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新社会人は、残念な大人たちからの「ユメハラ」「WILLハラ」に気をつけよう!

横山信弘経営コラムニスト
(ChatGPT DALL-E 3 にて筆者作成)

■「キャリアアンカー論」と「プランドハプンスタンス論」

今回は、これから社会人になる人のほとんどが知らない事実について書く。その事実とは中盤に書き記すとして、まずはモノサシ(判断基準)についてである。新社会人は、上司が言っていること、メディアが言っていることを鵜呑みにすることなく、自分自身のモノサシを持つことが大事である。自分なりのモノサシがあることで、

「もうすぐ社会人になるのに、夢のひとつもないのか?」

「自分のやりたいことがわからないなんて、どうかしてる」

といった「ユメハラ」「WILLハラ」に悩まされることも減るだろう。

そのためにも、キャリアプランには「キャリアアンカー論」と「プランドハプンスタンス論」があることを、まずは知っておこう。

確固とした自分のキャリアゴールを見据えたうえで自己研鑽を繰り返し、働く環境を自らの意志で選択するのが「キャリアアンカー型」で、偶然によって身を置いた場所で努力し、仕事をしていくなかで自分のキャリアが肯定的に発展していくというスタイルをとるのが「プランドハプンスタンス型」である。

ただ、どちらもネーミングが覚えづらいため、私は「山登り」と「川下り」にたとえて言い直して紹介している。

■「山登り」と「川下り」のキャリアプラン

「山登りタイプ」のキャリアプランとは「キャリアアンカー論」と同じ。山の頂上を見据えて一歩一歩登っていくプランだ。いっぽう「プランドハプンスタンス型」が「川下りタイプ」。川の流れに身を委ねるプランである。自分がどうありたいのか、何がしたいのかが不明瞭なので、運や出会いを大事にする。

2つのタイプを比較すると、山登りのほうが主体性を求められることだろう。登るのをやめようと思えばやめられるし、他の山を目指そうと思えば、比較的スムーズに切り替えられる。いったん下山し、自分はどんな山を登りたいのかと思い悩むこともできる。

川下りのほうは、スタートしたらなかなかやめられない。こちらも、「この川をどう下るべきか」とプランを設計しなければならないが、立ち止まって考える余裕はほとんどない。「出たとこ勝負」となりやすい。自然に逆らうことはできないため、自然の力を利用しながらも、舟が転覆しないように流れに乗る力量が試される。

周りの意見に流されやすい人は、自然に身を任せつつ、いろいろな出会いや偶然に感謝しながら、その中で自分がどう選択するかでキャリアを積んだほうがいいだろう。つまり「川下りタイプ」である。

自分の考え、価値観がはっきりしていて、周囲に振り回されず主体的に物事に取り組むことができる人は「山登りタイプ」が合っている。

■これから社会人になる人のほとんどが知らない事実とは?

注目すべきは両者の割合である。調査によると、8割の人は「川下りタイプ」――つまり「プランドハプンスタンス」的なアプローチで自己のキャリア形成を考えている。あとの2割が「山登り」――「キャリアアンカー」的なアプローチだ。

つまり、ほとんどの人は、自分の夢や人生の目標を見据えたうえで働く環境を選択しているわけではない。「縁」や「運」といった偶然によって身を置いた場所で努力し、自分のやりたいことを見つけていくスタイルをとっているのだ。

これから社会人になる人のほとんどは、この事実を知らないと思う。若いころから「どんな仕事をやりたいのか?」「どんな仕事をすることでやりがいを感じるのか?」と問われ続けた人が大半だからである。

「最近の若いヤツは何を考えているかわからん。何がやりたいのか、何が好きなのかも言えないなんて」

「夢がない、という若者に出会うことが多い。昔では考えられない」

今でもこんなことを言う大人たちが多数いる。昔はよかったかもしれないが、最近は一歩間違えると「ハラスメント」と言われかねない。しかし、このような人たちも、若いころに明確な夢や願望を持っていたわけではない。

私は年間5000名ほどの経営者、管理者の前で講演をしたりセミナーをしたりしている。彼ら彼女らと話をしているとわかるのだ。ほぼすべての人が、今の仕事を若いころから望んでやってきたわけではない、ということを。聞けば、

「昔は車に興味があって、車の販売ディーラーに就職しましたが、いろいろ事情があって、今は繊維メーカーで管理部長をやってます」

「大学で化学を勉強してきましたが、縁があって引越センターで働いています」

などと答える人ばかり。「就職する前からやりたいと思っていた仕事に就き、そこでがんばっていたら、夢が叶って、いまこんな仕事をしています」などと言う人は、ほぼいない。

目の前のことをがむしゃらにやっていれば、少しずつ自分が何にやりがいを感じ、どんな仕事が誇りに持てるのか理解できるようになる――8割以上は、そういう人たちである。

したがって、自分に「どんな仕事をやりたいのか?」「どんな仕事をすることでやりがいを感じるのか?」を問い続けて、苦しくなるばかりの人は、いったんその自問自答をやめるべきである。自然の流れに身を委ねてよい。どうせほとんどの人は「川下りタイプ」を選択しており、「山登り」でも「川下り」でも、どちらでも真剣にやれば、楽しいのである。

こういう事実を知ることで、自分のクライテリア(判断基準)をメンテナンスすることができる。周囲の大人たちから「自分がやりたいことは何だ? 若いんだから、それぐらい言えないとダメだぞ」とアドバイスを受けても、迷わず正しく判断できる。「それは違うな」と。

■セレンディピティ(幸福な偶然)をつかまえる方法

セレンディピティという言葉がある。素敵な偶然、予想外の発見、素晴らしい掘り出し物、という意味合いがある。主体的に自分でデザインする仕事人生もあるだろうが、自然に身を任せ、セレンディピティに満ちたキャリアを満喫する人生もあるだろう。

「自分はあの仕事をするために生まれてきたのだ」「あのテレビに出ている人みたいな仕事に就きたい」と頑なに考えると疲れる。夢がないこと、人生の目標がないことに劣等感を持つことも必要はない。

意識すべきは、「自分資産」「関係資産」「金融資産」の3つである。自己研鑽を繰り返して自分資産を高め、社内のみならず社外にも素晴らしい人脈という関係資産を増やす。精神的余裕を持つためにもしっかり稼げば、金融資産を蓄えるだろう。

これがセレンディピティをつかまえる唯一の方法であると、私は信じている。

<参考記事>

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経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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