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福岡に個性豊かな「チャーシューおにぎり」が増殖中の理由とは?

山路力也フードジャーナリスト
福岡の人気ラーメン店が足並みを揃え、各店オリジナルのチャーシューおにぎりを提供中

福岡に新たなラーメン文化を生み出そう

3月からスタートした「福岡チャーシューおにぎり化計画」。人気店が揃って参加するプロジェクトに注目が集まっている
3月からスタートした「福岡チャーシューおにぎり化計画」。人気店が揃って参加するプロジェクトに注目が集まっている

 ラーメンの街、福岡で人気ラーメン店が結集して新たなラーメン文化の定着を目論んでいる。それがラーメンと一緒に食べるサイドメニュー「チャーシューおにぎり」だ。福岡はラーメンと並んでうどんの街として知られているが、福岡のうどん店の多くに置かれているのが、鶏肉や野菜などの炊き込みご飯のおにぎり「かしわおにぎり」。この「かしわおにぎり」をうどんと一緒に食べるのが、福岡ではうどんを食べる時のスタイルとして定着している。

 そこで福岡のラーメンでも、うどんと同じように定番のお供は作れないか、と福岡のラーメン店が連携し合い、ラーメンには欠かせない具材であるチャーシューを使った「チャーシューおにぎり」を考案。3月より「福岡チャーシューおにぎり化計画」を始動させて、一斉に販売を開始した。

『大重食堂』『初代秀ちゃん』『博多一幸舎』『長浜ナンバーワン』など、福岡の人気ラーメン店が足並みを揃えて参加
『大重食堂』『初代秀ちゃん』『博多一幸舎』『長浜ナンバーワン』など、福岡の人気ラーメン店が足並みを揃えて参加

 全国や世界にも店舗を多数展開する『一風堂』や『博多一幸舎』をはじめ、『博多だるま』『長浜ナンバーワン』『名島亭』『ShinShin』『博多新風』『ラーメン海鳴』『ラーメンおいげん』『大重食堂』などの人気店、実力店の数々が今回の計画に参画。各店のチャーシューおにぎりには共通した味やレシピはなく、それぞれのラーメンに合った味やスタイルのチャーシューおにぎりをメニューに置くことによって、福岡にチャーシューおにぎりの文化を定着させることが狙いだ。

 福岡の人気ラーメン店が手を取り合った今までにない取り組みは、ラーメンファンを中心に話題を集め、提供店では連日売り切れになるほどの人気に。テレビやラジオ、タウン誌など地元メディアの取材も相次いでおり、ラーメン業界でも注目を集めている。

人気ラーメン店が続々と参入

 「福岡チャーシューおにぎり化計画」が始動して4ヵ月。スタート時は10店舗にも満たなかったが、徐々にその輪が広がりを見せて現在は20店舗までになった。福岡の街中に個性豊かなチャーシューおにぎりがどんどん増え続けているのだ。

『四代目 本田平次郎商店』の「焼豚おにぎり」は、焼豚丼をアレンジした創作系
『四代目 本田平次郎商店』の「焼豚おにぎり」は、焼豚丼をアレンジした創作系

 5月より販売開始しているのが『四代目 本田平次郎商店』(福岡市博多区住吉1-2 キャナルシティ博多内)。こちらは久留米にある人気ラーメン店『本田商店』の新ブランド。『本田商店』といえば濃厚な久留米豚骨ラーメンで知られているが、新ブランドは透明でスッキリとした豚骨清湯(ちんたん)醤油ラーメンが看板メニュー。一説には久留米の豚骨ラーメンの発祥は白濁していない清湯だったと言われており、その源流の味を今の時代に復活させたラーメンを提供している。

 そんな『四代目 本田平次郎商店』の「焼豚おにぎり」(200円)は系列店で人気の「焼豚丼」をおにぎりにアレンジしたもの。細かく刻まれたチャーシューとマヨネーズが合わせられた、見た目にも迫力のある創作系のチャーシューおにぎり。あっさりとしたラーメンとパンチのあるチャーシューおにぎりの組み合わせが楽しい(焼豚おにぎりは本田平次郎商店のみで提供)。

『博多一双 博多駅東本店』の「チャーシューおにぎり」はスープを注いでお茶漬け感覚で
『博多一双 博多駅東本店』の「チャーシューおにぎり」はスープを注いでお茶漬け感覚で

 6月より販売開始しているのが『博多一双 博多駅東本店』(福岡市博多区博多駅東3-1-6)。2012年の創業以来、一躍博多ラーメンシーンの人気店になった新進気鋭店。「豚骨カプチーノ」と銘打った、表面に脂泡が浮いた濃厚な豚骨スープが評判を呼び、市内に展開する3店舗はどこも連日行列を作る人気を誇っている。

 『博多一双 博多駅東本店』の「チャーシューおにぎり」はシンプルな正統派スタイル。自慢のチャーシューと共に細かく刻んだタクアンとチクワがゴロゴロと入った、食感の楽しいチャーシューおにぎりに仕上げた。深めの器で提供されているので、途中で豚骨スープを注いでお茶漬け感覚で食べれば違った楽しさがある(チャーシューおにぎりは博多駅東本店のみで提供)。

 福岡で盛り上がりをみせているチャーシューおにぎりが、一過性のブームで終わってしまうのか、かしわおにぎりのように文化として定着するのか。まだ「福岡チャーシューおにぎり化計画」は始まったばかりだ。

【関連記事:福岡の人気ラーメン店が結集して挑む「新たなラーメン文化」とは?

※写真は筆者の撮影によるものです。

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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