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外食で「糖質制限ダイエット」は可能なのか?

山路力也フードジャーナリスト
今話題の「糖質制限ダイエット」を無理なく成功させるには?(写真:アフロ)

「糖質制限食」とは何か

ここ数年注目を集めているダイエット法に「糖質制限ダイエット」がある。人間にとって必要とされる三大栄養素の一つでもある「炭水化物(糖質と食物繊維)」だが、現代の食生活では糖質が過剰摂取気味であるという観点から、その糖質の摂取を減らそうというライフスタイルを支持する人が多い。「糖質制限」「糖質オフ」「低糖質食」「ロカボ(ローカーボ)」など、誰もが一度は目にしたことがあるのではないだろうか。

糖質制限ダイエットの詳細や正しい方法については、様々な書籍や情報が出ているので各自で調べて頂きたいところではあるが、簡単にいえばご飯やパン、麺などの「主食」と呼ばれるものを摂らなかったり、お菓子や果物などの「甘いもの」を摂らない食生活になる。ジュースやコーラなどの清涼飲料水はもちろん、ビールや日本酒などのお酒にも多くの糖質が含まれているので避けなければならない。また味付けなどにも砂糖や味醂などの甘いものは使えない。

こう書くと糖質制限食はとても厳しいダイエット食に感じるかも知れないが、カロリー摂取量に注目をしたダイエット食とは違って肉類はほとんど摂取することが出来るので、人によっては取り入れやすいダイエット食とも言えるだろう。

外食で糖質制限は可能なのか?

実は私も現在進行形で糖質制限食を続けている。糖質制限食を始めて2ヶ月ほど経っているが、スタートから9キロ減とまずまずの効果が出ているのではないかと思っている。私の場合は一日の糖質摂取量を概ね50g以内に収まるような食生活を目指している。ちなみに糖質50gの目安としては、ご飯だとお茶碗に軽く一杯分、食パンだと6枚切りが二枚分くらいである。低糖質ダイエットの中では比較的ストイックな数値と言えるだろう。

私のように外食が中心の食生活を送っている人にはなかなか難しい数値目標と感じられるかも知れない。しかし可能な限り糖質は摂らないという意識でいると、例えば焼肉を食べる時にはタレを使わず醤油で食べるとかご飯は食べないとか、焼鳥ならタレよりも塩を中心に頼むとか、お酒はビールや日本酒ではなくハイボールにするとか、想像以上に低糖質な食事を摂ることは可能だ。

さらに飲食業界でも「低糖質」「糖質オフ」に注目が集まっていて、ナショナルチェーン店を中心に多くの「低糖質メニュー」が登場している。しかも牛丼やラーメン、ハンバーガーなど、糖質を多く含むメニューを提供している飲食店の方が積極的に低糖質メニューの開発に注力している。これらのメニューは低糖質を意識した食生活を送っている人にはどうしても敬遠される傾向がある。そこに歯止めをかけたいという飲食店の狙いが見て取れる。

豆腐を使った「すき家」の"牛丼ライト"

ご飯の代わりに豆腐がまるごと入った「すき家」の牛丼ライト。
ご飯の代わりに豆腐がまるごと入った「すき家」の牛丼ライト。

牛丼の人気チェーン店「すき家」の低糖質メニューである「牛丼ライト」は、牛丼のご飯のかわりに豆腐が入っているもの。糖質量は公表されていないが、炭水化物量がおよそ20gほどなので糖質量がそれ以上であることはなく、低糖質食の観点から一食あたりの糖質量としては十分合格点ではないかと思う。

上に乗っている牛肉部分(アタマ)は通常の牛丼と同じなので、食べていて普段の牛丼と同じ満足度がある。その下に野菜サラダと豆腐があり、そこには柚子ポン酢がかけられているのだが、意外に甘めの牛肉との相性も良い。豆腐は低糖質食材の代表格のような存在で、良質なたんぱく質と脂質を摂取するにも最適だ。

すき家では他にも低糖質のこんにゃく麺を使用した麺メニューを提供するなど、ローカーボを謳ったメニュー展開に積極的だ。これらのメニューも糖質量は22g〜30g弱に収まっており、たんぱく質や脂質に関してはしっかり摂取出来るので低糖質ダイエットには非常に有効な選択肢と言えるだろう。

