昔と違って、これから社会に出て働く若者に必要なスキルとは? 今こそ「カッツモデル」を参考にしろ

それぞれのスキルは階層によって比重が異なる

今の時代は「クライテリア」が必要

インターネットの普及により、情報過多な時代が続いています。これまで新しく社会に出た人は会社の言っていることを素直に守っていればよかったのですが、最近はネット上に蔓延するノイズに思考を歪ませてしまう人もいます。入社した会社の上司が言っていることも信用ならない。メディアが発信していることも信用ならない時代ですから、若い人たちこそ自分なりのクライテリア(判断基準)を持つことが重要です。何らかの基準、物差しがあってはじめて「良いのか、悪いのか」「ベネフィットがあるか、ないのか」などの判断ができるからです。

クライテリアがない人は感情によって振り回されることが多いでしょう。そのときの気分、置かれた環境によって、決断が揺らぐのです。

これから社会に出る人に意識してもらいたいのは、「自分資産」「関係資産」「金融資産」……これら3つの資産です。「井の中の蛙」にならないためにも、社内のみならず、社外の人脈(関係資産)を多く持つことは、自分のクライテリアをメンテナンスするうえで重要なファクターです。今回はその「関係資産」ではなく、「自分資産」に焦点を合わせて解説します。

自分なりのクライテリアを持つためには「コンセプチュアルスキル」が不可欠

「自分資産」とは、自己鍛錬によって蓄積した知識や技能のみならず、習慣やマインドなども含みます。ここでは、自分なりの「クライテリア」を持つためには、どういう「自分資産」が必要なのか、「カッツモデル」を参考に考えてみましょう。

人間のスキルは「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つだと提唱したのはロバート・カッツで、これを「カッツモデル」と呼びます。

「テクニカルスキル」と「ヒューマンスキル」は、説明不要ですね。それぞれ、業務を執り行うための知識や技術、そして人間関係を構築する能力のことです。「コンセプチュアルスキル」とは、物事の全体を俯瞰し、状況を構造的、体系的にとらえて、問題の本質を見極め解決する「論理思考力」のことです。

経営者や上級管理職などトップマネジャーほど「コンセプチュアルスキル」が求められ、担当者などロワーマネジャーほど「テクニカルスキル」の比重が高くなる。そして「ヒューマンスキル」はトップ、ミドル、ロワー、すべての階層において等分に重要である。これが「カッツモデル」のいわんとするところです。

ただ、私はこの「カッツモデル」の体系にも限界が来ていると考えています。先述したとおり、社会人になったばかりの新人でも相応のクライテリアが必要な時代になりました。クライテリアを持つには「コンセプチュアルスキル」が必要です。AIやロボット技術の発展に伴い、今は「手に職をつければ食っていける」という時代ではなくなりました。つまり若者でも、「テクニカルスキル」だけあればいいというわけではなくなったのです。

「コンセプチュアルスキル」に必要な客観思考

「コンセプチュアルスキル」は単にロジカルシンキングを勉強すればよい、ということではありません。それよりもまずは、客観的に物事を見定められるかという思考を持つことです。上司や先輩社員が持っている価値観、判断基準で本当に良いのか。マスメディアが発信している言い分が本当に正しいのか。主観的にばかりとらえていると「井の中の蛙」になってしまいますから、その物事全体を俯瞰できるぐらい遠く離れて眺める習慣を身に付けていきましょう。

冷めた目で物事を観察せよと言っているのではありません。ましてや斜に構えた態度はダメです。いくつかの選択肢をテーブルの上に広げ、それを真上から眺める感覚です。

たとえば上司から、まったく必要のない仕事を時間外に頼まれたとします。自分の仕事は終わっている。帰宅する権利はある。上司から指示された仕事は会社の付加価値向上には役立たないものだ。心情としては、意味のないことであるし、早く帰宅したいからやりたくない。さてどう「判断」するか、です。

ここで自分なりのクライテリアがないと、

「どうしてこんなこと俺がやらなくちゃいけないんだ。バカバカしい! 俺は社畜じゃないんだよ」

とか、

「先輩も言っていたけど、会社とはこういうものだ。やりたい仕事もさせてもらえないし、上司から言い渡されるのは意味不明な雑務ばかり。サラリーマンなんて夢も希望もない」

