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プレミアムフライデーが、ジタハラ(時短ハラスメント)を急増させる?

横山信弘経営コラムニスト
プレミアムフライデーはもっと普及してもよいのだが(写真:ロイター/アフロ)

プレミアムフライデーを批判ばかりすべきでない

プレミアムフライデーとは、いつもと違う豊かさを楽しむ「月末最後の金曜日」を指します。今年2月からスタートし、7月28日(金)で6回目を迎えました。しかし多くの方が感じられているとおり、現在のところ定着した感はありません。

サービス業に従事している人などは利用できず、大企業に勤めている一部のホワイトカラーがプレミアムフライデーの対象となっているのが現実。働き方改革の一環としてスタートしたキャンペーンなのに、不公平だという批判が続出しているのが現状です。

ただ、働き方改革とは、多様な働き方を受入れ、働く人の生産性をあげることをめざす改革です。はじめから対象となる労働者は限定されており、プレミアムフライデーだけが富裕層を優遇する施策ではないのです。

そもそもプレミアムフライデーは「個人消費喚起キャンペーン」。労働生産性を上げて月末の金曜日ぐらい早く退社できる人は、そのまま家に戻るのではなく、寄り道して繁華街に繰り出してくれ、週末にかけて家族と週末旅行でもしてくれと消費喚起する試みです。

プレミアムフライデーによってサービス業に従事している人の労働時間は短くならないでしょう。しかし、そもそもお客様が増えなければサービス業の収益も上がらないし、そこで働く人の給料も増えません。プレミアムフライデーをひとつの側面だけで捉えるのではなく、経済活動全体を潤すひとつの試みと受け止めればいいのです。

不公平なキャンペーンに見えるかもしれませんが、この施策が定着することで恩恵を受ける人もいることを忘れてはいけません。経済活動全体の流れで考えれば、プレミアムフライデーはないよりあったほうがいいと私は考えています。

気を付けたいのはジタハラ(時短ハラスメント)

プレミアムフライデーの浸透によって、私が気にするのは「ジタハラ(時短ハラスメント)」です。大企業の幹部が、

「働き方改革の一環として、当社は積極的にプレミアムフライデーを採用する。月末の金曜日は午後3時に退社できるように、日ごろから生産性を上げて働いてくれ」

と言いだしたら、これはひとつの「圧力」となります。個人の自主性に任せていたら、当然プレミアムフライデーは定着しないでしょう。半年経っても利用率が上がらないのであれば、経営幹部はさらに「圧力」を強めるはずです。

「わが社が積極的に働き方改革を推し進めていることを内外に知らしめるためには、プレミアムフライデーの利用率は重要な指標だ。もっと利用させろ。現場は何をやってるんだ!」

とゲキを飛ばせば、管理部門のトップがプレミアムフライデーの利用率を「重要評価指標」と設定します。この指標の達成率を現場マネジャーの査定へと結びつけるのです。現場のマネジャーはプレミアムフライデーの利用率が自分の評価指標になるわけですから、

「月末の金曜日は午後3時に帰れ! 私の評価が下がるだろう」

と部下たちにプレッシャーをかけるようになります。こうなると時短を強要する「時短ハラスメント(ジタハラ)」の始まりです。

※参考記事:日本企業が直面する新たなリスク ~「時短ハラスメント(ジタハラ)」の実態

先述したとおり、経済活動全体を考えればプレミアムフライデーの存在意義はあります。単に批判するだけでは、日本の経済を潤すことはできません。しかし、新しい試みには副作用が付き物です。現場を知らない人からの「時短の圧力」だけは、やめてもらいたいですね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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