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「無理をしないで」という無責任な誘惑

横山信弘経営コラムニスト

何らかの目標を達成させるためには、コツコツと継続をすることが重要です。そして何事も継続するためには「無理しないこと」も大きなポイント。無理をし過ぎて継続する力が萎えてしまってはいけません。資格の勉強でもダイエットでも、無理せず続けることが重要ですね。

とはいえ、当然のことながら「無理しない」だけでは「継続力」は身につきません。目標も達成しませんし、現在抱えている問題が解決することもないでしょう。無理しないことを意識すべき人は、いつも無理している人です。いつも無理している人は自分で「無理をしている」とあまり感じることがないので、心や体が悲鳴を上げる前に、できる限り無理しないことが重要です。

しかしあまり無理せずにやってる人は、無理をすることを意識した方が良いでしょう。たとえば何らかの目標を達成しようと毎日何かに打ち込んでいる人がいるとします。しかし、そのせいで睡眠不足になったり、本来やるべきことをおろそかにしてしまって生活に支障が出ているとします。そういう人を友人が見かけたら、

「あんまり無理しないほうがいいんじゃない? ストイックになるのもいいけど、体を壊しちゃ元も子もないよ」

というアドバイスをすることでしょう。これは適切なアドバイスと言えます。しかしながら次のようなケースならどうでしょうか。

「最近、ちょっと上司とうまくいってないんだよね」

「どうしたの?」

「仕事が立て込んでるから残業が増えてて。いろいろ言われてる」

「あんまり無理しないほうがいいんじゃない? 無理して体を壊したら元も子もないよ」

「そうだよね……」

この「上司とうまく言っていない人」は、実のところ日ごろから上司に言われたことをやらず、先送りばかりしていたので叱られたのです。それで渋々残業して処理をした、というケースなのですが、会話だけですと、上司に無理難題を押し付けられて悩んでいるように聞こえます。

状況を正しく判断せず、疲れていそうな人、心が折れていそうな人、落ち込んでいそうな人を見ると、ついつい「無理しないほうがいいんじゃない?」と声をかけたくなるものです。しかし表面的な態度に惑わされて助言すると本人のためになりません。「無理をしないで」と言われたいがために、あえて「無理をしている表情」を作る人もいます。ストレス耐性を上げていくためには、小さなストレスを重ねていく必要があることを忘れてはいけません。

そこで、私がお勧めするのは「無理をすること」「無理をしないこと」の配分を決めることです。この配分を「2」対「1」にします。3回何かをするときは、2回は無理をして、1回は無理をしないということです。

たとえば資格合格のための勉強を日々実施しているとします。自分のペースだと、1日2時間なら難なくできるが、それ以上になるとストレスがかかるという場合、たとえば4時間の勉強を2日やり、1時間の勉強を1日する、という配分にします。こうすることで、2日は無理をするのですが、1日は無理をしない、ということになります。

上司から言われたことでやらなくちゃいけないことがあれば、2日は頑張ってその日のうちにすべて処理する。そして1日は「明日でもいいか」と先送りする。……このような調子で続ける、ということです。慣れていけば、自分の「無理をする」レベルが徐々に上がっていくことでしょう。

現状のレベルで「無理をしない」日々を過ごしていると、過去の自分よりも成長することはありません。先日、ニューヨーク・ヤンキースのマー君(田中将大投手)が約2ヶ月ぶりの復帰登板で見事に勝利投手となりました。しかし多くのファンは「肘の故障は大丈夫か?」と心配でしょう。来季に向けて「無理をしないで欲しい」と願っているはずです。

怪我をしていたり、病気の場合に「無理をし過ぎる」のはよくありません。しかし心も体も健康な人が多少の「無理をする」のは良いことです。本当に必要なときに、無理がきかなくなります。気を付けたいですね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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