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口だけは達者で無責任な社長の口ぐせ「ベスト10」発表!

横山信弘経営コラムニスト
(ChatGPT DALL-E 3 にて筆者作成)

これまでに口だけ達者な社長を数えきれないほど見てきた。

「私が先頭に立ってこの事業を絶対成功させる! 私を信じてくれ」

「今年は大きなチャレンジをしていく。今までにない経営革新を断行する!」

ところが、このような大きなことを言った割には、リーダーシップを発揮しない、みずからは変わらない、責任をとらない、といった社長たちは本当に多いのである。

今回は、そんな口だけ達者で無責任な社長がよく使う口ぐせ「ベスト10」を発表したい。(※ランキングはすべて筆者の感覚)

1位:「私はいつでもやる覚悟はある。ただし今はタイミングが悪すぎる」

これは危機感の低さと戦略的な動きを欠いた社長の口ぐせである。いつも大きな風呂敷を広げる割には、「今はその時期じゃない」と言って煙に巻く。実際、このように発言する社長の下で働く社員たちは、義務的な仕事に追われ、主体的にチャレンジすることを避ける傾向にある。当然、優秀な若者の定着率も低くなるだろう

2位:「計画は完璧だった」

自己正当化する社長の口ぐせである。「私が立てた計画は完璧だったが、マネジャーたちが実行に移さなかったのだ」と言いたげだ。

しかし、計画が絵に描いた餅で終わってしまう原因は、往々にして計画遂行のリーダーシップが足りないからだ。計画を立てることと、それを実行に移すことは別問題である。現場の実行力が足りないのなら、社長が前面に出てリードするべきである。そうしなければ、計画はいつまで経っても「絵に描いた餅」のままだ。

3位:「社長の私がイチイチ口出しすることか?」

イチイチ口出しすることである。責任と権限の意味を正しく理解できてない社長がよく言う口ぐせだ。社長が自身の権限や影響力を放棄すれば、組織全体の意思決定に致命的な穴を開けるだろう。

4位:「うちの業界は特殊だから……」

昔から有名な、「できない言い訳」を言う人の典型的な口ぐせである。

この言い訳は、業界標準や他社の良い手法を取り入れることから逃げるために使われる。社員を鼓舞しておいて、こんな言い訳をされたら社員は即刻やる気をなくすだろう。業界独自の状況を理解しつつも、外部のアイデアに適応する柔軟さが社長には求められる。

5位:「売れる商品があれば、いくらでも売るんだが」

論理的に破綻した言い訳だ。「東大に受かる頭脳があれば、私だって東大に合格できる」と言っているようなもの。説得力がまったくない。

大きなことを言って社員を勇気づけたわりに「たられば」を使って言い訳するようでは社長業は務まらない。自社の製品力やマーケティング戦略に欠陥があることを認めるべきだろう。

6位:「人事部が適切な人材を確保していないのが問題だ」

社長である私に問題はない。社員にこそ問題があり、その問題の真因は人事部にある、という主張だ。みずからのリーダーシップ不足をヒューマンリソースに転嫁する非建設的な言い分と言えよう。

戦略や計画、マネジメントの仕組みやスキルではなく、「人」にこそ問題があるという考え方は、とても短絡的で危険だ。社長の人望をなくす原因となるので、すぐにやめたほうがいい。

7位:「市場が予想以上に不安定だった。それがすべてだ」

想定外のことを想定内にすることが、マネジャーの基本スキルである。社長が市場環境のせいにするだなんて言語道断だ。

また外部環境のせいにして開き直る姿勢は、マーケットに対する深い洞察や適応能力が足りないことを示している。感度が鈍いのなら、外部環境の変化のみならず内部環境の変化にも気付かない可能性が高い。このような社長の下では優秀な社員は定着しないだろう。

8位:「技術革新が速すぎて追いつけなかった」

今に始まったことではない。刻々と変わるテクノロジーへの対応不足は致命的だ。わかっていることなのにできていないのだから、リーダーとして失格である。環境に適応できない組織は淘汰されていく。それは歴史が証明している。

9位:「政府の経済政策が原因だ。何とかならんのか」

名著『7つの習慣』で書かれている「影響の輪」と「関心の輪」を理解できていない社長の口ぐせである。自分たちでコントロールできるものは何か? コントロールできないものは何か? この区別ができずに政策のせいにするのはやめよう。社長を信じてついてきた社員は、ガッカリするだろう。

10位:「私は忙しいんだ。細かいことまで目が行き届かなくて当たり前だ」

責任転嫁ではなく、責任放棄する社長の口ぐせだ。これでは、仕事をさぼっていると言われても仕方がない。

これらの「口ぐせ」には、以下2つの特徴がある。

(1)経営に対して真摯な姿勢を欠いていること
(2)それを組織全体に浸透させてしまっていること

社長が口だけで責任回避する姿勢が、組織文化としても定着してしまっている。

「謙虚で素直に……」

と言いながら、自分自身が謙虚でなく、素直に経営をしていないのなら、周りも同じような姿勢になっていくことだろう。

リーダーは社内外の状況を正確に把握し、臨機応変に対応していかなければならない。大きな風呂敷を広げるのはいいが、大事なことはそれを確実に実現させていくことだ。「情熱の自己資本比率」が低い社長は、もっと情熱資本を調達したほうがいい。

<参考記事>

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経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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