保育園に入れないフリーランスと「落ちてもいい」会社員。背景に共通する子育て支援制度の課題

(ペイレスイメージズ/アフロ)

会社員の女性が出産した場合、母体保護のために産後8週間は働かせてはならないことが労働基準法で定められている。

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一方でフリーランスや経営者などの会社に雇われていない女性に関しては、59%が産後2ヶ月以内に仕事に復帰していた――、こんな調査結果を「雇用関係によらない働き方と子育て研究会」が発表した。

調査結果については、同研究会の発起人の一人である小酒部さやかさんの、以下の記事に詳しい。

経営者やフリーランスで働く女性の44.8%が産後1ヶ月以内に仕事を開始。日本初の実態調査が発表された

同研究会では、フリーランス女性の出産前後の働き方の実態などを調査した結果と共に、会社員の女性と比べて出産前後に得られる経済的な支援が非常に少なく、「保活」と呼ばれる認可保育園の利用申請においても不利な立場にあるという制度上の問題点も指摘し、それらを是正するための政府への要望を提出すべく署名活動を行っている。

フリーランス女性が産後すぐに仕事に復帰する理由

画像提供:写真素材 足成
画像提供:写真素材 足成

フリーランス女性の産後の仕事復帰時期が早いのには様々な理由がある。自分の意思でフリーランスという働き方を選んでいる場合、もともと働く意欲が高い、仕事に愛着がある、ということもあるだろう。

しかし、上に挙げた2つの課題(経済的なサポートが得られない、「保活」で不利)があって、早期に復帰を選ばざるをえないというケースも多い。

私もフリーランスとして働くようになってから出産し、産後数ヶ月で仕事に復帰した。そうしようと決めたのは、妊娠中、フリーランス同士で「保活」の情報交換をするコミュニティに参加し、たくさんの経験談を聞いたことが大きい。

話を聞いた方の多くが、早期に仕事復帰していた。理由として多かったのは、

  • 働かないと収入が途絶えてしまう
  • お客さんとの関係が途切れると仕事が減ってしまう
  • 休んでいると認可保育園に入れられない

の3点だ。

「保活」を少しでも有利にするために0歳4月入園を希望

自分にとって、一番マズイと思われたのは3点目の「休んでいると認可保育園に入れられない」だった。「フリーランスには育休がない」ということはなんとなく認識していたのだが、このときになって初めて、その影響を理解した。

それは、育休の権利がある会社員は1年間休んでいても“就業中”というステータスのまま認可保育園の入園申請ができるが、フリーランスの場合は休んでいると単なる無職の人とみなされるということ。“求職中”というステータスで入園申請することになるのだ(求職中だと保育園に入れづらいということも問題だが、それは今回の論点とずれるので一旦置いておく)。「仕事がある」という理由で保育園入園を希望するには、産後も長々と休んでいられないのである。

「保活」においてフリーランスが不利になる点は他にもある。自治体にもよるが、自宅で働いていると保育の必要性が低いとみなされることが多い。また、俗に「育休明け加点」「育児休業加点」などと呼ばれる、育児休業終了者を優先的に選ぶということが行われてきており、そもそも育児休業がないフリーランスは後回しにされてしまう。

こういった不利な条件を知り、私は「認可保育園は無理かもしれない。ダメだったら他の手段を考えよう」と思いつつ、「少しでも可能性があれば」と、0歳の4月での入園の申請を出した。1歳児クラス以降は下の学年から上がってくる子供たちがいるので新たに入園できる枠はとても少ない上に、育休終了というタイミングで入園を希望する人も増えるため、グッと競争率が上がる。望みをかけるなら0歳で、と考えたのだ。

結果として、私は運良く希望の保育園に子供を通わせることができた。子供は保育園で豊かな経験をさせてもらっているし、私も早くから仕事を再開して得たものが多い。個人的には良い選択だったと思うが、なかには「本当はもっと子供と一緒にいる時間を取りたい」と思いつつ、やむを得ず仕事復帰する人も多くいるだろうと思うと、この状況にはモヤモヤするのだ。

「保育園落ちて良かった」の気持ちも分かる

画像提供:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
画像提供:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

先日、以下の記事が話題になった。

「保育園落ちてもいい」親たち。待機児童の一方で「不承諾通知」歓迎と内定辞退続出の訳

この記事によると、育休中の会社員の中には、認可保育園入園の不承諾通知(自治体からの入園不可の通知)を受けてホッとしたり、希望する園を複数書けるのに1つしか書かないといった形でわざと不承諾を狙うような申請をする人、入園できることになっても辞退して育休期間を延長する人がいるらしい。

