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複雑なことを単純に考える上司のための「超基本」 ~複雑なことを単純に考える研究所【2023年7月】

横山信弘経営コラムニスト
(著者作成)

■単純なことを複雑に考える上司が急増している

私は企業の現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタントだ。そのため、講演を依頼されるときも「絶対達成」をテーマにしているときが多い。

講演の中で、私がよく引用するのは稲盛和夫氏の名言である。その名言とは――

バカな奴は、単純なことを複雑に考える

普通の奴は、複雑なことを複雑に考える

賢い奴は、複雑なことを単純に考える

私がこの名言を紹介するのは、まさに複雑に考えがちな人ほど、安定して目標が達成できないからだ。反対に、物事をシンプルに捉え、愚直に続ける人が、常に目標を「絶対達成」できるのだ。

しかし高度情報化時代となり、単純なことを複雑に考える人が極めて多くなった。とくに部下育成を任されている上司たちに顕著だ。

単純なことなのに複雑に受け止め、悩みを深めている大人たちを見ていると、若い人たちは滑稽に思うことだろう。

■マネジャー研修で必ずする「意地悪な質問」とは?

マネジャー研修をしていて、私は必ず「ある質問」をする。その質問とは、

「今の職場で抱えている最も重要な問題は何ですか?」

である。

「重要な問題なので、日ごろから考えているでしょう。パッと思いつくままに書いてください」

と促す。

この質問は、実のところかなり意地悪な質問である。だが、誰もそれに気づかず、意気揚々と受講者たちはチャット欄に書きはじめるのだ。

どんな規模でも、どんな業界でも、マネジャーたちが抱えている問題は似たりよったりだ。10年以上も変わらない。その代表的な5つの例を書き出してみよう。

・問題(1):部下のモチベーションが低い

・問題(2):仕事が偏っている

・問題(3):情報共有ができていない

・問題(4):仕事の効率が悪い

・問題(5):報連相がない

この中でも「問題(1):部下のモチベーションが低い」が圧倒的に多い。バリエーションも豊富だ。「意識が足りない」「当事者意識がない」「主体性に欠ける」「危機感が感じられない」など、パターンは様々だが、意味はほぼ同じである。

いずれにしても、40~50代の部課長に対して質問すると、どんな職種でもこのような問題を吐露するのだ。

では、次の質問に対しては、マネジャーたちはどう答えるのだろうか?

■もっとマネジャーを混乱させる質問とは?

「その問題のあるべき姿は何ですか?」

研修の受講者全員に、今「職場で抱えている問題」を出してもらった。では、その問題を解決したあと、どうなったらいいのか。そのあるべき姿を教えてください、と問うのである。

この質問をされて初めて、最初の質問がいかに意地悪なものであったか、受講者たちは気づくだろう。頭が少し混乱するからだ。

さらに私は受講者たちを追い詰めるような言葉を、足していく。

「問題の反対が、あるべき姿ではありませんよ」

こう釘を刺すと、何をチャット欄に書いたらいいのか。ほとんどの受講者が戸惑う。

「部下のモチベーションが低い」ことが問題だと書いたマネジャーは、「部下のモチベーションが高い状態」と書こうとしがちだ。だから、そうさせないために私は先手を打つ。

そもそも質問をする前、研修の途中で、

「問題とは、あるべき姿と現状とのギャップです。つまり『問題=あるべき姿ー現状』という式で表現できます」

と伝えてある。

受講者たちの多くは、この教科書的な言葉の定義に聞きなれていて、誰も違和感を覚えない。

「そんなことは知っている」

「今さら問題の定義を解説されても」

という反応だ。だから、

「問題の反対が、あるべき姿ではありませんよ」

と言われれば、その通りだと思うだろう。式まで表現されているのだから、反論できない。では、どう答えるか?

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経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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