あらためて日本の「働き方改革」を考える ――働き方改革法案きょう採決か?

(写真:アフロ)

「働き方改革法案」きょう採決か?

安倍政権が今国会の最重要法案と位置づける「働き方改革法案」について今日5月25日、採決に踏み切ることを決めました。これに対し、野党側は不信任決議案を提出し徹底抗戦する模様です。

「働き方改革」は多くの人が望んでいることです。にもかかわらず、なぜこの法案はここまで多くの反発を招いているのでしょうか? 与党が推し進める「働き方改革法案」にどんな問題があり、そして日本の「働き方改革」はどうあればいいのか、あらためて考えてみます。

「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の問題

今回の法案でいちばん取り沙汰されているのが「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」です。この「高プロ制度」は、いくら働いても残業代を支払わないという側面ばかり強調されるため「残業代ゼロ法案」と呼ばれています。いっぽうでこの制度は、自由な働き方を日本に定着させるという側面もあります。だから双方の主張が真っ向からぶつかり合っているのです。

専門性の高い職に就いている人(コンサルタントや研究開発職など)たちを労働時間の規制対象から外す、という理屈はわかります。

仕事の成果で処遇される働き方が浸透すれば、長時間労働は是正されるだろうという考え方もあるのです。実際に現場でコンサルティングを実施する私も、その考えには賛成です。

しかし、最初は限定されていた派遣法の対象者が、その後、徐々に拡大していった前例があります。したがって、いったん法案を通してから適用年収条件等が徐々に下げられていく可能性もゼロではありません。だから多くの関係者が疑心暗鬼になっているのです。与党側は、この疑念を払しょくするための十分な材料を準備する必要があるでしょう。

なぜ日本に「働き方改革」が浸透しないのか?

そもそも、日本において「働き方改革」が遅々として進まないのは、「仕事に人をつける」欧米のジョブ型ではなく、日本の多くの企業は「人に仕事をつける」メンバーシップ型労働をとっているからということを忘れてはいけません。

「仕事に人をつける」というジョブ型だと、経営者サイドのメリットは大きいでしょう。極端な話、時代の変化で、その仕事がなくなれば、その仕事に従事している人を除外することができるからです。私がある企業で現場コンサルティングしている際、「成果を出せない従業員は全員をクビにしたい」と主張するアメリカ人経営者と、「従業員が成果を出せるまで教育するのも会社の責務だ」と主張する私とで口論になったことがあります。

これは文化の違いと私は捉えています。

「仕事に人をつける」ジョブ型の発想だと、その仕事ができる人を採用したいし、その仕事ができない人を採用したのなら採用プロセスに問題があると考えます。

しかし「人に仕事をつける」メンバーシップ型だと、ご縁があって入社したのだから、たとえ今はその仕事で十分に成果を出せなくても教育プログラムを充実させて成果を出せるようにしたいと考えます。だから成果が出せない人が出てくると、日本企業では上司の部下育成に問題がある、という発想をします。

労働者ひとりひとりが自分を律し、外部環境の変化とともに自分ができることを見極め、柔軟な発想で企業へ出入りする発想であれば「ジョブ型」は馴染むことでしょう。しかしまだ日本は、いったん会社に入ったら3年は我慢しろ。そう簡単に転職すべきではないという考え方が一般的です。

企業サイドも、縁があって当社にジョインしたんだから、当初予定していた仕事がなくなったからといって「君はもう必要ない」と告げるわけにはいかない、何とかわが社で彼ら彼女らが活きる道はないか、と模索するのが普通です。

だから日本の多くの企業は「メンバーシップ型」の発想から抜け出ることができないのです。

とはいえ「人に仕事をつける」というスタイルでは、ひとりの人に複数の業務が渡され、無限にその範囲が広がっていくというデメリットもあります。頑張れば頑張るほど容赦なく仕事を渡される職場もあるでしょう。通称「残業代ゼロ法案」が法律化され、適用条件が徐々に下がっていけば、長時間労働が減るどころか、増えてしまう人もいるはずです。

ただどちらに転んでも、日本の「働き方」を変えなければならないのは事実です。企業のみならず、私たち個人も、どのように外部環境が変化したとしても、ある程度適用できるように研鑽を繰り返し、変化に対応できる柔軟性をもっと持ち合わせなければなりません、そういう時代がやってきたのだと思います。