「24時間戦えますか?」――「いえ、24時間戦う気持ちで7時間働きます」という現代
昨今、労働時間に向けられる目がとても厳しくなってきています。「残業代ゼロ法案」と揶揄される労働基準法改正案の存在もあり、「時間ではなく成果で評価する」という動きが加速しています。現場でコンサルティングしている身からすると、そういった世間の潮流に現場の反応はまだ鈍く、
「そうは言われても、なかなかね」
というのが正直な反応ではないでしょうか。『24時間戦えますか』のキャッチフレーズで有名な「リゲイン」を飲んだ世代が経営者、幹部をやっている企業などでは特に”どこ吹く風”。口には出さないものの「定時で帰るヤツの気がしれん」という意識で部下に仕事を振る人もまだまだ健在です。
もともと「残業ありき」でビジネスモデルが構築されてしまっている企業も意外と多くあります。こういう場合、長時間労働について指摘しても、「残業を減らせと言われても構造上ムリじゃないですか。お客様に迷惑かけちゃいます」と開き直られてしまうのです。
しかし時代は「ワークライフバランス」一辺倒。この風向きを変えることはできません。折しも採用難の時代。「基本的に定時は夜9時と考えてくれ、忙しいときは夜11時12時は当たり前」的な発想の職場であれば、若者たちはすぐ別の職場を探すことでしょう。売り手市場ですから、引き取ってくれる企業はたくさんあります。「前職は長時間労働を強いる、準ブラック企業でした」と採用面接で言うだけで、「そんな会社辞めて正解だよ」と面接官は応じてくれます。
”時間単位”で仕事をすることがご法度な時代、ということは、夜9時までオフィスにいればとにかくカッコつく、というスタンスは時代錯誤となった、ということです。「早く帰るんだったら、当然成果は出すんだろうな」という脅しにも似たオーラで、定時過ぎに帰宅準備に入った部下は、上司に見つめられることになります。「成果が出せなくても、夜遅くまで残っていたらそれなりに承認された。『遅くまで頑張ってるな』と上司に声をかけてもらえた時代のほうが、まだマシだった」と思う部下もいることでしょう。
「日本人は働き過ぎだ、もっと労働時間を減らす方向で働き方改革をしよう」
と言うのは簡単です。労働時間が減る分だけ、成果が出なかったときの言い訳材料も減り、よけいにプレッシャーを感じる人も多くなるはず。日本人はマジメな人が多いことを忘れてはいけません。
7時間、仕事します。だから7時間分の仕事をください、という人は、企業側は積極採用しません。時代は「時間単位」ではなく「成果単位」の流れです。「24時間戦えますか」と聞かれて「24時間戦います」と答えるのではなく、「24時間戦う気持ちで7時間働きます」と答えるのが、今の正しい答え。
「ワークライフバランス」をやたらと声高に唱える人がいますが、いっぽうで現場からすると「ラクな時代ではなくなったな」とボヤきたくなる人も多いことでしょう。