愛媛県と松山市が「カンピロバクター食中毒注意報」発令へ

愛媛県と松山市は1日、カンピロバクター食中毒注意報を発令(画像:愛媛県報道資料)。
愛媛県と松山市は1日、カンピロバクター食中毒注意報を発令(画像:愛媛県報道資料)。

 愛媛県と松山市は7月1日、「カンピロバクター食中毒注意報」を発令した。県内でカンピロバクターが原因による食中毒が約2週間で続発したことによるもので、同注意報の発令は2004年に要領を制定して以来初めてのこととなる。カンピロバクター食中毒は5月以降、松山市保健所管内で5件(患者52人)が発生しており、そのうち4件は6月中旬であった。

 県の発表によれば、6月16日に『焼鳥ダイニング鈴木 市駅前店』(松山市湊町)でカンピロバクター・ジェジュニによる食中毒事案が発生したのを皮切りに、翌17日には『とり次郎』(松山市大街道)、22日には『焼鳥ダイニング鈴木 空港通店』(松山市空港通)、23日までには『KANEOKA RAMEN』(松山市高砂町)で続発。いずれも病因物質はカンピロバクター・ジェジュニであった。県と市は保健所に対して関係業界への指導強化を指示した。

 また食中毒である。そしてまたカンピロバクターである。1983年に新たな食中毒菌として指定されたカンピロバクターは、厚生労働省によれば令和3年の発生件数が154件あり、近年では細菌性食中毒の原因として最も多く発生している。鶏、牛等の家禽や家畜をはじめ、ペット、野鳥、野生動物など多くの動物が保菌している。

 カンピロバクター食中毒では原因となるものを食べてから約2~5日で、下痢、嘔吐、腹痛、発熱などの重篤な症状を起こす。一般的には食中毒の症状が出てもその多くは自然に回復するが、特に小さい子どもや高齢者では脱水で重症になることもある。さらにギラン・バレー症候群の約40%がカンピロバクター感染症が原因となっており、麻痺性疾患との関連も看過出来ない極めて重要な病原菌と言えるだろう。

リスクの高い店、リスクの高い食材を回避する

鶏肉の生食はカンピロバクター食中毒のリスクが極めて高い。
鶏肉の生食はカンピロバクター食中毒のリスクが極めて高い。

 しかしながら、カンピロバクターの食中毒は、十分な加熱調理と二次汚染防止を徹底すれば比較的容易に防ぐことができる。食中毒予防の原則は「菌を食材につけないようにする」「菌を増やさないようにする」「菌を殺す」という3原則だが、これは飲食店側の予防措置であり、私たち消費者側はコントロール出来ない。私たちが出来ることは「リスクの高い店に行かない」ことと「リスクの高い食材を回避する」ことの2点。これでカンピロバクターでの食中毒への罹患率は圧倒的に低くなる。

 「リスクの高い店」とは、衛生管理が行き届いていない店や、アルバイトが調理しているようなチェーン店などを意味する。もちろん、個人経営店よりも高い衛生管理意識を持っている飲食チェーンも多いことは言うまでもないが、その一方で本部の目が行き届かない例も少なくなく、本部の意識や施策が伝わり辛いのも多店舗展開のチェーン業態にはよくあることだ。そういう業態でリスクの高い料理を食べるよりも、作り手の顔がしっかりと見える、信頼のおける料理人が厨房に立つ店で食べる方がリスクは低い。

 そして「リスクの高い食材を回避する」。カンピロバクターの主な生息場所は「ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、イヌ、ネコ、ハトなどの動物の消化管内」。つまり、しっかりと加熱されていないレバーを食べなければ良いということだ。そして、この中で私たちが食べる可能性が特に高いのは牛、豚、そして鶏だろう。牛肉、豚肉に関しては厚生労働省から生食の禁止が通達されているので、特に気をつけるべき食材は鶏肉だ(参考資料:厚生労働省ホームページ)。

鶏の生食はリスクが高過ぎる

鶏肉はしっかりと加熱することが必要だ。
鶏肉はしっかりと加熱することが必要だ。

 筆者は2021年3月に今回食中毒が発生したラーメン店で喫食した。この店は2020年12月にオープンしたばかりの新しい店で、厨房も清潔感があり調理工程などを見ていても手際が良かった。そしてラーメンも丁寧な仕事が感じられる美味しいものだったが、地元産の銘柄鶏を使った鶏チャーシューだけは、ほぼ生に近いような状態で気になった。レアが苦手な人は申し出れば炙ってくれるとのことだったが、筆者はすぐにスープに沈めて熱を通して、最後に一口だけ食べた。

 鶏はそもそもカンピロバクター菌を保有している率が極めて高い動物だ。生息しているのは鶏の腸管内なのだが、食肉処理の際に腸管が破れるなどして鶏肉部分にも付着し、中でも内臓肉を汚染しやすい。流通している鶏肉の2割〜8割にカンピロバクター菌が付着していたという調査もあるので、レバーだけではなく鶏肉全般的に注意が必要なのだ。

 また、菌が表面に付着しているだけならば、表面を焼いたりトリミングすれば回避出来るが、調査によると肝臓の「中」からもカンピロバクター菌が検出されている。これはいくら表面を良く焼いても、どんなに衛生面に留意していたとしても避けられないことを意味する。

生食文化のある鹿児島や宮崎でも

 鹿児島には鶏肉の表面を火で軽く炙って食する『鶏たたき』という郷土料理がある。鹿児島県では2000年に「鶏刺しの文化がある鹿児島では、安全確保のために衛生基準が必要」として独自の生食用鶏肉ガイドライン『生食用食鳥肉の衛生基準』を制定した。そして2018年5月、鹿児島県はそのガイドラインを改定し、対象から肝臓と砂肝を除外した。

 改定の理由は「肝臓からのカンピロバクター検出率が高く、現状では微生物コントロールが困難で生食の安全性が担保できない」ため。県の担当者は「調査したほとんどの鶏の肝臓から、カンピロバクターが検出された」と話す。同じく鶏肉の生食文化がある宮崎県でも同様のガイドラインが設置されているが、カンピロバクター食中毒の事例は後をたたない。

 現在国が食品衛生法によって牛や豚の生食を禁止しているのも、腸管出血性大腸菌やカンピロバクター菌が肝臓内部から検出されているためだ。カンピロバクター菌の保有が極めて高い鶏に関しても、同等のリスクがあると考えた方が良いだろう(参考資料:厚生労働省ホームページ)。

正しい知識で食中毒リスクを下げよう

 カンピロバクターによる食中毒は死に至ることもあり、非常に危険で怖い。しかし、正しい知識を持っていればそのリスクを下げることが出来る。

牛、豚、鶏など家畜や家禽の内臓肉は極力避ける。

家畜や家禽の内臓肉を食べる場合は、しっかりと加熱されたものを食べる。

現段階で規制のない「鶏肉」の生食は極力避ける。

特に「鶏レバー」の生食は絶対に避ける。

信頼の出来る飲食店で食べるようにする。

 これらのリスクを知らないで食べて、食中毒になってしまうのは実に不幸なことだ。正しい知識を持って食中毒のリスクを回避して頂きたいと切に願う。

※写真は筆者の撮影によるものです(出典があるものを除く)。

【参考資料:カンピロバクター食中毒予防について(厚生労働省)

【参考資料:お肉はよく焼いて食べよう(厚生労働省)

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