小麦粉を抑えた「一風堂」の"糖質ニブンノイチ麺"

「一風堂」の糖質ニブンノイチ麺は、様々な穀物を使って小麦粉の配合比率を半減。
「一風堂」の糖質ニブンノイチ麺は、様々な穀物を使って小麦粉の配合比率を半減。

人気ラーメンチェーンの「一風堂」では、糖質量を通常の半分に抑えたオリジナルの低糖質麺「糖質ニブンノイチ麺」を開発。2016年4月には新宿に「1/2PPUDO(ニブンノイップウドウ)」という実験店舗をオープン。さらに一部店舗限定でもこの麺を使ったメニューを提供している。

この「糖質ニブンノイチ麺」は、穀物の外皮とでん粉、米ぬかを主原料とした麺用粉と大麦、ライ麦など11種類の穀物を合わせることで小麦粉の使用割合を抑制。含まれる糖質量は通常一風堂で使用している麺の約半分にあたる34.4gになっている。一風堂の麺はそもそもが博多豚骨ラーメンに多い「低加水麺」という麺で、一般的な中華麺よりも食感が軽い麺なので、この低糖質麺の食感でも違和感を感じないだろう。

一風堂はこれまでも麺の代わりに豚骨スープを配合した豆腐を麺の代わりに入れたメニューなども提案している。さらにコンセプトショップの「1/2PPUDO」では、ハーフサイズのラーメンなども提案するなど実験的な取り組みが続けられている。

バンズの代わりに野菜を使う「モスバーガー」の"菜摘"

バンズの代わりに野菜で包む「モスバーガー」の菜摘は、食物繊維をたっぷり摂れる。
バンズの代わりに野菜で包む「モスバーガー」の菜摘は、食物繊維をたっぷり摂れる。

ハンバーガーの人気チェーン「モスバーガー」では、バンズ(パン)の代わりにレタスを用いた「菜摘(なつみ」という低糖質メニューが人気だ。ハンバーガーは言うまでもなくバンズが糖質の高い食材であり、逆に野菜であるレタスには糖質がほとんど含まれていない。この置き換えで通常のハンバーガーと比べて1/3ほどの糖質カットを実現している。

中でも人気の「モスの菜摘 モス野菜」は、公表されている炭水化物量が11.5gで食物繊維量が1.9gなので、含まれる糖質量は9.6gになっている。正直なところ野菜とパティを野菜で包んでいるので、バンズで挟んでいるハンバーガーと比べて食べ辛いことは否めないが、ビーフパティもしっかりと入っているので食べた時の満足度は非常に高い。

さらにモスバーガーでは肉の代わりに大豆を使ったオリジナルパティ「ソイパティ」のハンバーガーも提供。糖質制限の観点からは肉は問題ないのだが、カロリーを気にする人やヴィーガンの方には最適なメニューになっている。

自己流ではなく正しい糖質制限食を

普段ご飯やパン、麺を食べていたものを別のものに置き換えたり、食べる量を控える。お菓子や甘いものは食べないなど、糖質制限ダイエットは簡単に取り入れることが出来るのが最大の魅力だろう。しかし過度の糖質制限はかえって体調に異変を来すこともあり注意が必要だ。私の場合も逆に良質なたんぱく質や脂質はしっかり摂るようにしているし、時には糖質制限を緩める日を設けている。

元来「糖質制限食」とは糖尿病患者のために考えられた食事であるが、血糖値減少や体重、脂肪の減少の効果があることから、ダイエット食として注目されるようになった。細かなカロリー計算などはしなくても良く、主食や甘いものを抜くだけでいい、というイメージがブームに拍車をかけていることは間違いない。

健康な生活を送るには食が基本であることは言うまでもなく、正しい食事とはたんぱく質や脂質、そして炭水化物などをバランス良く摂取することが前提である。糖質制限ダイエットに限らず、時には専門家のアドバイスも受けながら、自分のライフスタイルや体調などに合ったダイエット法を選択して欲しい。

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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