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「傾聴」と「軽聴」の違いとは? ……最後まで人の話を聞けない要注意人物の特徴と対策

横山信弘経営コラムニスト

人の話を最後まで聞かず、断定口調で人を否定する人がいます。原因は、強い先入観があるからでしょう。いっぽうで、話に正しく注意を払わず、軽く聞き流す姿勢にも大きな原因があります。熱心に耳を傾けて聴く「傾聴(けいちょう)」とは正反対の、「軽聴(けいちょう)」をしている、という姿勢のことです。

次の会話例を読んでみてください。

A:「気合いと根性だけではダメだけど、最低限の気合いと根性は必要だよ」

B:「そうかなァ。気合いと根性という発想そのものが古いと思うよ。そりゃあ、何をやるにしても気合や根性は必要だろうけれど、すべてのことが気合いと根性で解決するだなんて、まったく思わない」

Aさんの主張とBさんの主張は同じ。「気合と根性だけではうまくいかない。けれども最低限は必要だ」です。にもかかわらずBさんはAさんの主張を否定しています。BさんがAさんの話を最後まで聞かず、「軽聴」しているのが原因です。

したがって両者の言い分はまるで噛み合っていません。Aさんは「だから、俺もそう言ってるじゃないか」と反論したくなります。次の会話例も同じです。

C:「AKB48の新曲『ハロウィン・ナイト』が8月26日にリリースされるけど、なんだかんだ言って売れるんだろうな。握手券を特典とする、あの売り方はどうかと思うけど」

D:「お前は全然わかってないな。AKB商法というのは、CDを売ることじゃなくて握手券を売ることなんだよ。俺はあの売り方はどうかと思うけどね」

CさんもDさんも主張は同じ。二人とも「AKB48のCDは握手券などの特典目当てで買うファンが多く、あの売り方はどうかと思う」という主張をしているのに、DさんはCさんに対して「お前は全然わかってない」と否定しています。

人の話を最後まで聞かないような人――「軽聴」する人は、話のみならず相手の存在そのものをも軽く扱っています。相手と正しく向き合っていない、相手の立場に立って物事を考えていないと言えるでしょう。

さて、雑談なら、

「だから私もそう言ってるじゃないのー」

と笑って応じることができますが、ビジネスにおいて論理的なコミュニケーションをする場合はご法度です。

部下:「新しい商品を開発しても、売上は伸びていません。もっと販売力を鍛えないといけないと思います」

上司:「何を言ってるんだ。そうじゃないだろう! この前も経理の若い子が、『新しい商品を出したのに全然売上が伸びていない』だなんて不平を言っていたが、全然わかっていない。現場で営業した経験がないからそんなことが言えるんだ。いまだに新商品を出せば必ず売れると信じ込んでいる社員がいる。とんでもない間違いだ。新商品に頼るんじゃなくて、もっと販売力を鍛えようという発想が出てこないのか。まったく嘆かわしい!」

この上司は、まったく部下の話を聞いていません。「新しい商品」「売上が伸びていない」というフレーズを聞いただけで、頭に血が上ってしまったのでしょう。こういう「軽聴」する癖のある要注意人物と話をする場合、事前準備や話し方を工夫する必要があります。

資料などを準備し、

部下:「課長、今期こそは販売力を鍛え直さないといけないと思います。こちらの資料を見てもらえませんか。新商品が出たにもかかわらず、この新商品のセールスポイントを把握している販売員の数が30%にも満たないのです。実際に現場に出てヒアリングしてみましたが、新商品を積極的にお客様に紹介している販売員はごく少数です。したがって、もう一度、販売力を鍛え直さないといけないと思います。今期の売上が伸びていないからです」

このように、数値データなどの論拠も添えて自分の主張を繰り返すのです。「販売力を鍛え直さないといけない」と、何度も繰り返すのです。こうすることで、上司も「軽聴」することはできなくなります。「そうだな、そうそう。私も前からそう思っていたんだ」と同意してくれるでしょう。ストレスを溜めないためにも、最後まで話を聞かない相手を正しく見極めて、事前準備をしっかりしておきたいですね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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