ついつい「財布のヒモ」が緩むのはどんなときか?
それほど必要のないものを、ついつい買ってしまうことは誰にでもあります。後で後悔するものや、「買ってよかったんだ」と自分を納得させるものなど、いろいろとあります。人間はある環境下に置かれると「財布のヒモ」が緩くなります。反対に「財布のヒモ」が堅くなることもあります。営業・マーケティングコンサルタントとしては、どのような状況でお客様の「財布のヒモ」が緩くなるのか、硬くなるのか、とても興味深いことです。
「ニーズ―購買マトリックス」で考えるとこうなります。
1)ニーズがある ― 購買の意思決定をする
2)ニーズがある ― 購買の意思決定をしない
3)ニーズがない ― 購買の意思決定をする
4)ニーズがない ― 購買の意思決定をしない
第一象限の「ニーズがあるから購買の意思決定をする」と第四象限の「ニーズがないから購買の意思決定をしない」は誰でも理解できることでしょう。しかし第二象限の「ニーズがあるのに購買の意思決定をしない」と第三象限の「ニーズがないのに購買の意思決定をする」は理解しづらいかもしれません。しかし実際にあり得ることです。
なぜこのようなことが起こるかというと、第三象限の「ニーズがないのに購買の意思決定をする」……が、「財布のヒモ」が緩くなっているせいであり、第二象限の「ニーズがあるのに購買の意思決定をしない」……が、「財布のヒモ」が堅くなっているせいである、と捉えるのです。
「財布のヒモ」が緩くなったり、堅くなったりする要素を分解すると、以下の3つとなることでしょう。
● 人
● 時間
● 場所
この3つの要素を組み合わせて、私たちコンサルタントはマーケティングを考えます。私が常に考えるのが「空気」です。どのような「空気」を作りだすことで、お客様の「財布のヒモ」が緩くなるのか? ということです。お客様の「財布のヒモ」が緩くなる空気を作り、「財布のヒモ」が堅くなる空気を作らないことが営業や販売スタッフには求められています。
上記の3つの要素を組み合わせて考えてみましょう。しかるべきタイミングに、しかるべき場所に、しかるべき人を集めると「財布のヒモ」が緩くなる空気が出来上がるということです。「集団同調性バイアス」を使うのです。お正月には高額の福袋が飛ぶように売れます。クリスマス前のデパートではカップルや家族客でごった返します。もうすぐサッカーワールドカップです。この時期に、しかるべき場所でしかるべき人が集まれば、その人たちの「財布のヒモ」は大いに緩くなることでしょう。
反対に、閑散としたお土産屋さん、人気のない遊園地、やる気のなさそうなスタッフがいるお店では「財布のヒモ」が堅くなります。お客様にニーズがあっても、なんとなく「今日はやめようかな」「買う気が失せた」という意思決定をしてしまうものです。
その場所に「財布のヒモ」が堅くなる空気が漂っているのに、どんな商品なら売れるのか? と、あと頭をひねっていても売れません。また、営業が長期間において関係を構築していたら、お客様の「財布のヒモ」も次第に緩くなることでしょう。目に見えることのない「売れる空気」と「売れない空気」が人に強い心理バイアスを与えているからです。
【参考図書】