やる気があるのに? やる気が出ない? 「やる気貧乏」とは?

頭ではわかっているのだけれども、なかなか行動に移せないことは、誰にでもあると思います。「知っていること:ノウイング(knowing)」「行っていること:ドゥイング(doing)」に差があることを、「ノウイング・ドゥイング・ギャップ」と呼びます。

「あれだけ言っているのに、どうして動かないのか?」

「わかっているはずだ。にもかかわらず、どうして変われないのか?」

私が現場に入ってコンサルティングしていると、多くの経営者、管理者の方にこう言われます。しかし前述したとおり、どのように行動すればいいか知っていれば、すぐに行動できるわけでもないものです。

ただ、やるべき行動が「行動」ではなく「結果の状態、あるべき姿」になっていると、なかなか行動に移すことができません。「整理整頓する」「ダイエットする」「試験に合格する」……このようなフレーズは行動ではなく、「あるべき・ありたい姿、状態」です。これらのフレーズを分解する必要があるのです。しかし抽象的な修飾語を前につけただけでは、具体的な行動をすることはできません。

たとえば、「きっちり整理整頓する」「徹底的にダイエットする」「今度こそは試験に合格する」……というフレーズも行動になっていない、ということです。抽象的な表現を、具体的な行動にブレイクダウンさせるためには、具体的な期限と、かぞえられる行動指標にまでプロセス分解することです。

「1週間に1回は、机の引き出しにあるものをすべて外に出し、要らないものはすべて捨てる」

……このようにすることで、「きっちり整理整頓する」ということになるかもしれません。抽象的な表現を具体化すると、必ずしっくりこなくなるものです。しかし、このプロセスを省略すると、いつまで経っても行動を起こすことができないのです。

とはいえ、前述したとおり、具体的な行動にまで分解し、あとは「やるだけ」の状態になっても、まだ動けない人がいます。それをやらなければならないことだとわかっているのにもかかわらず、です。こういう「やる気が出ない」状態は誰にでもあるわけですが、ここで絶対に勘違いしてはならないことがあります。

「あとは『やるだけ』と言っても、なかなかそれができないものだ。どうすればやる気になるのか、知りたい」

このように考えることです。こういう人を「やる気貧乏」と呼びます。繰り返しますが、やるだけです。望む結果を出すのは難しくても、そのために何らかの行動を移すことはできます。

行動できない最大の理由は、「怠惰」なのだと覚えておきましょう。怠けているだけですので、何の悩みもありません。怠けているのだと自覚して、やればいいだけです。それだけです。

問題は「怠けているわけではない」という先入観です。

「決して怠けているわけではない。怠けるつもりはないけれども、どうしてもやる気が出ない。やる気を出すやり方を知ったけれども、それさえできない。どうしたらいいんだろう?」

といった堂々巡りの問い掛けが、勘違いの根源です。

昨今は、「怠けている」と指摘しづらい時代となりました。しかし、私もそうですが、誰もがただ「怠けている」だけ、というときもあるはずです。病気でもなく、脳に障害があるといった事情があるならともかく、そうでないのなら誰だって「怠けている」ときはありますので、それを正しく認識することは重要です。

まとめますと、

1)やるべきことがある。しかし「やる気」が出ない。

2)「やる気」を出す方法(A)を知った。しかし(A)をする気になれない

3)(A)をする気になる方法(B)を知った。しかし(B)をする気になれない

3)(B)をする気になる方法(C)を知った。しかし(C)をする気になれない

3)(C)をする気になる方法(D)を知った。しかし……

このように、堂々巡りを起こした謎かけはもうやめましょう。キリがありません。やればできるところまで「分解」したら、後はやるだけです。それさえも「やる気」にならないのなら怠けているだけ。そう自覚するのです。

「やる気」を出す方法ばかり探している人は、答えのないものを探し回っているのです。無限ループに陥り、心が貧乏になっていく……まさに「やる気貧乏」と言えるでしょう。このような思考をそのまま放置していると、泥沼にはまっていきます。

そもそも新たに行動を起こすのに「やる気」など必要ないことがほとんどです。「やる気」「意欲」「モチベーション」をアップする方法を探してばかりいると、「やる気貧乏」になっていくので気を付けたいですね。