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「働き方改革」ではなく「成果の出し方改革」だったら経営者たちは納得するのではないか?

横山信弘経営コラムニスト
(写真:アフロ)

■経営者たちの悩みは「働き方改革」ではなく「業績」

私は企業に入り込んで目標を絶対達成させるコンサルタントです。実際にコンサルティングして結果を出すので、多くの企業経営者から相談を受けます。経営者や幹部、マネジャーの悩みのダントツ1位は「業績」。業績を安定化させたい。業績をアップさせたいと誰もが考えています。今後、ますます外部環境は変化し、不確定要素が高まっていく時代です。政府が促進する「働き方改革」によって、業績がよくなるというのであればともかく、その因果関係が立証されないと「働き方改革」が二の次になるのはあたりまえと言えるでしょう。

つまり、「働き方改革」をすれば「業績」が安定するのか? 「業績」を安定させることで「働き方改革」ができるようになるのか? ということです。ほとんどの経営者は後者であると捉えています。

資格試験対策で考えるとわかりやすいでしょう。

たとえば社会保険労務士の資格をとるのには、おおよそ「1,000時間」が必要と言われています。しかし当然のことながら個人差があり、「1,000時間」で合格する人もいれば、合格するのに「1,300時間」かかる人もいます。いっぽうで「800時間」で合格する人もいることでしょう。いずれにしても、大事なことは何時間かかろうが試験に合格することです。

つまり、試験に合格するかどうかは別問題で、「学び方改革」だと他人に言われても受験生は困るのです。本気で試験に合格したいと願っている人は、「学び方」「勉強の仕方」なんてどうでもいいはず。いっぽう、合格するかどうかは別で、「楽しく勉強したい」「ほどほどに勉強したい」という受験生は、勉強の仕方や手法、ツールにこだわることでしょう。「目的」と「手段」でいえば、「手段」のほうに焦点を合わせてしまうのです。

仕事に置き換えてみると、「働き方」はあくまでも「手段」。本気で成果を出したいビジネスパーソンは、「手段」などにフォーカスしません。まさに「手段は選ばない」的な発想で目標を達成させようと邁進していきます。何時間働こうが、何時から何時まで働こうが、短くても長くても関係がないのです。目的を果たすまでやるのです。そして、総じて「手段」ではなく「目的」に焦点を合わせている人のほうが労働時間は短くなるものです。なぜか? 目的がハッキリしているため、その目的に合わないことは「ムダ」だと認識できるからです。

スマートフォンで考えたらわかりやすいはずです。スマホを使う目的がハッキリしている人は、その目的に合ったアプリしかインストールしません。そして目的に沿った使い方しかしないのです。しかしスマホを使うことを興味の中心に据えている人は、スマホにいろいろなアプリをダウンロードして試してみたり、ダラダラとスマホをいじって時間を浪費します。「手段」そのものが目的となっているため、スマホから離れることができません。

資料を作ることが目的となっている人、会議をやることが目的になっている人は、いつまで経っても労働時間を減らすことができません。そのような人が「働き方改革」だと称して単に労働時間を削減したり、テレワークを導入しても、そのまま成果がダウンするだけです。

「働き方」ではなく、「成果の出し方」を改革するのなら、本気で目標を達成しようとするビジネスパーソンたち、経営幹部たちは納得することでしょう。「働き方」はあくまでも「手段」であり、「目的」ではないからです。

■QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を訴える以前に

人間の欲求レベルにはいろいろな階層がありますが、「安心・安全の欲求」は低い階層の欲求です。つまり「安心・安全の欲求」が満たされないと、人間の根源的欲求が満たされず精神的な余裕がなくなります。経営者は一隻の船の船長。大海原を航海するうえで、船が故障していたら船員の「安心・安全の欲求」は満たされません。船上の生活レベルを整えるより、まずは安全に航海できるようにすることを先決させるのです。

私は経営コンサルタントとして、常に重要視していることがあります。それは「手順」です。何事にも順序があります。同時にいろいろなことに意識をフォーカスしても、一度に改善・改革はできません。すべて掛け声倒れになってしまいます。したがってひとつの改善事項にリソースを集中し、正しく定着するまで見守ってから別のポイントに意識をフォーカスすることが、本気で組織改革するうえで最も重要なことです。

従業員のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が大事なのは、経営者たちもわかっています。しかし「物事には順序がある」のです。

まず現業を安定化させるのが最優先です。そうして余裕ができてから労務上の改善をしていく。つまり従業員の「生活の質」を上げるよう、意識や制度改革に着手するのです。問題なのは業績が安定しているのに、ワークライフバランスを考えない経営者です。従業員の不満解消などそっちのけで、事業拡大を考えるのは今の時代ナンセンスです。

問われているのは「働き方」ではなく「成果の出し方」です。先述したとおり、目的をハッキリさせることで「ムダ」が省かれていきます。不毛な議論に明け暮れることもなくなるのです。手段に意識を向けすぎると、「働き方改革」のみならず、どんなことでもうまくいかなくなります。気を付けたいですよね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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