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部下がイライラしてるとき上司はどんな声をかけるべきか? 「デイリーハッスル」に気をつけよう

横山信弘経営コラムニスト
今日も朝から電車でイライラすることがあった……(提供:イメージマート)

あるときイライラしている部下がいた。当然部下が苛立っていたら、上司は気になって仕方がない。「どうしたんだ」と上司は声をかけるだろう。

「何を怒ってんの? 彼氏と喧嘩でもしたのか?」

「違います。彼氏なんていません」

このようにつれない返事が返ってくると、ついつい

「仲良かったB子さんと最近ランチに行かないな。B子さんが結婚したからか?」

と聞いてしまう。

「失礼なこと聞きますね」

「なんだ、その口のきき方は? 俺はお前のこと心配して言ってるんだよ」

「ほっといてください」

イライラしている部下を見ると上司は気になるものだ。しかし相手の感情をアテにいこうとして、クローズドクエスチョンを繰り返すのはよくない。

イライラ感情など、こういったストレス反応は、ストレス耐性ストレッサー(ストレス要因)の掛け合わせによって起こる。

ここで気を付けるべきことはストレス反応であり、ストレッサーではない、ということだ。

「なぜイライラしているんだろう?」

と誰もがストレスの原因について興味を持つ。が、それを探りあてようとするのは気を付けたほうがいい。その理由を次から解説していこう。

■デイリーハッスルを軽んじてはならない

人がイライラしている原因はさまざまだ。しかしストレッサー(ストレス要因)の大半は、デイリーハッスルであることも頭に置いておこう。

デイリーハッスルとは、日常的な苛立ちごとを指す。仕事関係であれば、

・満員電車がつらい

・顧客からクレームがきた

・上司から小言を言われた

・突然残業を言い渡された

・職場の人から嫌がらせを受けた

・新しい仕事に慣れない

家庭でのできごとなら、

・夫が家事を手伝ってくれない

・家が散らかっている

・子どもが片づけない

・夕食の準備が面倒だ

・ゴミを出すのを忘れていた

自分の体に関することなら、

・寝不足だ

・体がだるい

・お腹が空いた

・最近太った

このように、日常のちょっとしたことがデイリーハッスルだ。だからデイリーハッスルが原因でイライラしていると聞くと、

「そんな些細なことでイライラすんなよ」

と上司は言いたくなる。さらに相手の気持ちよりも、自分の気持ち・感情を表明したくなる上司なら、

「こっちの身にもなってみろよ。日ごろから社長に、どれだけストレスかけられてるか、お前わかってんのか?」

みたいな言い方をしてしまう。

当然、このような態度で関係がよくなることはない。共感力がないから、こんな発言をしてしまうのである。

共感力を磨きたいなら、最低限の知識は身につけよう。

実はデイリーハッスルによるストレスは、意外と大きいことがわかっている。ライフイベントよりも心身の悪影響が大きいという調査結果もあるのだ。

※ちなみにライフイベントとは、人生における大きな出来事で、代表的なものを以下に記す。

・誕生

・就学

・結婚

・出産

・リタイア

・死別

・家の購入……等

たしかに、

「結婚した」

「子どもが産まれた」

「引っ越した」

と聞けば、

「そりゃあ、大変だな」

となるが、

「朝食時に息子が牛乳をこぼしたんです。もう本当に頭きました」

と言われると、

「そんなことで……」

と思う人も多いだろう。

■どんな声掛けをしたらいいのか? 2つのケース

共感するときに大事なことは、相手の気持ちを「わかる」ことだ。相手と同じ気持ちに「なる」必要はない。

つまり部下から「私のことわかってる」と思われる上司は、ストレス反応だけに着目し、「私のことをわかってない」と思われる上司は、ストレスの要因にも注目してしまう。

ただストレスの要因が職場にあるなら、上司は解決したほうがいいだろう。

それでは、どんな声掛けをしたらいいのか? 

・明らかな仮説がある場合

・なんとなくの仮説がある場合

の2つのパターンで考えてみる。

たとえば部長と激しくやり合ったあと、部下がイライラしていたとする。ストレスの要因は、おそらく部長との出来事だろう。明らかだ。

その場合は、その件で軽くオープンクエスチョンしてみよう。

「部長とはどうした?」

「いや、別に。すみません……」

デリケートなことを聞く場合、質問はできる限り短くする。そして相手が話し切るまで待つことが大事だ。

「……私が悪いんです。でも言い方に腹が立って」

「そうか」

ここからは聞き役に徹する。求められない限りアドバイスもしないほうがいい。もちろん反論もすべきではない。

相手が強いストレスを感じているのなら、なおさら

「俺もわかる」

「部長って、そういうところダメだよな」

といった共感力の押し売りもやめよう。気を遣って同調したのに、

「そうですか? 私は部長、いい人だと思ってますよ。部長がダメだなんて思ったことありません」

と反論されることもある。

気に入られようとするのではなく、反感を買われないことが大事だ。

■デイリーハッスルは言いづらいもの

次に、なんとなくの仮説がある場合は、シンプルにオープンクエスチョンをしよう。

「部長と何かあった?」

……と、アテにいってはいけない。

「イライラしてるように見えるけど、何かあった?」

「そんなふうに見えますか?」

「見える」

「申し訳ありません」

それ以上、何も言われなければ、

「なんかあったら言ってね」

で終わりにしよう。

「夫がトイレ掃除を何度も忘れるので、3日間口をきいていない」というのがストレスの要因かもしれないのだ。このようなデイリーハッスルを追及してはならない。

いっぽう、

「実は部長と最近、折り合いが悪くて……」

と言われたら、聞き役に徹しよう。効果的な質問をして、相手の頭を整理する手伝いをするのだ。

「部長から何を依頼されたの?」

「そのとき何を確認したの?」

「部長がメールを見てないと言ったのはいつ?」

「……ということは、一週間前に部長から依頼された仕事を今週になって片づけた。それをメールで伝えたんだけど、部長がいつまで待たせるんだと怒ってきた、ということかな?」

このように点と点を繋げて質問すれば、

「ああ、そういうことですね。整理できました。部長はあまりメールを見ない人なので、メールを送った時点で電話すればよかったです」

「感情的になってはいけませんね。部長の性格を知っているのに。これからは気を付けます」

と本人が気づくかもしれない。

最後にまとめよう。ポイントはデイリーハッスルだ。

デイリーハッスルは、多くの人が考えているよりも強いストレスを与えるものだ。とはいえ些細なことだから、「どうしてそんなにカリカリしてるの?」と質問されても答えづらいもの。その相手の気持ちを察することが重要だ。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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