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「ダニング=クルーガー効果」とは? 組織マネジャーが理解すべき用語解説

横山信弘経営コラムニスト
(提供:shutterstock)

ダニング・クルーガー効果とは、能力や経験の低い人ほど自信過剰になる認知バイアスのことだ。「優越の錯覚」とも呼ぶ。

20年近くコンサルタントの仕事をしていて、この心理現象は常に目の当たりにする。アマチュアであればあるほど学習や鍛錬を怠り、プロであればあるほど謙虚に自分磨きを続けるものだ。

だからまだ未熟なのにもかかわらず、部下自身が、

「今回はうまくいかなかったが、自分のせいではない」

と思い込んでいるのなら、ダニング・クルーガー効果が働いているかもしれない。まだ実力が足りていないことを自覚できていないからだ。

さらに理解を深めてもらうために、このダニング・クルーガー効果を曲線で表現した図を見てもらおう。

実際に「馬鹿の山」から見ていこう。

■「教えたがるようになる」のが悪いサイン

たとえば、SNSマーケティングについて知識も経験もまったくない場合は、多くの人は自信を持たない。

「SNSなんて、やったことがない」

「情報発信なんて、できる気がしない」

と思い込む。しかし会社の要請で、渋々はじめたとする。そうすると、みるみるうちにフォロワーが増え、話題になったらどうか?

「センスがあるよ!」

「お客様の間でも話題になってる。すごい!」

……と、周りにもてはやされる。本人も成果を出せば、ドンドンと自信を深めていくはずだ。そして、

「SNSを使って結果を出すことは、誰でもできる」

「わからないことがあれば、何でも私に聞いて」

と言いだすかもしれない。これがまさに「馬鹿の山」に登っている状態だ。

私もそういう経験は、数えきれないほどある。

コロナ時代になってからYouTubeチャンネルを開設し、人気を博すと、多くのお客様から評価された。

「私も横山さんのように、動画で発信したい」

「どんな動画を作ればウケるか?」

と質問された。そうすると、これ見よがしに、

「サムネイルはこうすべし」

「タイトルとハッシュタグのつけ方が命」

と自慢げに吹聴した。その後、YouTubeコンサルに強烈なダメだしをされるまで、自信過剰の状態は続いた。

■大事なのは「絶望の谷」に落ちたあと

本物のプロフェッショナルと出会うか、体系的な教育を受ける。そうするとほとんどの人が自分の実力不足を痛感するだろう。これが「絶望の谷」に落ちる、ということだ。

だが、これはある意味仕方がないことだ。誰だって経験する。大事なことは、落ちてからどうするかである。

「自分なんて、こんなもんか」

と自信をなくし、その道を諦めるか。

「なにくそ」

と自分を奮い立たせて、プロフェッショナルの道へと歩むのか。

マネジャーとしては当然、後者を選ぶよう促す必要がある。部下が「絶望の谷」に落ちていたら、

「誰にでもあることだ」

そう伝えなければならない。

■プロフェッショナル(成功)への道

「絶望の谷」に落ちると、自信が失われる。この失われた自信は、そう簡単には取り戻せない。

だから謙虚になってコツコツ鍛錬を積もうと努力する。このフェーズを「啓蒙の坂」と呼ぶ。

私どもコンサルタントは、まさにこの「啓蒙の坂」を一緒に登る役割を担っている。

3歩進んで2歩下がる……

2歩進んで3歩下がる……

このような繰り返しで、なかなか前に進んでいく気がしない。しかし、それでも努力を繰り返すと、ドンドン視座が上がって、いろいろな世界が見えはじめるものだ。

視座が高まり、広い世界が見えはじめると、さらに謙虚になっていく。なぜなら、有頂天になっていた過去をたまに思い出して自分を戒めるからだ。

もう、二度と「絶望の谷」に落ちたくない。

そう思うからこそ、好循環のサイクルがまわる。謙虚になればなるほど、自分磨きをしようとするし、自己研鑽すればするほど市場価値が上がっていく。

市場価値が高くなれば、同じようなプロフェッショナルと知り合う機会が増える。そのプロフェッショナルたちもまた謙虚な姿勢であるからこそ、感化され、さらに謙虚になっていく。

身についた知識が知恵を生み、知性も身についていく。この状態が「継続の台地」である。5~10年のスパンで到達するぐらいに考えよう。

<参考記事>

【スライド5枚】成果・成長・成功に導くマネジメントの「メリハリ」(後編)4500字

<参考図解>

ダニング・クルーガー効果曲線に学ぶ

<参考動画>

■【10分で解説】知識がない人ほど「マウント」とるメカニズム

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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