客数増、売上減となった「串カツ田中」の一ヶ月

全面禁煙化を打ち出した「串カツ田中」(写真:串カツ田中ホールディングス)
全面禁煙化を打ち出した「串カツ田中」(写真:串カツ田中ホールディングス)

 居酒屋チェーンの「串カツ田中」が全面禁煙化に踏み切って一ヶ月が経った。国内192店舗のうち176店舗と90%以上の店舗を全席禁煙とし、他の店に関してもフロア分煙などの施策をとるなど、居酒屋業態ではほとんどの店やチェーンが喫煙可能な中、串カツ田中は居酒屋チェーンとして業界初となるほぼ全面禁煙化を断行した(参考資料:串カツ田中ホールディングスホームページ 2018年5月24日)。

 全面禁煙化から一ヶ月が経ち、運営する「串カツ田中ホールディングス」は5日、この一ヶ月間の売上げや客層変化などの結果を公表した。それによると、6月の既存店の売上高は前年同月より2.9%減少したものの、来客数は2.2%増加したという。家族連れを含む未成年客などが増えた反面、男性会社員グループ客などが減った結果、客単価が5%ダウンしたことで売上高は減少している。

新しい客層の開拓に成功し客足も増加傾向へ

 今回の結果は新しい客層を掴むという施策意図にも沿った形になっているが、同時に従来の客層への新たな価値観の訴求が不可欠となっていることも示した。しかしながら、この時期にワールドカップが開催されていたことや、例年よりも降水量が多かったことも勘案すると、今回の全面禁煙化という施策は一定の好感を持って消費者に受け入れられたと言えそうだ。

 同社も今回の結果を受けて「短期的には客数は減少する可能性がありますが、長期的には飲食店の禁煙化への理解が浸透し、客数が増加すると想定していました。6月の結果をみると、天候の影響やサッカーワールドカップ開催による影響もありましたが、キャンペーンやメディア露出によって、短期的にも客数が増加したことは良い結果が出せたと考えています」と分析している。

受動喫煙防止に積極的な東京都

 串カツ田中が全面禁煙に踏み切った背景には、2020年に向けて受動喫煙防止に舵を切った国や東京都の動きと世論がある。国会で「健康増進法改正案」が審議される中、都は2018年4月1日から「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」を施行した。

 串カツ田中も「都内の店舗数が92店舗と都道府県の中で最も多い中、お子様サービスを充実している串カツ田中の在り方を再検討し始め」たことが、今回の完全禁煙化への背景にあると説明している(参考資料:串カツ田中ホールディングスホームページ 2018年4月12日)。

 さらに6月27日には都議会で「受動喫煙防止条例」が賛成多数で成立した。段階的に施行されて2020年4月までに全面施行される。6月19日に衆議院を通過した健康増進法改正案では、店舗面積が基準になっているため、都内の飲食店の半数以上を占める中小規模の飲食店が対象外となるが、都条例では従業員を雇う飲食店は原則として屋内禁煙が求められることとなるため、対象は都内の飲食店の約85%になると推測されている。また違反者には5万円以下の過料という罰則が付く。

個人店でも全面禁煙に踏み切る流れへ

 串カツ田中以外にも、イタリアンレストランチェーンの「サイゼリヤ」が7月21日から店舗の全面禁煙化を段階的に始めるなど、これまで喫煙可能だった外食チェーンでの完全禁煙化の流れは加速度的に進んでいる。2020年の東京オリンピック・パラリンピックのホスト都市として、都内の飲食店が完全禁煙になるのはもはや時間の問題だ(参考資料:サイゼリヤホームページ 2018年6月20日)。

6月よりいち早く全面禁煙に切り替えたイタリアンレストラン「ZeCT byLm」(小川町)
6月よりいち早く全面禁煙に切り替えたイタリアンレストラン「ZeCT byLm」(小川町)

 一方、都内で営業している個人店でも全面禁煙にシフトする動きが見え始めている。小川町のイタリアンレストラン「ZeCT byLm」(東京都千代田区神田小川町17)は、これまで喫煙可の店だったが、国や都の動きにいち早く反応し、この6月より全面禁煙化に移行した。

 「以前より常連客の方から要望があったことと、新規のお客様の来店のきっかけになるかも知れないと思い決めました。喫煙される常連客の方も多いのですが、そのお客様たちの顔を思い浮かべて禁煙を理由に来なくなるお客様は誰もいないと信じて禁煙化しました。4月からお客様にはお伝えして2ヶ月の周知期間を設けましたので、スムーズに移行出来たと思います」(ZeCT byLmオーナーシェフの藤枝勇さん)

 特に個人経営の飲食店の場合、禁煙化による客離れへの不安は大きく決断が難しい。実際ZeCT byLmの場合も、完全禁煙化を開始した6月の売上げは残念ながら開業以来最低を記録してしまったというが、常連客によって支えられたと藤枝さんは語る。「この時勢では仕方ないと理解してくださった、喫煙される常連客の方々に多く来て頂けて支えられています」(藤枝さん)

 ZeCT byLmのように、これまで喫煙可だった飲食店が禁煙化した場合、当初は売上げが下がるかもしれないが、それを埋めるか上回る非喫煙客の来店が期待出来る。さらに完全屋内禁煙化した飲食店の場合は従業員確保も容易になる。受動喫煙を嫌うのは客だけではなく従業員も同じなのだ。

受動喫煙防止の流れは止まらない

 2003年に世界保健機関(WHO)にて全会一致で採択された「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」へも締約している日本だが、その対応は他の参加国と較べても対応が遅れているのが現状だ。官公庁や学校などでは対応が進んでいる一方で、とくに対応が遅れていると指摘されているのが飲食店における受動喫煙防止対策である。

 年々外国人観光客が増加している東京。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、受動喫煙防止の流れは確実に高まっていく。「屋内では完全禁煙」という世界の常識に、飲食店も早く追いついていかなければならない。この流れはもう止まらないのだ。

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※写真は筆者の撮影によるものです(出典があるものを除く)。