アマゾンビジネス(法人向けECサイト)の登場で営業は不要に?

アマゾンビジネス(Amazon Business)はどれぐらいの影響が?(写真:ロイター/アフロ)

アマゾンビジネス(Amazon Business)の登場と営業

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。専門は「営業」。法人営業の力で、クライアント企業の目標達成を支援することが仕事です。

いまだに営業という職種に妙なレッテルを張っている人がいますが、営業には顧客視点により3つに分けることができます。

・売り込み(お客様の必要のないものを紹介し、強引に購入を迫る)

・提案(お客様のニーズに合ったものを紹介し、購入を促す)

・問題解決(お客様が抱える問題を明らかにし、その問題を解決するものを紹介し、購入を促す)

営業に妙なレッテルを張っている人は「営業=売り込み」ととらえている方です。正直なところ、現場で指導しているコンサルタントの立場からすると、ガンガン売り込みをするような営業など、現在ほとんどいません。そんな威勢のいい営業がいたら、多くの経営者は喉から手が出るほど欲しがるでしょう。

お客様のニーズに合致したものを提案するという営業スタイルは、世の中に求められていそうで、実はそうでもありません。想像すればわかるでしょうが、営業がお客様のところへ足を運んで「何かニーズはありますか?」と尋ねて「そうだよ。ニーズがあるんだよ」と言ってくれるケースはほとんどありません。営業はそんな簡単ではないのです。

今の時代、ニーズが顕在化している個人のお客様は、自分で探しに行くのです。車も家電も保険も、必要としているお客様みずからがネットなどで調べ、ネットで買ったり、お店に足を運んだりするものです。

アマゾンビジネス(Amazon Business)の可能性

ところが一般企業の場合、そうではありません。たとえば携帯電話を100回線、法人契約している企業があるとします。その企業の経理担当が、

「通信料金をもっと安くしたい」

というニーズを持っていたとしましょう。企業の収益改善にはコストの見直しは常日ごろから心がけなければならないから当然です。個人であれば、そのようなニーズがあれば「もっと安いプランはないか」と調べることでしょう。しかし企業だと、たとえニーズがあったとしても、個人と比べてその意欲はかなり低くなります。

なぜなら「面倒」だからです。

複数の携帯電話の販社に連絡をいれ、それぞれから見積もりをとることはできますが、それらは担当者にとっては面倒な仕事です。個人と違って、経費を削減しなくても自分の懐が痛むわけではありません。いろいろな販社から営業がやってきて対応に追われることのほうが面倒です。

個人と法人とでは、ニーズに対する考え方が根本的に異なります。したがって、法人のお客様は自分で動こうとしません。だから法人の場合、営業が企業をまわって「このようなことで困っていませんか」「こういうニーズはありませんか」と聞いてまわることが慣例になっています。

しかし法人向けのアマゾン(アマゾンビジネス)が日本にも普及したらどうなるでしょうか。もはや「アマゾンで何も買ったことがない人」など、ほとんどいないことでしょう。それぐらい多くの人がアマゾンを使って本や化粧品、家電、家具にいたるまで、いろいろなものを買っているはずです。

インターフェースに慣れていることは、使用の心理ハードルをことごとく下げますから、会社で何かを購入するときもアマゾンを使えるのであれば、ネットサーフィンをする要領で買えてしまいます。

たとえ話を書きましょう。

ある日、あなたの会社にLED照明の営業がやってきたとします。照明器具をLEDタイプに変更することで、どれぐらい消費電力が落ちるか、その営業に聞かされたとします。しかしあなたは営業に「興味がある」という表情はしません。「へえ、そうなんだ。それはいいね」と一言でも発したら、相手の営業がしつこく提案してくるかもしれないとあなたは信じているからです。(しかし現実には、そのように執拗な営業はほとんどいないのですが)

どんなに興味を持っても、素知らぬふりで営業に対応することでしょう。そしてデスクに戻ったあとすぐさま「アマゾンビジネス」にアクセスし、そしてLED照明器具を扱っている業者を探し、自社に最も適した商品はどれかを自主的に調べはじめます。

単にインターネットを検索して得られる情報とは雲泥の差。どの業者がどのような商品をどのような数量単位で、どんなサービスで提供しているのか、自分のペースで、実際の取引を具体的にイメージしながら、じっくりと吟味できるのです。

主導権を営業に渡すことなく吟味できる、というのは法人のお客様にとっては得難いメリットです。2億点もの商品をそろえるアマゾンを利用することで、世界中の業者と取引ができるようになる、というメリットも大きいでしょう。

受け身であった法人のお客様に主導権が移ることで、業者側は苦しい立場に追いやられるはずです。お客様は慣れたインターフェースで購買をすればいいのですが、販売側は慣れないアマゾンへの出品・販売・発送・決済……などを学習する必要があり、パワーバランスが大きく崩れます。

以前から、付加価値の低い商品を扱う営業は、AIによって置換されると言われてきました。しかしそれだけでなく、アマゾンビジネスやアリババのような法人向けECサイトが普及すれば、今後はますます「問題解決型」の営業しか生き残ることができない、と言えるでしょう。