などと、激しい不満や失望感に見舞われてしまいます。

感情をコントロールし、

「上司から言われたとおりにしかも残業までして意味のない仕事をやり続けたくはない。ハッキリと『こんな仕事を私にさせないでください』と言うべきか、それとも上司に嫌われたくないので、『わかりました』と言って泣き寝入りすべきか」

客観的に上司や自分のポジション、思惑などを、上空から眺めるように俯瞰するのです。

「自分はまだ入社して1年も経っていない。上司と信頼関係ができているか、というと、決してそうではないだろう。ミスも多いし、上司から教えられることもたくさんある。それに専務から言われている仕事がたくさんあり、最近上司も困ってるんじゃないだろうか」

そして自分のクライテリアと照らし合わせます。

「時間外に意味のない仕事をするのは嫌だ。それをハッキリと言えるような人間になりたい。そのほうがお互いのためのような気がする。でも、まだ上司との信頼関係は十分だとは言えないから、ここは引き受けよう」

こうして意思決定をするのです。客観的に見たうえで、別の判断をくだすこともあります。

「最近は、上司に褒められることも増えたし、信頼関係もそれなりにできたと受け止めている。今日はハッキリと自分の考えを言ってみよう。もし自分の言い分が通らなくても、『こいつは自分の考えをしっかり言う奴だな』という印象を与えることができる」

自分の「クライテリア」と照らし合わせて意思決定することで、その判断が正しかったかどうか、あとで検証することができます。もしも上司に言い返してこっぴどく叱られたら、

「なるほど。まだ自分と上司との信頼関係は十分にできていなかったと見て間違いないだろう。状況判断を間違えた」

と思えますし、逆に上司が潔く引き下がったら、

「意外と上司はすぐに引き下がったな。そうか、断ってよかったのか。これからそうしていこう」

このように受け止めることができます。相手の気分によっても反応は変わりますから、

「今日は怒られた。この前は気分がよかったから、快く引き下がってくれたのかな」

と、自分の状況認識の甘さを反省すべきでしょう。このようにして、自分の「クライテリア(判断基準)」をメンテナンスし続けるのです。

「状態管理(ステイトコントロール)」

自分の「クライテリア」を正しくメンテナンスするためには、先述した客観思考を身に付ける必要があります。感情を抑制し、上空から眺めるような感覚で全体を俯瞰するのです。そして大切なのは「状態把握」の能力です。

物事の「状態」というのは、常に変化するものです。「この前はよかったのに、今回はダメだなんて意味がわからない!」と主張する人は「状態把握」の力が弱いと言えます。感度が低い。つまり鈍感だから、うまく状況を認識できないと言えるでしょう。

NLP(神経言語プログラミング)では、これを「状態管理(ステイトコントロール)」と呼びます。正しく、周囲の「状態」を認識して自分の管理下に置くのです。

まず第一に、自分自身の状態を正しくコントロールすることが重要です。感情的に判断するのは最悪ですから、体調や精神状態を常に一定に保つことは最低限、要します。そして人が絡むことであれば、相手の状態も客観的に把握することです。今回のことであれば、上司の忙しさ、身体の具合、心の状態などです。日ごろから積極的にコミュニケーションをとっていれば、「最近はカリカリしてるから、あまり逆らわないほうがいいな」とか「いつも冷静で感情に振り回されない人だな」などと、相手の状態がわかります。

心や体のみならず、組織が置かれた状態にも観察しておきます。上司のみならず、同僚や先輩社員と常に意見交換をおくのです。たとえば「業績が悪く、専務がかなり怒っている」「お客様から最近大きなクレームがあり、幹部はすごく忙しい」ということがわかっていれば、上司から指示された不毛な仕事でも、「この状態で断るのはよくない。上司も適切な判断ができていない可能性もある」とわかります。「そんなこと知ったこっちゃない。私は私だ。時間外に意味のない仕事をさせられるなんて絶対ゴメンだ」と言ってしまっていいかどうか、気をつけないといけません。

自分や周囲の人、組織の「状態」を正しく把握し、物事を判断する。この能力は大きな「自分資産」です。こういった「自分資産」があることで、社内の正しい「関係資産」が積みあがっていきます。

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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