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ドコモのスマホ「1年で買い替え」がおトク? 新プログラムの狙いを考察

山口健太ITジャーナリスト
新プログラム「カエドキ+」(NTTドコモのWebサイトより、筆者撮影)

NTTドコモが、9月1日から端末購入プログラムに新たな選択肢を追加します。特徴は、スマホを1年で買い替える場合におトクになるという点です。

一般的にはスマホは長く使い続けたほうがおトクに思えるところですが、どういう場合にメリットがあるのか、またドコモの狙いはどういうものか、考えてみます。

1年で買い替える場合でもおトクに

携帯キャリアからスマホを購入する際、残価設定型の購入プログラムを利用する人が増えています。

これは分割払いで端末を購入後、途中で返却すると「残価」の支払いが不要になるというものです。ドコモは2021年から「いつでもカエドキプログラム」(以下、カエドキ)という名前で提供しています。

そこに今回、新たな選択肢として「いつでもカエドキプログラム+」(以下、カエドキ+)が加わりました。ドコモは「1年ごとに最新機種へ買い替え可能」と強調しています。

たとえば、購入から12か月で端末を返却する場合、従来のカエドキで免除されるのは「残価」のみで、13か月目から23か月目までの「分割支払金」は支払う必要がありました。

これに対してカエドキ+では、一定の条件を満たすことで、この分割支払金についても免除されるというのが大きな違いとなっています。

カエドキ+の支払いイメージ。12か月目に返却すると、それ以降の「分割支払金」も免除される(NTTドコモのWebサイトより)
カエドキ+の支払いイメージ。12か月目に返却すると、それ以降の「分割支払金」も免除される(NTTドコモのWebサイトより)

主な条件は、カエドキ+の対象機種を、カエドキを利用した24回の分割払いで購入すること、購入から14日以内に「smartあんしん補償」に加入すること、そして返却時に「早期利用料」を支払うこと、となっています。

カエドキ+の利用に必須となる「smartあんしん補償」(NTTドコモのWebサイトより)
カエドキ+の利用に必須となる「smartあんしん補償」(NTTドコモのWebサイトより)

カエドキとカエドキ+の関係が少し分かりにくいのですが、新しく別のプログラムができたというよりは、従来のカエドキで購入し、一定の条件を満たす場合にはカエドキ+を利用できる、というイメージです。

具体的にどれくらいのおトクになるのでしょうか。カエドキ+対象機種の1つである「Galaxy Z Fold5 SC-55D」(256GBモデル)を例に、ざっくり計算してみます。

この端末のドコモオンラインショップにおける機種代金は25万7400円(税込、以下同じ)で、カエドキ利用時の毎月の分割支払金は6427円(初回のみ6446円)、24回目の支払額(残価)は10万9560円です。

従来のカエドキを利用して12か月で返却した場合、残価が免除されるため14万7840円となり、そこから早期利用特典として月額300円が11か月分引かれ、実質負担額は「14万4540円」となります。

これに対してカエドキ+では、分割支払金である70697円についても免除される一方、機種ごとに異なる早期利用料として1万2100円、「smartあんしん補償」が月額1100円で13か月分かかり、実質負担額は「10万3543円」となります。

単純計算でカエドキ+のほうが4万997円おトクになる計算です。あくまで端末の返却が前提ではありますが、毎月9000円弱で最新の折りたたみスマホを1年間利用できるというのは、これまでにないオファーといえます。

カエドキ同様に、画面割れなど一定の範囲内での故障については、「故障時利用料」を支払うことで返却が可能です。カエドキ+ではやや仕組みが異なり、この機種では1万2100円(22か月目まで)となっています。

カエドキ+発表時点での対象機種はサムスン電子製の折りたたみスマホ2機種のみとなっています。こうした最新スマホを1年ごとに買い替えたい人に向いているといえます。

カエドキと同様に、ドコモの回線契約がなくてもカエドキ+は利用可能です。以前に問題となった、「同じプログラムを利用して端末を買い替えること」といった縛りもないとのことです。

その他、細かな注意事項までは本記事で網羅できないため、詳細はドコモのWebサイトや窓口での相談などを利用して検討することをおすすめします。

ドコモの収益にも「プラス」?

最新機種を1年ごとに買い替えたい人にメリットがあるのは分かりましたが、ドコモの負担は増えているはずです。ドコモ側にはどういう狙いがあるのでしょうか。

最新機種の売上増や、データの利用増といった効果が見込めるのはもちろんですが、それに加えて、カエドキ+では有償の補償サービスの加入が必須になっているのが興味深いところです。

携帯キャリアにとって、こうした有償の補償サービスは重要な収入源になっています。加入する人が増えれば、ドコモにとってカエドキ+の負担増を上回る収益面での「プラス」を得られる可能性があるわけです。

また、ドコモは環境面でのメリットも挙げており、従来のカエドキで実施してきたリユース・リサイクルの取り組みを、カエドキ+でも加速する方針としています。

スマホを頻繁に買い替えるのは環境に良くない印象はあるものの、カエドキで返却されたスマホが中古品として流通することで、持ち主は変わっても引き続き活用されることになります。

ドコモは5G基地局が使用する電力について再生可能エネルギー実質100%をうたっており、5Gへの移行を進めることが環境にも良いと考えているようです。

iPhone対応はあるか

端末購入プログラムよりもシンプルな方法として、普通に端末を購入し、新機種に買い替えた後に中古業者に売却するというのはどうでしょうか。

その場合、重要になるのが1年後の買取価格です。前モデル「Galaxy Z Fold4」を参考にすると、Galaxy Z Fold5は1年後に機種代金の約55%で買い取ってもらえると予想できます。

ただ、中古の買取価格は端末の状態によって変わります。仮に上限価格で査定された場合でも、実質負担額(予想)は「11万5830円」となり、カエドキ+を利用した「10万3543円」のほうが安くなります。

それに加えて、補償の有無や、査定において大きな減額となる画面割れなどの故障のリスクを考慮すると、カエドキ+のほうが魅力的に思えてきます。

また、iPhoneの対応についても気になるところです。これまでのカエドキには対応しているものの、カエドキ+にiPhoneが対応するかどうか、ドコモによれば現時点では未定とのことです。

iPhoneの場合、1年後でも機種代金の70%近い金額で買い取ってもらえるモデルがあることから、仮にカエドキ+に対応した場合でも、その差は縮まる可能性があります。

毎年、最新のiPhoneに買い替えたい人にとっては、悩ましい選択肢が増えることになるかもしれません。

追記:

9月13日、NTTドコモは「iPhone 15」「iPhone 15 Plus」「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」が「いつでもカエドキプログラム+」の対象機種になることを発表しました。

https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2023/09/13_00.html

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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