

本来は社歴の長いベテラン社員が模範となるべきだが、働かないおじさんは若手社員に良い手本を示さない。そのため組織のリーダーシップが欠如することが多い。

(2)コミュニケーションの障害

働かないおじさんは、チームやプロジェクト内で積極的なコミュニケーションをとらない。そのため情報の伝達がスムーズに行われなくなる(レポートラインの機能不全)ことが多い。

(3)若手社員のモチベーション低下

働かないおじさんの態度が容認されることで、怠惰が許される組織文化が形成される。そのため若手社員が「自分も努力する意味がない」と感じることがある。

他にも、組織改革・イノベーションの弊害になることも多く、働かないおじさんの存在は以前にも増して無視できないものになっている。

■もしも「やる気のない若者」の上司が「働かないおじさん」だったら

さて、ここからが本題である。

静かな退職を選択するような「やる気のない若者」の上司が「働かないおじさん」だったら、いったいどうなるのか?

可能性があるシナリオを3つ考えてみた。

(1)「やる気のない若者」が奮起する
(2)「働かないおじさん」が奮起する
(3)「両者」ともに変わらない

まず、若者が状況を打開しようと奮起するケースだ。

先述したとおり、働かないおじさんの態度が容認されることで「怠惰が許される」と若者が感じ、やる気を失うという悪循環が起きることは多い。しかし上司と部下の関係になったらどうか?

故障でエレベーターが止まり、二人きりになったら、さすがにどちらかが事態を打開しようと動きはじめるだろう。一緒にいる高齢の人が頼りなさそうなら、若者がどうやって助けを呼ぶか考える。スマホを取り出して、外部と連絡をとろうとしたりするのではないか。

いっぽう、働かないおじさんのほうが責任感から奮起するケースも考えられる。5人や6人のチームであれば、

「私が今さら頑張ったって……」

という意欲のない態度をとるかもしれない。しかし二人きりになったら、昔のことを思い出し、

「この若者を何とかしなければ」

「自分の子どもだと思えば、放っておけない」

と奮い立つかもしれない。こちらのほうが可能性が高いと私は思う。少なからず今では「働かないおじさん」などとレッテルを貼られているが、それでも活躍した過去があったはずだ。そうでなければ長く組織にいられない。

最後は、どちらも変わらず、モラルハザードに陥るケースだ。野球選手でたとえてみよう。外野フライが上がっても、どちらも見合ってボールをとりにいかず、毎回ポテンヒットを許すような関係だ。まさに無秩序な状態。

故障でエレベーターが止まり、二人きりになった場合でたとえるなら、どちらもその場に座り込んで、ひたすら助けを待つような状態だ。私はこのシナリオは、ほとんど起こらないと考える。よほど両者の心身の状態が悪い場合は除いて。

■起こり得る可能性の順位

したがって起こり得る可能性の順位としては、次の通りだ(私見)。

1位:「働かないおじさん」が奮起する
2位:「やる気のない若者」が奮起する
3位:「両者」ともに変わらない

そもそもなぜ若者は「静かな退職」をしてしまうのか? そのような態度をしても許される環境になっているからだ。「働かないおじさん」以外の組織マネジャーが変わるしかない。

新刊『若者に辞められると困るので、強く言えません』で書いた。

将来のある若者を、怠惰にさせてはならない。「叱る」「注意する」「指摘する」「褒める」「期待する」「感謝する」こういった基準・モノサシを正しく理解し、マネジメントしていくことが重要だ。

「働かないおじさん」よりも、まずは「やる気のない若者」対策である。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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