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「印象」を一番悪くする「ギブサン発言」とは? 

横山信弘経営コラムニスト
感謝してよね。どれぐらい大変だったか、わかる……?

「ギブサン発言」とは?

私は営業コンサルタントです。したがって「コミュニケーション能力」「第一印象」「人間性」等が営業成績に直結することを良く知っています。これらのことを私はひとまとめにして「マイオーラ」と名付けました。「話さないで印象を良くする方法」というコラムで紹介しています。

「マイオーラ」の状態を良くすることで対人関係、コミュニケーション能力をアップすることができます。

「プラスの行動を増やし、マイナスの発言を減らす」

秘訣はこの2つのみです。正しい行動を繰り返し、マイナス発言を減らすことで「マイオーラ」の状態が良くなっていきます。特に、言わなくてもいいことを言うことで「マイオーラ」の状態を悪くする人がいます。私が最も気になるのが「ギブサン発言」です。

「ギブサン」とは、「お願い感謝」の意味で、「ギブ・サンクス(Give Thanks)」の略です。相手に敢えて感謝を求めること。まさに「キング・オブ・言わなくてもいいこと」と断言していいでしょう。

「君たちが今、のうのうと仕事ができるのは誰のおかげだと思ってる? 私がこの会社を設立した当時、どれほど苦労したか知っているだろう。少しは私に、感謝の気持ちぐらい持ったらどうだ」

このように、社長が上から目線で押し付けがましく「私に感謝しろ」と言うのは、典型的な「ギブサン発言」。誰もが「社長の器の小ささ」を知るキッカケとなり、社長の「マイオーラ」は急落します。

なぜ「ギブサン発言」をしたがるのか?

前述したわかりやすい例より問題なのは、発言者が意識することなく繰り出される「ギブサン発言」です。小さな「ギブサン発言」が積みあがっていくことで、発言者の「マイオーラ」がダウンしていきます。たとえばこのような物言いです。

「給湯室の掃除、やっておいたからね。たぶん事務所では誰よりも私が忙しいと思うけど、いつかは誰かがやらないといけないからさ」

「君の部下がA社のクレームを出したので、俺が大阪から東京まで新幹線に乗って謝ってきた。明日の朝からイギリスへ出張するから、どうなるかと思ったけど、何とか丸くおさまってよかったよ」

● 自分のためというより、あなた(みんな)のために、敢えてやった

● 他者よりも大変な立場にいるにもかかわらず、敢えてやった

私は凄い。私は偉い。私は褒められるべき……という事実を知ってもらいたいので、いろいろな情報を放り込んでアピールするので「マイオーラ」はダウンします。さらに「あなたのためにやった」というニュアンスをメッセージに込めているので、強く鼻についてしまうのです。

「ギブサン発言」をしてしまう人は気が利く人です。無邪気で、どちらかというと空気の読めない人です。もちろん悪い人ではありません。いい人なのに、なぜか損をしてしまいます。損をしていると自分が感じているからこそ、よけいに自分をアピールしたくなるのでしょう。「ギブサン発言」が止まらないくなります。アピールすればするほど「マイオーラ」はダウンするというのに……。

セリフの続きを書きましょう。後事例の発言者を「Mさん」とします。

「君の部下がA社のクレームを出したので、俺が大阪から東京まで新幹線に乗って謝ってきた。次の日、朝からイギリスへ出張するから、どうなるかと思ったけど、何とか丸くおさまってよかったよ」

「え? 本当に? ありがとう。全然、知らなかった」

「大丈夫、大丈夫。A社の部長、俺より君のほうに来てもらいたかったと言っていたけれど、うまく言っておいた」

「悪いなァ。本当にありがとう」

「俺って、けっこうこういう役柄が多いんだよね。ホラ、君が社長に呼び出されたときも俺が社長に話をつけにいったじゃないか」

「ああ、そういうときもあったな。いつも感謝してる」

「確かあのときも、シンガポールの出張の前日だったな。そういう出張の前になると、なんかトラブルを発見しちゃうんだよな」

「そういえばあのときも海外出張の前日だったな。ありがとう」

「いやいや。荷造りを徹夜でやれば済むだことだから大したことないって。本当は余裕もって準備ぐらいはしたいんだけれどね」

「わ、悪いな……。ホントに」

言えば言うほど、Mさんの「マイオーラ」はダウンするばかりです。相手に言わなきゃわからないだろう。だから言う。そしてどれぐらい大変であったかも盛り込まないと、自分への感謝の度合が増さないだろう。だから言う。ということなのでしょうが、「ギブサン発言」を繰り返すことで、「-1」「-2」「-3」……と、「マイオーラ」の状態はマイナスになっていきます。

