女性の70%が在宅時間増加でストレス テレワークは女性活躍の「切り札」のはずがなぜ?

(写真:アフロ)

テレワーク(在宅勤務、リモートワーク)は家事や育児などとの両立がしやすい働き方として、「女性活躍」の切り札のひとつとみなされてきました。

2017年に策定された「働き方改革実行計画」にも、"テレワークは、時間や空間の制約にとらわれることなく働くことができるため、子育て、介護と仕事の両立の手段となり、多様な人材の能力発揮が可能となる。"と明記されています。

ところが「女性活躍」の当事者とみなされる主婦層を対象とした今年5月の調査では、在宅勤務が広まれば「育児しながら働く人が増える」「介護しながら働く人が増える」という期待が以前より減少しているという結果が出ました。「夫が転勤しても仕事を継続できる」についても同様です。

出典:しゅふJOB総研「コロナ禍と在宅勤務」アンケート(2020年5月実施)
出典:しゅふJOB総研「コロナ禍と在宅勤務」アンケート(2020年5月実施)

「子どもと一緒の在宅勤務」で業務の達成具合はいつもの半分以下

同時期に行われた「緊急事態宣言後の育児と仕事の両立状況に関するアンケート」によると、感染防止のために保育園や幼稚園が休園となったとき、6割を超える保護者が子どもの世話をするために仕事の中断や休暇取得を余儀なくされている状況でした。

出典:コロナ危機下の育児と仕事の両立を考える保護者有志の会「緊急事態宣言後の育児と仕事の両立状況に関するアンケート調査結果」(2020年5月実施)
出典:コロナ危機下の育児と仕事の両立を考える保護者有志の会「緊急事態宣言後の育児と仕事の両立状況に関するアンケート調査結果」(2020年5月実施)

そして過半数の人が、育児のために業務の達成具合がコロナ危機以前の「半分以下」であると回答しています。

出典:コロナ危機下の育児と仕事の両立を考える保護者有志の会「緊急事態宣言後の育児と仕事の両立状況に関するアンケート調査結果」(2020年5月実施)
出典:コロナ危機下の育児と仕事の両立を考える保護者有志の会「緊急事態宣言後の育児と仕事の両立状況に関するアンケート調査結果」(2020年5月実施)

コロナ禍で多くの働く親が、育児と仕事を同時にすることの難しさを経験したわけです。その結果、最初に紹介した調査でも、在宅勤務が広まれば「育児しながら働く人が増える」「介護しながら働く人が増える」という回答が減少したのでしょう。

在宅勤務中の家事育児。より負担に感じているのは女性だった

上記「緊急事態宣言後の育児と仕事の両立状況に関するアンケート」は、回答者の86%が女性でした。男性の割合がもっと多かったら、結果は変わっていたかもしれません。

というのも、外出自粛で在宅勤務という状況で家事育児の負担が増え、より多くのストレスを抱えているのは妻の方だったことが、いくつもの調査結果で示されているのです。

一例を挙げると、積水ハウス 住生活研究所の調査では、在宅時間増加によるストレスが「増えた」と回答している率は男性51.3%、女性70.0%と女性の方が高く、在宅時間増加による不満のうち「家事の量が増えた」を選択する率も、男性の13.8%に対して女性が39.1%と3倍近い値になっています。

積水ハウス 住生活研究所「在宅中の家での過ごし方調査」(2020年5月実施)
積水ハウス 住生活研究所「在宅中の家での過ごし方調査」(2020年5月実施)

家族が家にいる時間が増えれば、食事の準備や後片付け、掃除など家事の量が増えるのは必然です。そのことをより負担に感じたのが女性の方であったのは、なぜなのでしょう。

夫も家にいても妻が家事育児の増加分を引き受ける理由

上の調査は「実際の家事の量」ではなくストレスや不満に注目しているので、この結果だけ見れば「男性も家事量が増えているが、それがストレスや不満になっていない」という可能性があります。

しかし他の調査結果などを鑑みても、増えた家事や育児の負担を妻が抱え込んでいた家庭が多い、と考えるのが自然です。

なぜこうなるのか。いくつかの要因が考えられます。

1.夫婦間の役割意識

共働きでも「家事育児は妻の責任」という意識が根付いていると、量が増えても妻が引き受けるのが当然ということになります。

2.慣れやスキルの問題

普段から主体的に家事や育児をしていないと、「やるべき家事や育児が増えている」こと自体に気づかない可能性があります。気づいたとしても、やり慣れていないと在宅勤務の合間に対処するといったことが難しいかもしれません。結果的に、妻の方が先に気づいて先にやることになるわけです。

3.妻が家にいるという状況

例えば妻が看護師で緊急事態宣言の間も出勤をしていて、夫と子どもが家にいる状態であれば、自然に夫の家事量は増えるでしょう(家庭によってその程度は違うでしょうが)。

1や2の要因があって、かつ妻が家にいるという状況が組み合わされると、夫も家にいたとしても、妻の方に負担が偏ることになるのです。

この状態を予期していた女性たちも

家にいると、やり残した家事が気になるし、子どもが何か言ってくれば相手をせざるを得ないし、仕事に全力を傾けるのは難しい

ーーこのような感覚に共感するワーキングマザーは多いのではないでしょうか。

実はこれは、コロナ禍に限ったことではありません。

最初に紹介した仕事環境に関する主婦層の意識調査は2017年にも行われ、その当時に以下のようなコメントが寄せられています。

<「在宅勤務が広がることで起きる変化」についてのフリーコメント>

・意外と家事が気になったり、集中できない(40代:派遣社員)

・夫婦で家事の分担しにくくなる(全部妻になる)(50代:パート/アルバイト)

・介護や育児中の人の負担が増え、虐待が頻発する(40代:その他)

出典:しゅふJOB総研「在宅勤務は働く主婦の仕事環境にどんな影響を与えるか?」2017年6月~7月実施

本来、在宅勤務であっても出勤して行う仕事であっても仕事は仕事です。それなのに「家で仕事するんだったら家事も育児もできるよね?」と周りから言われてしまう、あるいは自ら「やらなきゃいけない」と思ってしまうという状況が、以前からあったのです。

「家で仕事=保育の必要性が低い」という認識が保活にも影響

認可保育園の選考基準でも、「居宅内労働(働く場所が自宅)」というだけでマイナスのポイントが付く自治体がいまだにあります。最近はフリーランスという働き方を選ぶ人も増えてきましたが、この条件ゆえに保活で苦労する人も多いのです。

まさに「家で仕事するんだったら、自分で子どもの面倒を見られるでしょ」という考えが透けて見えますが、「そんなわけはない!」と、子どもと一緒に在宅勤務を経験した親御さんたちなら分かるでしょう。

「子どもを見ながら仕事」や「仕事の合間に家事」が全てダメなわけではありません。例えば子どもが熱を出して家にいるときなどに丸一日有給休暇を消化しなくても「在宅でできる範囲で仕事をする」ということが認められれば、個人や組織の生産性向上にもつながります。

しかし、常に仕事と家事・育児を同時並行で行うのは無理があります。最近それを証拠付けるような調査結果や当事者の声が多く出てきたことは、妻だけでなく夫にも、子育て家庭だけでなく企業や社会全体にも理解が広まるきっかけになるのでは、と期待しています。