長引くコロナ禍で居酒屋業界に打撃

 新型コロナウイルス感染症の大流行による経済への打撃が続いている。24日の東京都内における感染確認は今年最小の5人と、全国的にも小康状態が続いている新型コロナ感染者数ではあるが、その一方でヨーロッパなどでは過去最大の感染者数を記録するなど、いまだ予断を許せない状況であることは変わらない。

 10月22日に発表された『2021年「忘・新年会に関するアンケート」』(参考資料:東京商工リサーチ)の調査結果によれば、緊急事態宣言などの有無に関わらず、今冬に忘年会や新年会を実施しないと回答した企業が7割に達している。苦境が続く飲食業界の中でも、特にダメージが大きい居酒屋業界にとっては衝撃的な調査結果と言えるだろう。

 忘年会や新年会を実施しない企業が7割という数字は、間違いなくこのコロナ禍によって生じたものだが、コロナ以前よりコミュニケーションスタイルの変化によって、忘年会や歓送迎会など会社組織における宴席の文化や居酒屋ニーズは減りつつあった。その中でコロナ禍に突入して加速化、具現化したというのが実情だろう。

 おそらくコロナが収束した後も、コロナ前のような会社の行事としての宴席の文化はコロナ前までには戻らない。これまで居酒屋業界などは忘年会シーズンを「書き入れ時」として年間の売り上げ予測を立てていたが、いよいよ新たな戦略を立てなければ生き残れない時代へと突入したのは間違いない。

様々な要素が重なり居酒屋への客足は鈍化

居酒屋をわざわざ選ぶ理由とは?
居酒屋をわざわざ選ぶ理由とは?写真:アフロ

 コロナ禍になる前から居酒屋ニーズが減りつつあった背景には、様々な要素が重なっている。まずは会社などでの行事としての宴席そのものが減っている。上司と部下、あるいは同僚同士の親睦を深めるための、いわゆる「呑みニケーション」とも呼ばれる宴席は衰退しつつあった。昔ならば上司の誘いを断るなどということはあり得なかったことだが、今の時代では断ることは当たり前。人間関係の在り方の変化によって、お酒を介したコミュニケーションは過去のものとなった。

 それでももちろん飲み会をする人たちは今も多くいる。しかしその時に居酒屋を選ぶかどうかは分からない。ファミリーレストランやファストフードが「ちょい呑み」需要への対応を始めたことにより、居酒屋よりもリーズナブルに使えるという「ファミ呑み」客が増えているのだ。例えば、大手牛丼チェーンの『吉野家』では「吉呑み」と称しておつまみメニューを充実させて人気を集めている。ちょい呑みならばどこの店でもお酒は飲める。わざわざ居酒屋を選ぶ理由がないのだ。

 最後にお酒を飲めない(飲まない)人そのものが増えている。国税庁の調べによれば、酒類販売(消費)量は年々減少を続けている(参考資料:国税庁ホームページ)。そもそも母体となる酒を飲む人の数が減っているのだ。特に若い世代においては、ノンアルコールでファストフードなどで語り合うというのも自然に行われている。価値観や嗜好の変化によって消費行動が変わるのは当然のことだ。

時代に合わせた新たな戦略が不可欠

焼肉店や食堂など、大手居酒屋チェーンの業態変更が注目を集めている。
焼肉店や食堂など、大手居酒屋チェーンの業態変更が注目を集めている。写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 時代が変わり消費行動が変わるのであれば、当然のことながらニーズのない業態は淘汰されていく。人々のお酒を飲む量や機会が減り、飲食店などが居酒屋と競合する中で生き残るためには、その店でなければ飲めないお酒や食べられないメニューがあったり、どこよりもホスピタリティに長けた接客があったりと、何かしら「選ばれる理由」がある居酒屋でなければならない。

 大手居酒屋チェーンは、どこででも同じように気軽に使えることがメリットだった。結果として上述したような特徴が出しづらく売り上げも減少傾向にあった中でのコロナ禍ということもあり、いち早く業態の転換をするチェーンが増えている。

 居酒屋チェーン大手のワタミは2020年10月より、メインブランドの『和民』をはじめ、『ミライザカ』『三代目 鳥メロ』などの居酒屋業態を焼肉業態である『焼肉の和民』に切り替えていくと発表した。独自に開発したオリジナルブランド和牛「和民和牛」をリーズナブルな価格で提供し、焼肉業界に殴り込みをかける。

『塚田農場』などを展開するエー・ピーカンパニーもコロナ禍以前より、脱居酒屋の業態転換を進めている。立地などによって食堂業態の『つかだ食堂』や、『しゃぶしゃぶつかだ』『焼鳥つかだ』など専門性の高い業態へと変換している。

 コロナ禍が居酒屋業界に打撃を与えているのは間違いない。しかしながら、コロナ以前より時代は変わりつつあった。新しい時代のニーズに沿った飲食店の形を模索する日々はまだまだ続きそうだ。

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