「GoToイート」「GoToトラベル」見直しで疲弊した飲食業界を救うためには?

GoToキャンペーンは今後どうなっていくのか(写真:hiroyuki_nakai/イメージマート)

GoToキャンペーン運用の見直しへ

 菅首相は21日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合を首相官邸で開き、感染者の急増を受けて需要喚起策「GoToキャンペーン」の運用を見直す考えを表明した。具体的には観光支援事業である「GoToトラベル」に関しては、感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止し、飲食店支援事業の「GoToイート」に関しては、プレミアム付き食事券の新規発行やポイント利用の一時停止を検討しているという。

 未曾有の事態である新型コロナウィルスの流行は、私たちはもちろん政府にとっても経験のないことであり、その中での対策として国や地方自治体が努力していることは否定するつもりもなく、むしろこういう状況下においてかなりスピーディーに意思決定がされているということは事実としてあるだろう。例えば国による「持続化給付金」や「家賃支援給付金」「雇用調整助成金」、公庫による「新型コロナウイルス感染症特別貸付」などの決定や支給はかなりスピーディーであると感じている。

2020年3月にリニューアルしたばかりの羽田空港第3(国際線)ターミナルにも人影はまばら。
2020年3月にリニューアルしたばかりの羽田空港第3(国際線)ターミナルにも人影はまばら。

 しかしながら、それでも飲食業界や観光業界の疲弊は著しい。東京オリンピックに向けて、特に「インバウンド対策」に舵を切っていた業界だけに、訪日外国人数の激減がまずダメージになった。例年ならば書き入れ時だった2月の春節で訪日外国人数はすでに半減し、4月以降は前年比99.9%減という異常事態が続いている。8月あたりから少しずつ増えてはいるものの、10月の段階で訪日外国人数は27,400人、前年比で98.9%減と壊滅的な状況になっている(参考資料:「2020年訪日外客数」日本政府観光局JNTO)。

 さらに国内でも4月に発出された「緊急事態宣言」と共に出された、政府及び地方自治体による「外出自粛要請」によって、繁華街など人がこれまで密集していた都市部から人が消えた。テレワークも加速度的に進み、オフィスを減床や撤退する企業も増えていった。業態によっては少しずつ戻りつつあるが、軒並み前年比90%減という状況が続いたことは利益率10%以下と言われている飲食業界にとっては大ダメージとなっている。「待ったなし」と言われて数ヶ月、ようやく「GoToキャンペーン」によって微かな光が見えたところだったが、今回の感染再拡大と政府の方針転換によって閉店や廃業が急激に増えていくのは間違いない。

感染を拡げず経済を回す難しさ

「GoToキャンペーン」の恩恵を受けられない店舗や消費者も少なくない。
「GoToキャンペーン」の恩恵を受けられない店舗や消費者も少なくない。

 人の動きを抑える感染拡大防止と人を動かして経済活性化という、ある意味で相反する施策を両立させることの難しさ。しかも緊急事態下においてスピーディーに意思決定していかなければならないことにより、どうしても細かな部分での矛盾が生じてしまい混乱を招いた感が否めない。

 例えば「GoToイート」で言えば「大人数での会食は避けるべき」という方針がありながらも、ネット予約では10名分までポイントが付与されるなど、方針に一貫性がないと批判を受けるのは致し方ない部分もあった。さらに街の食堂やラーメン店など、予約する必要がない業態にとってはネットからの流入客は実質ゼロだ。プレミアム付商品券も利用者が事前に購入する際に混乱が生じた自治体も多く、飲食店もクーポンなどを現金化するまでのタイムラグがダメージになっている。「GoToトラベル」においても、一番経済を回すパワーがある東京が当初除外されるなど、スタートからバタついた。

 飲食店の営業に関しても、農水省所管の関連団体によるガイドラインが作成されたり、感染拡大防止ガイドラインに沿った飲食店には補助金を支給するなどが行われてはきたが、いずれも飲食店に人が来るという前提による施策であり、街から人が消えてしまっている状況ではほとんど意味を成さないというのが正直なところだろう(参考資料:「外食業の事業継続のためのガイドライン」日本フードサービス協会/全国生活衛生同業組合中央会)。

 前述したように、今回の新型コロナウィルス感染症は誰もが経験のしたことのないことであり、その感染を抑えながら経済を回していくというのは実に難しいミッションだ。感染拡大防止の観点からすれば、緊急事態宣言を発した春よりも感染者数が多いこの時期に外出を促す施策はナンセンスだろうが、飲食業界や観光業界からすれば瀕死寸前のギリギリの状況であり、仮に再び営業自粛要請などが出たとしても余程の支援が立てられない限りは従えないだろう。それを踏まえた上での苦渋の判断だったと理解できるが、それでも飲食業界や観光業界からすれば二転三転する方針に振り回されていると感じるのは当然であろう。

飲食店が出来ることには限りがある

2020年7月にオープンした飲食施設は連日満席の賑わいをみせる。
2020年7月にオープンした飲食施設は連日満席の賑わいをみせる。

 フードジャーナリストという立場だから言うわけではないが、客観的に見ても飲食店の大半は出来る限りの対策をとっている。入店時のアルコール消毒や検温に関しては、もはや日常的な光景になっているし、パーティーションの設置や積極的な換気も行っている店がほとんどだ。その中で私たちが理解しておかねばならないことは、一般的な飲食店での客における大規模なクラスター(Disease cluster、集団感染)が出た事例はそれほど多くはなく、飲食店からの感染報告のほとんどは従業員による感染であるということだ。

 つまり、感染拡大において飲食店が原因になっているということは冷静にみても考えにくい。仮に飲食店で感染したとしても、その責を飲食店に問うのは筋違いだと感じている。結局のところ、原因は利用する私たち客側のふるまいにある。いくら飲食店が万全の対策をしても、客側が大声で会話したり回し呑みをしたりしていては、感染リスクが高まるのは当然のことと言えるだろう。自分の身は自分で守るというスタンスで飲食店の利用をはじめ、日々の生活での防衛意識を高めていかなければならないのだ。

 今回の「GoToキャンペーン」方針変更は、言うまでもなくこれ以上感染を拡大させないという理由による。そして感染拡大防止の理由は、医療崩壊を防ぐ、死者を出さない、つまり人の命がかかっているからに他ならない。しかしながら、売り上げが激減して生活もままならない飲食業界や観光業界に従事する人たちにとっても命がかかっているのは同じこと。昨年と比べると4か月連続で自殺者は増えており、10月の自殺者は全国で合わせて2153人と、昨年の同月と比べて39.9%増加している。さらに1か月間の自殺者数としては、この5年間で最も多くなっているが、これらはコロナによる不況や雇用情勢の悪化が要因と考えられている(参考記事:東京新聞 11月10日)。

 コロナで死んでも自殺しても、同じ大切な命が失われることに変わりはない。これ以上死者を出さないために、感染を拡げずに街に出て経済を回す。私たち国民一人一人が感染拡大防止と経済活性化の両方を意識して日々の生活をすることが求められている。

※写真は筆者によるものです(出典があるものを除く)。