印象を良くする「ウィンザー効果」

印象を良くするポイントがあるとします。自分が相手のためにしてあげたことが「10回」あるとして、1回につき、「3ポイント」の感謝されるべきことがあるとします。「ギブサン発言」をしたがる人は、「10回」とも「3ポイント」の感謝を相手に求めるのです。

しかし覚えていただきたい心理効果があります。それは「ウィンザー効果」です。「ウィンザー効果」とは、第三者を介した情報、噂話のほうが、直接伝えられるよりも心理インパクトが大きくなる効果のことです。

自分が相手のためにしてあげたことが、たとえ「10回」あり、1回につき「3ポイント」の感謝されるべきことがあっても、「マイオーラ」の状態を良くするために1度もアピールしないようにします。「ギブサン発言」を慎むのです。相手に言わなければわからないだろう、と思っても、言いません。一切、伝えないのです。ただ「10回」そのようなことがあれば、たいていの場合、1回や2回は、第三者を介して情報が伝わるものです。先ほどの「Mさん」の事例で考えてみます。

「おい、先月の君の部下のクレーム、またM君が処理してくれたそうだな」

「え、どういうこと?」

「知らなかったのか。Mの奴、大阪にいたのに、わざわざ東京まで新幹線で行って先方に頭下げたそうだぞ」

「なんだって!」

「冗談だろ。部下から聞いてないのか? しかもMは翌日イギリス出張で、時間がない中、君の代わりに謝りに行ったんだぞ」

「……」

「ちゃんとお礼、言ってないのか」

「全然、知らなかった」

「なんだよ、ソレ」

「M君にすぐ、お礼に行かないと」

「ふーん……。しかし、M君らしいな」

「え?」

「アイツ、そういうとこ、あるじゃないか。自分では何も言わないんだよ」

第三者を介して、このような情報を聞いたら、どれぐらいのポイントがあるでしょうか。たった1回でも「100ポイント」ぐらいは稼げると考えましょう。しかも本人は何もアピールしないため、ドンドン謎めいていきます。この人は自分で言わないだけで、みんなの知らないところで、いろいろとやっているに違いない。みんなのために汗を流しているのかもしれない。確かにそういうところがある。日ごろからの行動を見ていればわかる。すごくキチンとしている。やることをやっている。スゴイな。見習いたい……。

このように、周囲は実態よりも膨らませて空想してくれるもの。自分のことを語らないため「日ごろの行い」を見て想像するしかないのです。「マイオーラ」の状態が良い人は「プラスの行動」を続けているので、何も語らなくても印象が悪くありません。謎めいている分だけ、こういったイメージ像は流布していきます。

「Mさんって知ってる?」

「ああ、Mさん? 話したことないけど」

「Mさんって、同期の人の部下が出したクレームを、大阪にいたのにわざわざ東京まで頭下げに行ったらしいよ」

「マジで?」

「しかも海外出張の前日で、すごく忙しいのに飛んで行ったらしい」

「へええ」

「しかも、それをMさんは同期の人に言わなかったそうだよ」

「え、なんで?」

「その部下の人を気遣ったんじゃないかって、みんな言ってる。凄くない?」

「なんかカッコいいね、Mさん」

「Mさんの、そんな逸話は、いくらでもあるらしい」

「確かにMさんって、そんな雰囲気あるよね。自分のこと何も言わないけど、誰よりもこの会社のことを考えてるんじゃないかな」

知らない場所でMさんの「マイオーラ」は爆発的に上昇していきます。「ギブサン発言」をしないことで「ウィンザー効果」を誘引するからです。

言わなきゃ伝わらない。しかもどれぐらい大変だったか正確に知ってもらわないと、自分への感謝の気持ちをキチンと持ってもらえないだろう……。こう考えれば考えるほど「マイオーラ」の状態は悪くなっていきます。お願い感謝……「ギブサン発言」はできる限り控えたほうがいいですよね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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