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コミュニケーションを「密」にするとは? 職場のコミュニケーションを活性化する2つの施策

横山信弘経営コラムニスト

職場の様々な問題解決のために、職場のコミュニケーションを活性化させることは重要な施策です。現代の多くの企業が、積極的に組織内コミュニケーションを活発にしようとしています。

私は現場に入って目標を達成させるコンサルティングをしています。組織内コミュニケーションを活性化させる支援はしていません。しかしながら、私どもが現場に入って支援をしていると、自然に職場のコミュニケーションは活性化します。相互の対話がない限り、組織の目標を達成できないためです。

ここで重要なことは、手順としてどちらが先にくるのか? ということです。

● 職場のコミュニケーションを活性化させることで、組織の目標を達成させられる

● 組織の目標を達成させようとすることで、自然と職場のコミュニケーションが活性化する

たとえば、営業部と生産管理部との連携がうまくいかないため、お客様が希望する納入期日に間に合わないという事態が頻繁に発生しているとします。こういうときに、経営陣が会議の席で言うのです。

「営業部と生産管理部は、もっとコミュニケーションを『密』にするように、いいな」

こう言われたら当然、それぞれの部の責任者は、「かしこまりました。もっとコミュニケーションを『密』にします」と言います。

そもそも多くの組織でよく使われるこの言葉――コミュニケーションを「密」する――とは、どういうことなのでしょうか。密接にコミュニケーションをとって、関係を親密にする、ということでしょうか。いかにも掛け声倒れになりそうな「キャッチワード」であることは紛れもありません。

次に、職場のコミュニケーションを活性化するうえで、よくとられる施策を考えてみましょう。大きくわけて以下の3つに分類できます。

● 定期的な飲み会の実施

● 旅行、昼食会、誕生日会、同期会などイベントの実施

● フロアを同じにする、席替えなどによる物理的な距離を縮める移動

一番、てっとり早くて、リーズナブルな施策が「飲み会」です。いわゆる「飲みニケーション」と呼ばれるもの。

「専務がコミュニケーションを『密』にするように、と仰られていた」

「とりあえず飲み会でもしますか」

というノリで決まってしまう施策です。先の例でいえば、営業部と生産管理部で参加できるメンバーを募り、とりあえず飲み会を開きます。

「たまには、こうやって飲み会するのもいいですなァ」

「昔は営業部ともしょっちゅう飲みに行ったもんですが、部署が大きくなってから難しくなりましたなァ」

「まァ、いろいろとありますが、ここはひとつ、お互い連携をとってやっていきましょうや」

「そうですなァ」

……飲み会の席で、このような会話をすることが「コミュニケーションを活性化させ、組織の問題を解決する施策」となり得るのでしょうか。実際にそうかもしれませんし、そうでないかもしれません。

実際にそうかもしれない、と書いたのは、組織の問題を解決するためには、相互の信頼関係を構築しておくことがとても重要だからです。信頼関係を構築するために、日ごろから他愛もない話ができるキッカケがあることは良いことだと考えます。

反対に、そうでないかもしれない、と書いたのは、この施策が「問題解決」に繋がるかどうかが不確実だからです。問題を解決するためのコミュニケーションは論理的な側面を持っていなければなりません。まさに「論拠」と「結論」が繋がる、筋が通る対話をすべきです。

お互いの信頼関係の欠如が原因で、部署間連携ができない、というのであれば、飲みニケーションでもイベントでも開催すればいいのですが、多くの場合はもっと細かい調整が必要です。

先の例でいえば、営業部が仕様を生産管理部へ伝えるタイミング。仕様変更があったときに相談するタイミング。緊急割り込みが入ったときに生産管理部が営業部へ相談を持ちかけるタイミング……など、誰がどのタイミングでどのように応対するのか、そのルールと、そのルール通りに運営されているかを管理する仕組みが必要です。それらのオペレーションを仔細に決めず、「コミュニケーションを『密』にする」という施策だけでは、正しい問題解決とは言えません。

問題解決の施策は、常にコミュニケーションが土台です。その施策には、大きく2種類あり、「具体的な施策」と「抽象的な施策」とに分けて把握しておきましょう。今回取り上げた「職場のコミュニケーションの活性化」は、組織の問題を解決するための潤滑油的なもであり、「抽象的な施策」です。細かい運用ルールを定めて管理する仕組みと体制を整える、というのが「具体的な施策」。

「具体的なコミュニケーション施策」はロジカルでなければなりません。何らかの問題が発生したときに「結論」を導くための「論拠」が不可欠。その拠り所として、組織内にルールとして定義づけることが重要です。お互いの歯車が噛み合わなければ、うまく動力が伝達していきません。いっぽう、歯車には定期的に潤滑油を差す必要があります。その潤滑油の役割をするのが「抽象的なコミュニケーション施策」です。この施策はロジカルでないほうがよく、表面的な会話に終始して問題ありません。他愛もない世間話ができればいいので、飲み会やイベントで仲良くなる、という施策が適当でしょう。常日ごろから意識し、組織の習慣として定着できるとよいと思います。

この両輪の施策があってはじめて、組織の問題が解決していきます。これは家庭においても同じことと言えますね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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