入園する気がないのに申し込みをするなんて、前述のように不利な状況におかれているフリーランスや本気で仕事に復帰したい会社員にとっては迷惑な話である。

だが、「できれば育休延長をしたい」という気持ちも理解できる。仕事と育児の両立の厳しさがこれだけ喧伝されているなか、育休を終えて職場に復帰していくのは気が重い、不安である、という人たちは少なくない。かわいい子供とできるだけ一緒にいたいという気持ちも、親として自然なものだ。

保育園入園希望を出した上でないと、育休延長はできない

問題は、本心では長めの育休を取りたいのに、認可保育園入園の希望を出す、という行為だ。それをすることで、本当に保育園を必要としている人の希望が通らなかったり、自治体としては実際のニーズが把握しづらくなる。

ただ、今の制度上、育休の期間を本人の意思(実際には職場とも相談の上)で決められるのは1年まで。それを超えて預け先が見つからない場合は子供が1歳6ヶ月まで、それでも見つからない場合は2年まで延長できることになっている。つまり、1年よりも長く育休を取りたい人は、「預け先を探している」というポーズを取らなければならない。だから、「不承諾になればいいな」と思いながら入園希望を出す人が出てくるのだ。

根幹にある2つの問題

画像提供:写真素材 足成
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問題1)保育の受け皿が足りない

この問題の根幹には、ニーズに対して保育の受け皿が足りていないことがある。

そもそも育休延長の制度は、原則1年までの育休期間が終了しても預け先が見つからないという事態に対する“対症療法”だ。預け先がなくて離職してしまうことを防ぐためのもので、みんなが1年以内に預け先を見つけられる状態であれば必要のない制度なのだ。

また、受け皿が足りていないがゆえに、希望者に対して何らかの優先順位付けをし、入園できる人、できない人に分ける必要が生じている。これが、様々な軋轢や悲劇を生んでいる。

本当はもっと休みたいのに0歳児のうちに保育園に入れる、「保活」を有利にするために認可外保育園の利用実績を作る、偽装離婚する――、子育てしながら働くために、そんなテクニックを駆使しなければならないというのは、異常なことだ

本来は、会社員にしろフリーランスにしろ、自分が望む子育ての仕方、キャリア戦略、経済的なことなどを考慮し、自分の意思で仕事に復帰する時期を選べるのが理想だ。

問題2)保育のあり方が画一的

もうひとつの問題は、国が想定している保育のあり方が、週5日フルタイムで働く会社員の子育て支援に偏っているという点にある。

働き方が多様化している今、平日の昼間に預かる保育園ではニーズに合わない人もいれば、昼間に短時間、あるいは週に数日預かってもらえれば良いという人もいる。例えば、子どもが小さいうちは週1日だけ自宅で教室を開く、といった働き方も立派なキャリア継続の方法で、それに合わせて一時保育やベビーシッターを利用できれば良い。

しかし、国の補助のもとで安価に利用できる認可保育園に対し、認可外保育園やベビーシッター等は、利用時間や頻度などの柔軟性は高いが費用も高く、収入とのバランスを考えると利用しづらい、という状況だ。

「雇用関係によらない働き方と子育て研究会」調査結果発表の記者会見にて(筆者撮影)
「雇用関係によらない働き方と子育て研究会」調査結果発表の記者会見にて(筆者撮影)

冒頭で取り上げた「雇用関係によらない働き方と子育て研究会」は、認可保育園以外の託児サービスの利用に対する補助を受けられるようにしてほしい、という要望を出している。さらに財源確保のことまで考えると「子育て控除」という税控除の形で子育て世帯を支援するのが誰にとっても公平で望ましいのではないか、という提言をしている。

子供を社会で育てる、という観点で保育のあり方の見直しを

先週は、M字カーブほぼ解消 女性就労7割、30代離職が減少というニュースもあった。

M字カーブが解消しつつあることの背景には、(1)女性が出産しても仕事を続ける率が上昇しつつあることと、(2)出生数が下がっていて子供を持たずに働き続けている女性が増えていることの両面があると思われる。

今後は共働きしやすい制度を整えることで(1)の方向を維持しつつ、(2)の出生数の減少を少しでもくい止めていくべきだろう。

国の子育て支援の大元には「本来は家庭で行う保育ができない親に、保育サービスを提供する」という考え方がある。だが、共働き家庭をスタンダードとしていくなら、家庭だけで保育が完結するという状況の方がイレギュラーとなる。今後は、子供を社会全体で育てていくにはどうすべきか、ということを考えていかなければならない。

そのために必要なのは、一部の人達だけが恩恵を受ける「幼児教育の無償化」などではないだろう。そもそも認可保育園に集中している補助金の使い方を見直し、全ての親が自分の働き方、育て方に合った保育サービスを利用できるよう、子育て支援のあり方を根本から考えるべきときが来ているのではないだろうか。