Yahoo!ニュース

時短営業全面解除へ 飲食店に客は戻るのか?

山路力也フードジャーナリスト
長く続いた時短営業要請がようやく明ける。(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

25日から時短営業全面解除の動き

 新型コロナウイルス感染者の減少を受け、長く続いていた飲食店への時短営業要請が週明けの25日にも解除になる見通しだ。

 東京都では来月30日までを「基本的対策徹底期間」と位置づけて、十分な感染防止対策を実施していると認証を受けた飲食店(認証店)については、25日から酒類提供の制限や営業時間の短縮要請などを全面的に解除する。人数制限に関しては、原則として1グループ4人以下までとし、5人以上のグループの場合はワクチン接種証明の確認を飲食店側に求める。認証を受けていない飲食店(非認証店)については、営業時間の制限は撤廃となるが、酒類の提供のみ午後9時までとし、1グループ4人以下とするように求める。

 同様に他の自治体でも相次いで時短制限要請や酒類販売制限解除の方針を発表。神奈川県では飲食店を利用する際には認証店を選び、1グループ4人以下もしくは同居家族のみで、2時間以内の利用を目安とするよう推奨する。千葉県も営業時間や酒類販売の制限を全面的に解除するが、認証店や基本的な感染防止対策を取る確認店の利用を推奨するほか、広さに応じて一定の距離を確保できる人数での利用と、会話時にはマスクの着用も求める。埼玉県でも認証店、非認証店に関わらず制限は解除するが、ソーシャルディスタンスの確保など感染拡大防止策の徹底を呼びかける。いずれの自治体も東京都と同様に来月30日までの時限措置として、その後は状況を見て判断するという。

 各自治体が飲食店などへの制限を解除する根拠は、急速な感染者減少とそれに伴い病床使用率も低下したことがある。またワクチン接種率も高齢者で9割、全体でも7割近くまで高まっていることで、感染拡大リスクが減少しているという背景がある。

 その一方で、年末年始など飲食店などの利用が増える時期に「第6波」が来ることへの警戒心もある。制限を続けたままで「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」の再発出となると、飲食店をはじめとする経済へのダメージがさらに大きくなることを踏まえ、このタイミングでの全面解除となったのだろう。

ライフスタイルが変わった中で飲食店に客は戻るのか

再びこのような光景は見られるようになるのか。
再びこのような光景は見られるようになるのか。写真:アフロ

 東京都の飲食店が何の制限もなく営業出来るのは約1年ぶりのこと。長引くコロナ禍によって生活様式が変わり、人の動きが変わった。多くの会社ではリモートワークが推奨されるようになり、出社する人の数が減った。さらに夜に外食をするという習慣から、自宅で食事を摂ったりデリバリーやテイクアウトなどを利用する人も増えた。この一年で明らかに人々の行動や価値観は変わっているのだ。

 「やっと制限なく営業が出来るのは嬉しいですが、夜に出ている人の数がかなり減っているのは事実で、店を開けたところでお客さんが戻って来てくれるのかは不安です。また、忘年会などの書き入れ時にまた感染拡大するのではないか、緊急事態宣言が出るのではないかという不安もあります」(港区 居酒屋オーナー)

 「感覚としては半分以下(の人の流れ)。これが自粛している結果なのか、リモートワークなどに切り替わったからなのかが分かりませんが、制限が解除になったからと言って元に戻るとは考えにくいです。街の様子が変わってしまったのですから、今までと同じスタイルでは営業が難しいのかも知れません」(千代田区 飲食店オーナー)

デリバリー強化や業態転換など飲食店にも変化が必要

フードデリバリーやゴーストレストランは堅調だ。
フードデリバリーやゴーストレストランは堅調だ。写真:アフロ

 長く続いた飲食店への制限が解除されるのは喜ばしいことだが、来る冬場の感染再拡大の可能性など不安材料は残ったままで、生活様式も変わった今の段階では客足が元通りになるにはまだ時間がかかるだろう。それまでの間は、デリバリーやテイクアウトの強化や、一時的な業態変換などの対策が飲食店にとっては不可欠となってくる。

 特に夜の営業や酒類販売が主体となるレストラン、居酒屋などの業態への影響は大いに懸念される。居酒屋大手の『和民』は既存店の3割を焼肉業態へ転換することを発表。さらに唐揚げテイクアウト業態を開発し、FC展開へ舵を切った。同様に居酒屋大手ナショナルチェーンの多くが、新業態へと転換する動きを取っている。個人店でも居酒屋から昼中心の定食店に変えたり、昼と夜で業態を変える「二毛作営業」にシフトする店も増えてきた。

 さらに「フードデリバリーサービス」需要も右肩上がりで増えている。長引く自粛生活によって、外食から中食へとシフトする中でのデリバリー利用客は4割にまで上がってきた。飲食店でもデリバリーやテイクアウト商品の開発に着手するほか、実店舗を持たない「ゴーストレストラン」の急増も注目すべきポイントだ。

 残念ながらしばらくの間は飲食店に客は戻らない。過去に例をみない飲食業界への逆風はまだしばらくは続く。しかしながら、飲食店での外食は私たちの日常生活において喜びを与えてくれる大切な存在だ。コロナ禍が終わったあとに飲食店が激減して、外食する楽しさが無くなってしまわないように、今こそ感染予防に努めて頑張っている飲食店を応援して欲しい。デリバリーやテイクアウトを利用したり、感染予防を徹底した上で安全な飲食店を訪れて欲しいと切に願う。

【関連記事:コロナ禍の食材ロスをラーメンで解決? 今までにない独創的な製法とは

【関連記事:飲食店を安心して利用するために コロナ禍における飲食店の正しい選び方と使い方

【関連記事:『スシロー』『町田商店』にみるコロナ時代に生き残る飲食店の姿とは?

【関連記事:『緊急事態宣言』解除後の新たな時代に求められる飲食店の姿とは?

【関連記事:『コロナショック』で急増する飲食店のテイクアウトや通販への懸念

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

山路力也の最近の記事