「悪いようにはしない」という不思議な言い方を考えてみる
「悪いようにはしない」という表現があります。どのように使われるかというと、
「Bさんと最近、ケンカしてるって聞いたよ。私に任せて。大丈夫。悪いようにはしないから」
……こんな感じです。パターンとしては、
1)何らかの問題に直面し、困っている。
2)知人が一肌脱ぐと申し出る
3)それでも不安を覚えていると、この表現を言われる。
「大丈夫。悪いようにはしないから」と……。
ただ、「悪いようにはしない」という表現は、二重否定です。否定を重ねることで単なる肯定になるかというと、そうではありません。たとえば「嫌いというわけではない」と誰かに言われたら、あなたはどう受け止めますか?
「Cさんのこと、好きなの?」
「好きか、と言われると……どうなんだろう」
「じゃあ嫌いなの?」
「嫌いというわけではないんだけど……」
二重否定をしているとこういった、どっちつかずの曖昧な姿勢を相手に受け渡すことになります。辞書にも「単なる肯定にとどまらず何らかの含意を付加する」と記されているから気を付けたいですね。つまり「あなたにとって悪いようにはしない」という表現は、そのまま肯定表現の「あなたにとって良いようにする」――つまり、「あなたが得するように働きかける」とは変換しづらい、ということです。
「悪いようにはしない」は、どちらかというと、世話好きで、お節介焼きの方が使いそうなフレーズです。もちろん悪気はないでしょうが、言われたほうは何か「含み」がある気がして釈然としないときもあります。任せてもらうことでどんな良いことが実現するのか、具体的に伝えたほうが相手から誤解されずいいかもしれません。