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三井住友「Olive」開始 日本のキャッシュレスを加速させるか

山口健太ITジャーナリスト
「Olive」カードをApple Payに登録した様子(筆者撮影)

3月1日、三井住友フィナンシャルグループの新しい金融サービス「Olive(オリーブ)」が始まりました。日本で遅れているキャッシュレス化を加速させるか、筆者は注目しています。

ベースはデビットカード

Oliveは、ざっくり言うと銀行口座とクレジットカードをセットにしたサービスです。アプリの利用を前提に、さまざまな金融サービスを管理できることが特徴となっています。

申し込みは3月1日の朝から始まっており、すでに三井住友銀行に口座がある人なら、アプリから「Oliveアカウント」に切り替えの手続きをすることで、早ければ即日使えるようになります。

「三井住友銀行」のアプリから切り替えできる(アプリ画面より、筆者作成)
「三井住友銀行」のアプリから切り替えできる(アプリ画面より、筆者作成)

実際に筆者の口座を切り替えてみたところ、すぐにアプリ上にカードが発行されました。デビットカードとしてオンラインで買い物をしたり、Apple Payに登録することができています。物理的なカードは後日届きます。

カードとしては1枚で、カード番号や有効期限なども1つのみですが、支払い方法はアプリ上で「クレジットモード」「デビットモード」「ポイント払いモード」を切り替えることができます。これが「Oliveフレキシブルペイ」と呼ばれています(毎月の料金引き落としなどは自動的にクレジットモードになります)。

カード番号は共通だが、アプリで支払い方法を切り替えられる(アプリ画面より、筆者作成)
カード番号は共通だが、アプリで支払い方法を切り替えられる(アプリ画面より、筆者作成)

三井住友カードの説明によると、このカードのベースになっているのは「デビットカード」とのこと。そのため、一般的なデビットカードと同様に利用できない加盟店が存在します。

しかしOliveの場合は、クレジットモードを利用することで、それらの加盟店でも支払いができるとされています。

一部のご利用先では、Oliveフレキシブルペイ(デビットカード)のカード番号が登録できない場合があります。

ただし、Oliveフレキシブルペイにクレジットモードを追加されている場合、「VpassID登録用会員番号照会」に表示されるカード番号・有効期限・セキュリティコードを入力することでご利用いただけます。

https://qa.smbc-card.com/mem/detail?site=4H4A00IO&id=2401

実際に使えるかどうかは試してみないと分かりませんが、これはデビットカードの弱点を補う機能になりそうです。

なお、クレジットモードは審査が必要となっており、この審査に通らなかった場合や、18歳未満の人は、クレジットモードは利用できない状態となります。

もう1つ注目したいのは「Apple Pay対応」です。国内発行のVisaクレジットカードは2021年5月にApple Payに対応したものの、Visaデビットカードはまだ使えませんでした。

Visa日本法人に確認したところ、国内発行のVisaデビットカードとしてApple Payに対応したものは、これまで存在しなかったとのことです。

そのため、Oliveフレキシブルペイはやや変則的なカードではありますが、Apple Payに対応した初めてのVisaデビットカードといえそうです。実現に至った詳細は不明ですが、「フレキシブルペイ機能のApple Pay対応にあたって、Apple様にはご協力をいただいております」(三井住友カード広報部)と説明しています。

これまでApple Payで使うにはJCBまたはMastercardブランドのデビットカードを選ぶ必要がありましたが、これをきっかけに、ほかのVisaデビットカードについても対応が進むことを期待したいところです。

日本のキャッシュレスを加速させるか

日本では、クレジットカードの普及率に対して国際ブランドの付いたデビットカードの普及率が低いことから、これがキャッシュレス化を進める鍵になるのではないか、という見方があります。

日本では、クレジットカードのような後払いを嫌って現金払いを続ける人や、事前にチャージした範囲内で使えるプリペイドの電子マネーを好む人が、まだまだいると考えられます。

その点、Oliveであれば、デビットカードを基本に、必要なときだけクレジットカードとして利用できます。また、ポイント払いは銀行口座やクレジットカードからも残高にチャージできるので、プリペイドのVisaカードにもなるわけです。

一方、これらが全部入りになっているためにOliveは難しいイメージがあります。また、現状のアプリはとりあえず既存のサービスをくっつけてみたという感じで、まだごちゃごちゃしている印象を受けます。

この難解さがOliveを始める上でのハードルになる恐れはあるものの、これまでになく幅広い使い方をカバーしている点には注目しています。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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