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Uber Eatsで「ロボット配送」 ロボットが嫌なら拒否できる?

山口健太ITジャーナリスト
ロボット配送が始まる(Uberのプレスリリースより、筆者作成

2月20日、Uber Eatsがロボットによる料理の配送サービスを日本で始めることを発表しました。世界では米国に続いて2か国目になるといいます。

このサービスは3月中にも東京都内の一部地域で始まる見込みです。どんなサービスになるのか、いま分かっていることを運営会社に聞いてみました。

ロボットかどうか事前に表示、拒否も可能

日本で配送ロボットとして投入されるのは米国Cartkenの「Model C」というモデルで、これを三菱電機が日本向けの仕様にして導入、運用すると説明されています。

このロボットは米国のUber Eatsで導入された地域があるほか、日本では「イオンモール常滑」でスターバックスの商品をモール内に届ける実証実験にも使われていたようです。

Uber広報によれば、これが東京都内の歩道を走ることになるとのこと。こうした車両は法的には「遠隔操作型小型車」として、道路交通法の改正により2023年4月から歩道などを走ることが認められています。

Cartkenのロボットが東京都内の歩道を走行するという(Uberのプレスリリースより)
Cartkenのロボットが東京都内の歩道を走行するという(Uberのプレスリリースより)

さて、このロボットがUber Eatsの配達業務をこなすことはできるのでしょうか。

東京都内のどのエリアに、何台くらいの規模でロボットを投入するかは現時点で公開していないものの、一部の協力加盟店で利用できる見込みとしています。

また最高速度は時速5.4kmで、人間が歩くのと同じくらいの速さで動けるようです。特徴として、遠隔からモニタリングや操作をする機能を備えており、東京都内のサービスでも活用されるようです。

多少の段差などは乗り越えられる能力があるものの、オートロックなどがあることから、建物内に入っていくことは難しそうです。またエレベーターに乗る機能も搭載していないとのことです。

Uber Eatsといえば玄関先まで料理を届けてくれるのが便利なサービスですが、これをロボットで実現するのは容易ではなく、基本的には建物の外まで取りに行く必要がありそうです。

玄関先まで届けてもらうことはまだ難しいようだ(Uberのプレスリリースより)
玄関先まで届けてもらうことはまだ難しいようだ(Uberのプレスリリースより)

ロボットなら配送手数料やサービス料が安くなるのではないか、と期待したいところですが、配送にかかる金額等にも違いはないとしています。

これなら人間の配達員に玄関先まで届けてもらったほうが便利と感じる人が多いでしょう。そのためか、ロボットとマッチングした場合はアプリに表示され、必要に応じて人間による配達を選択できるとのことです。

一方、建物内まで配達に来てほしくないとか、誰にも会いたくないなど、無人で配達してもらうことにメリットを感じるならば積極的にロボットを選ぶ場合はありそうです。

またロボットにチップを払った場合は全額返金の扱いになるようです。Uber Eatsに頼むときは、チップを払うべきかどうか迷うところですが、ロボットにチップは不要というわけです。

Uber Eatsを利用した際の領収書の例。ロボット配送ならチップは返金されるという(Uber Eatsのアプリより、筆者作成)
Uber Eatsを利用した際の領収書の例。ロボット配送ならチップは返金されるという(Uber Eatsのアプリより、筆者作成)

悪天候時や過疎地での活躍にも期待

こうしてロボット配送の限界が見えてくることで、さまざまな構造の建物であっても柔軟に対応できる「人間」の優秀さをあらためて感じます。

そのため、「ロボットに仕事を奪われる」といった事態は当面は考えにくく、深刻化が予想される物流の人手不足問題を緩和することが期待されます。

Uber広報はロボットが補完的な役割を担うケースとして、雨天時など配達員が少ない状況を挙げています。悪天候の際にデリバリーを頼むのは気が引ける人もいそうですが、ロボットならそうした配慮は不要でしょう。

またUber Eatsが便利なのは都会だけ、といった声もありますが、ロボットの活用によりまだサービスを提供できていない過疎地などに展開できる可能性にも注目しているようです。

Uberではエレベーターなどのインフラとの連携についても開発を進めているとのこと。マンション側で実証実験を始めているところもあるように、将来的には社会全体でロボット配送への対応が進むことを期待したいところです。

追記:
3月5日に開かれた発表会にて、詳細が語られました。
ロボットによるデリバリーサービスは3月6日から、東京・日本橋エリアで始まります。稼働するのは1台で、ほかに予備機が1台あり。時間帯は平日10時〜17時のみ。ロボットの動作はスタッフが遠隔で監視し、信号を渡る判断をしているほか、現場に駆けつけることができるスタッフも待機しているとのこと。かなり安全面に配慮した運用になっている印象です。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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