Yahoo!ニュース

PayPayユーザー数「さらに倍増」も? 経済圏拡大を狙う

山口健太ITジャーナリスト
PayPayについて語る宮川潤一社長(ソフトバンクの決算会見動画より)

ソフトバンクとZホールディングス(ZHD)の2022年4-6月期決算会見では、「PayPay株式会社」の連結子会社化に注目が集まっています。その先には、LINE・ヤフー・PayPayの連携を強化し、経済圏を拡大するとの狙いが見えてきました。

PayPayの連結子会社で連携強化

2018年にまったくの無名からスタートしたPayPayは、2022年6月末時点のユーザー数が4865万人。2021年の決済取扱高は4.9兆円、決済回数は32.4億回で、QRコード決済全体の約3分の2を占めたといいます。

1回あたりの決済金額は単純計算で1512円となり、比較的少額ではあるものの、2022年4-6月期の決済回数は11.1億回と、昨年を上回るペースで伸びていることがうかがえます。

会社としてのPayPayは赤字が続いていましたが、最近では広告費などのコストを減らせば黒字化できる状態にあるとのこと。先行投資が終わり、収益化のフェーズが近づいているといえそうです。

このPayPayはソフトバンクグループの子会社でしたが、2022年10月にはソフトバンクとZHDが共同出資する会社の傘下になり、両社の連結子会社になる予定です。

10月にPayPayはソフトバンクとZHDの連結子会社に(ソフトバンク提供資料)
10月にPayPayはソフトバンクとZHDの連結子会社に(ソフトバンク提供資料)

連結子会社になると、どういうメリットがあるのでしょうか。ZHDによれば、LINE・ヤフー・PayPayの3つのサービスの連携を強化することで、経済圏をさらに拡大できるといいます。

具体的には、LINEとPayPayのID連携が実現すれば、9200万人のLINEユーザーがPayPayを使えるようになるとのこと。理屈の上では、PayPayのユーザー数は現在の4865万人からさらに倍増する可能性があるわけです。

LINEとのID連携でPayPayのユーザー数倍増を狙う(Zホールディングス提供資料)
LINEとのID連携でPayPayのユーザー数倍増を狙う(Zホールディングス提供資料)

Eコマース事業では、10月にPayPayモールを「Yahoo!ショッピング」に統合します。ポイント発行を増やし、年間購入者は2倍を目指すといいます。国内の2強である楽天とアマゾンにどれだけ迫れるか、注目といえるでしょう。

Eコマースは「Yahoo!ショッピング」に統合(Zホールディングス提供資料)
Eコマースは「Yahoo!ショッピング」に統合(Zホールディングス提供資料)

クレジットカードは、10月にPayPayカード(旧ヤフーカード)がPayPay株式会社の100%子会社になります。カード会員数は中期目標として3倍を掲げています。

QRコード決済でPayPayは圧倒的なシェアがあるとはいえ、キャッシュレス全体で見れば利用金額の多くはクレジットカードが占めています。PayPayは「あと払い」サービスを含めて、業界1位の楽天カードを追う構えです。

PayPayカードの中期目標はカード会員数3倍(Zホールディングス提供資料)
PayPayカードの中期目標はカード会員数3倍(Zホールディングス提供資料)

一方、ソフトバンク側は、PayPayの連結子会社化とともに、新たに「金融事業(仮称)」を立ち上げる構想を明らかにしました。これは従来の「コンシューマー事業」や「法人事業」と同じ並びになります。

ソフトバンクは金融事業(仮称)を新設するという(ソフトバンク提供資料)
ソフトバンクは金融事業(仮称)を新設するという(ソフトバンク提供資料)

詳細の発表は10月以降になりそうですが、「(将来的には)ソフトバンクの屋台骨として、収益の3分の1を担う存在になってほしい」と宮川潤一社長は語っています。

金融分野でも「マルチブランド」展開か

全体的に見ると、LINE・ヤフー・PayPayの総力を結集することで、経済圏争いで競合するドコモ、KDDI、楽天などに対抗しようという狙いが感じられます。

その中で、他社との違いとしては、コミュニケーションのLINE、決済のPayPayなど、性格や出自の異なる複数のブランドが共存している点が挙げられます。

各サービスは重複している部分もあり、たとえばクレジットカードはLINE PayカードとPayPayカード、証券はLINE証券とPayPay証券が存在しています。

銀行はPayPay銀行だけですが、みずほ銀行と組んだ「LINE銀行」についても、(当初の発表からだいぶ時間は経っているものの)設立に向けた準備は進んでいると、出澤剛社長は語っています。

それぞれの特徴を活かしたマルチブランド展開ができれば、他の経済圏にはない強みになりそうです。逆に、無駄が増えたり、ユーザーを混乱させたりする可能性もあります。どのような連携が実現するのか、10月の詳細発表に注目したいところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

山口健太の最近の記事