残業は組織の文化である ――残業「絶対ゼロ」を実現させる2ステップ
仕事と生活の調和「ワークライフバランス」を考えたとき、残業・休日出勤などの時間外労働は大きな問題です。残業は、野球でいうところの「延長戦」。毎日残業している人は、毎日「延長戦」をやっているようなものだと私はよくセミナーで話しています。労働条件の悪い「ブラック企業」とレッテルを貼られる前に、不毛な残業は一掃しましょう。
私は現場へ入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。「絶対達成」がスローガンですから、お茶を濁すような対策を施すことはありません。本気で残業を減らしてもらいます。そのために、業務分析、業務棚卸し、ダンドリ技術など……。試行錯誤を繰り返し、いろいろなチャレンジを現場でしてきました。しかし、これまでの経験上、残業問題は「文化」だと言い切ることができます。どんなにノウハウやテクニックを紹介し、実践してもらおうと思っても、
・残業しても許される「空気」
・残業したほうが頑張っていると評価される「空気」
・残業するのが「あたりまえ」だと信じて疑わない「空気」
が組織にある限り、残業は減りません。残業ゼロにしたい、休日出勤を減らしたいとは口にしていても、実際にはその「空気」が許さないのです。個人個人に働きかけても、残業がなくならないのはそのせいです。「残業ゼロ」にするには、個人に任せるのではなく、トップダウンで執行しなければなりません。
残業をなくすためには、実のところすごく簡単です。定時にオフィスの全電源を落とす。パソコンのネットワークを遮断する。定時15分後ぐらいにオフィスのドアの鍵をロックする。といった強攻策をとることです。
どんなに業務分析をして、無駄な仕事を減らせと言っても、人間には「一貫性の法則」があります。過去の言動は一貫して正当化したくなるという法則です。「無駄な仕事はないか。あるなら減らして欲しい」と投げかけても、これまでやってきた仕事を無駄だと考える人はほとんどいません。一貫して正当化したくなるものです。ですから強攻策。
以下のようなプロセスで進めます。
1)組織のトップから残業「絶対ゼロ」の強攻策を実施すると宣言
2)「絶対不可能」だと進言してきた現場の声にのみ耳を傾ける
単なるパフォーマンス、単なる掛け声ではなく、本気で残業「絶対ゼロ」にするため、定時後、オフィスの照明を切る、ネットワークを遮断する手順などの説明会を開きます。そうすると現場の人たちは焦ります。いよいよ組織が強靭な態度で「絶対ゼロ」を実施すると肌で感じるからです。「業務が立て込んでいたりとか無理なときもあります」「お客様から急な仕事が舞い込んだらどうすればいいんですか」などと質問が出てくるでしょう。すべて跳ね除けます。
「事前にお客様へ通達したりして、自分で考えなさい。絶対に残業をさせない。合言葉は『絶対ゼロ』だ」
このような強い態度をすると、現場は困惑するでしょう。しかし、組織のトップは本気の態度を崩してはなりません。その態度を見て、組織の本当の問題があぶりだされるからです。
「夜の7時半にお客様から毎日ファックスが届きます。相手はとても重要な取引先です。不可能です」
「東京本社の役員とのテレビ会議がいつも夜の8時からです。本社が残業ゼロにする気がないなら不可能です」
トップが「絶対ゼロ宣言」をすることで、こういう「自分自身の心がけでは何ともならない問題」が突如として出てきます。これらを組織全体で解決しようと努力するのです。結局、これまで「残業を減らそう」「業務効率化しよう」とスローガンを出しても、現場では本気で考えていなかったことが露呈してきます。前述した「一貫性の法則」です。自分たちの仕事を一貫して正当化してしまっていたのです。
本気で残業を減らそうとしないのであれば、ダンドリ技術を勉強したり、業務分析をするのは無駄どころか、その分、時間がかかってよけいに残業が増えていきます。気休めで残業削減を取り組むと、逆に非効率的になっていくのです。残業は組織の「文化」です。はじめから「残業ありき」で仕事をしようという「空気」がある限り、残業が減ることなどありません。ほとんどが企業の上層部の責任です。