部下の「やる気」をアップする逆転の発想
私は年間100回以上の研修やセミナーを実施しています。そのせいで、経営者や管理者が抱えている悩みを知る機会に恵まれています。その悩みの多くは「部下が動かないこと」。これに尽きるでしょう。「もっと危機感を持って、主体的に動いてほしい」「問題意識を持ち、先回りして行動してくれるようじゃないと困る」と嘆く、経営者や管理者がとても多いのです。
それでは、どのようにすれば部下のやる気をアップさせることができるのでしょうか。「やる気が出ない人の特徴と対策」や「やる気を出す気がない「やる気貧乏」の人の特徴と対策」に書いたとおり、「やる気」や「モチベーション」「意欲」を上げる方法はいろいろとありますが、今回は、本人ではなく、上司によって部下のやる気をアップさせる逆転の発想を紹介したいと思います。
それは、上司本人の「やる気」をアップさせることです。
正直なところ、「どうすれば部下がもっとやる気を出してくれるのだろう」と悩んでいる上司こそ「やる気」がないのです。なぜ断言できるかと言うと、私がいろいろとアドバイスしても、「そうは言っても」「なかなか難しいです」「もっと他にいい方法はありませんか」と、言うことを聞いてくれないからです。結局、この上司本人も全然私の言うことを聞かないのです。動かないのです。ですから、
「あなたこそ、もっとやる気を出しなさい」
と言いたくなるのです。
「空気」で人を動かすでは、ものまね細胞「脳のミラーニューロン」によって、「人」は「人」から影響を受けてしまう生き物だと書きました。人が作り出す「場の空気」によって人は知らぬ間に動かされてしまうのです。これを「感化」と呼びます。
おそらく、「部下にもっとやる気を出してほしい」という上司は、自分自身も部下に「感化」されて、やる気を出せないでいるのです。そんな上司を見て、部下も「感化」され、やる気を失っていきます。結局、堂々巡りなのです。お互いが「感化」し合っているわけですから、どっちもどっち、ということです。
リーダーは他人任せなどせず(ましてや部下のやる気任せにせず!)、自分自身でやる気を出す必要があります。自分が考えている以上の、5倍や10倍ぐらいのやる気を出してもいいでしょう。どうやったら部下がやる気になるのか、本を読めばたくさん書いてあります。10冊や20冊読んでもいいでしょう。そして、そこに書いてあることを実践してみてください。いろいろなセミナーを受けてもいいでしょう。10回や20回は受講してもいいでしょう。その講師が言っているとおりに実践したり、講師に相談してみてください。人はそう簡単に変わりません。3ヶ月や6ヶ月程度実践して効果がないとやめてしまうのではなく、1年や2年は続けるのです。「以前に本を読んで実践してみたけど、うまくいかなかった」「偉い先生が書いてあることをやってもうまくいくとは限らない」などと思ったら、やはりあなた自身に「やる気」がないのです。
上司が「10」行動を変えたら、部下は「1」行動を変える、とぐらいに思うのです。自分が「10」変えたら、部下は「20」も「30」も変わるはずだと思うほうがおかしいのです。上司の私がこれだけ動きを変えているのに、部下が少ししか変わらないなんて損だ、と思うなら上司失格です。そんなにやる気がないのなら、上司をやめればいいのです。組織の空気が悪くなるいっぽうです。いったん、組織の空気が変わり、部下が変わり始めたら、後はその流れに任せればよく、主体的に動いてくれるようになります。そこにいたるまでは少々時間がかかりますが、その労力を惜しんでいてはリーダーは務まりません。
【参考図書】