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「最も安いMacBook Air」は14万8800円に 高コスパM1モデルは販売終了

山口健太ITジャーナリスト
M3搭載の新型MacBook Air(アップル提供画像)

3月5日(日本時間)、アップルが最新の「M3」チップを搭載したMacBook Airの新製品を発表しました。

これまでの「M2」モデルから順当なアップデートといえる内容で、価格も据え置きとなったのは嬉しい点です。しかし最も安く入手できるモデルは値上げされています。

Wi-Fiや画面出力にアップデート 「AI」アピールも

アップルは「Appleシリコン」と呼ばれる独自プロセッサーを開発しており、2020年に「M1」を発表後、2022年にはM2、2023年にはM3へと世代を重ねています。

MacBook Airはノート型のMacとして一般消費者向けに位置付けられるモデルで、2022年のM2世代でディスプレイや筐体のデザインがリニューアルされました。M3世代では基本的な形状は変わっていないようです。

新機能として、無線LANは6GHz帯の電波を利用する「Wi-Fi 6E」に対応。MacBook Airは無線で使うことが多いことから重要な点といえます。すでに「iPhone 15 Pro」やM2搭載「iPad Pro」はWi-Fi 6Eに対応していることから、自宅のルーターを見直すきっかけにもよさそうです。

外部ディスプレイとの連携では、MacBook Airを閉じた状態で2つの画面に出力できるようになりました。これまでは外部1画面のみという制限があり、2画面以上に出力するにはUSB接続のアダプターなどを利用する必要がありました。

本体を閉じた状態で2つの外部ディスプレイに出力できるようになった(アップル提供画像)
本体を閉じた状態で2つの外部ディスプレイに出力できるようになった(アップル提供画像)

最近のアップルの動向を追っている人にとっては、プレスリリースの中で唐突に「AIのための世界最高の消費者向けノートブック」という項目が出てきたことが目を引くかもしれません。

MacBook Airは空冷ファンを搭載しないファンレス設計のため、プロセッサーの性能を最大限に引き出す用途には不向きと思われる点には注意が必要ですが、アップルはM3プロセッサーの「Neural Engine」の存在や機械学習用のアクセラレーターの内蔵を根拠に挙げています。

背景として、アップルは昨今の生成AI技術のブームからは距離を置いているものの、カメラの画像処理や音声認識など、目に見えにくい部分でユーザーを支援する形でAIを活用してきた経緯があります。

株式市場ではAI銘柄としてNVIDIAやマイクロソフトが高い評価を得ていることから、アップルとしても、このあたりでAIで他社に遅れを取っていないことをアピールしておく必要があると考えたのかもしれません。

価格は据え置き、でも最安モデルは14万8800円に

M3搭載MacBook Airの価格は税込16万4800円からで、前モデルから据え置かれています。これはちょっとした驚きといえそうです。

というのも、為替レートは前モデルが発表された2022年6月の1ドル=130円前後から、2024年には1ドル=150円前後に円安が進んでいます。これで価格が据え置きなら割安というわけです。

一方、これまで「最も安いMacBook Air」だったM1搭載モデル(13万4800円)の販売が終了したことで、最も安いのは13インチのM2搭載モデル(14万8800円)になってしまいました。

M1搭載MacBook Air(左)は販売が終了。最も安いのはM2搭載モデルになった(アップルのWebサイトより)
M1搭載MacBook Air(左)は販売が終了。最も安いのはM2搭載モデルになった(アップルのWebサイトより)

この価格は、本来はもう少し高くなるところをがんばって15万円以内に収めた印象を受けるものの、米国では最も安いモデルが伝統的に999ドルに設定されていることに比べると、対照的な動きといえます。

最近の物価高を背景に、アップルの株主からは値上げを求める声が高まっているようですが、学生や新社会人でも使えるMacの入門機として、MacBook Airは手の届きやすい価格を維持してきたといえます。

一方、日本で最も安い14万8800円という価格は、2020年ごろの11万5280円から約1.3倍になっています。所得も1.3倍になっていればどうということはないのですが、そうでない人にとっては、Macがまた少し手の届きにくい存在になった可能性があります。

2024年は円高による値下げを期待したいところではありますが、当面はM1モデルの入荷が期待される「認定整備済製品」や、ノート型以上にコスパの高いデスクトップ型の「Mac mini」とあわせて検討したいところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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