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Netflix 円安で値上げする可能性はある?

山口健太ITジャーナリスト
米Netflix本社(筆者撮影)

7月19日(米国時間)、米Netflix(ネットフリックス)が2022年4-6月期の決算を発表しました。有料会員数の減少に再び注目が集まる一方で、為替変動の影響も現れています。日本で料金を値上げする可能性はあるのでしょうか。

為替変動に応じた値上げは困難?

コロナ禍で大きな成長を遂げたNetflixは、さまざまな課題に直面しており、2022年1-3月期には有料会員数が10年ぶりに減少したことで大きな話題になりました。

続く4-6月期にその減少幅は拡大したものの、事前予想の200万人よりは少ない「97万人減」にとどまっています。

決算の数字は為替の影響を受けています。前年同期比が9%増となった売上高は、為替の影響を除けば13%増だったとのこと。アジア太平洋地域の売上高は14%増に対し、為替の影響を除けば23%増だったとしています。

Netflixの売上の60%は米国外に依存しており、ドル高になるとドル建てでの売上は減ってしまいます。しかし経費の支払いは大半がドル建てであることから、ドル高によってほぼ一方的に損をしているわけです。

そこで考えられるのが米国外での「値上げ」です。米国では2022年1月に値上げしたのに対し、日本での料金は2021年2月に一部値上げされた後は変わっておらず、そろそろ値上げを予想する声もあります。

7月20日現在の為替レートから単純計算すると、最も安い「ベーシック」は税込で月額990円から1480円に、最も高い「プレミアム」は月額1980円から2980円に、1.5倍の値上げがあっても不思議ではありません。

ただ、このような値上げが現実的に可能かどうかは別問題です。値上げをすれば解約する人が増えることが米国で明らかになっています。その分だけ売上は下がり、一度解約した人を呼び戻すのは容易ではありません。

また、日本の有料動画配信ではアマゾンの「Prime Video」がシェアNo.1との調査があります。Netflixにはオリジナル作品も多いとはいえ、単純に値上げするとアマゾンとの競争はさらに厳しくなるでしょう。

Netflixの決算発表では、中期的にはドル高にあわせて事業を「調整」していく一方、ビジネスに不利になるような措置をただちに取らないようにするとも説明しています。

日本での値上げの有無については直接的に言及していませんが、なるべく値上げしなくて済むよう、別のところで工夫していきたいとのニュアンスは感じられます。

どうなる? 広告付き低価格プラン

このまま日本でも料金据え置きを期待したいところですが、それではどうやって収益を伸ばしていくのでしょうか。

注目は、2023年に始めるという「広告付き低価格プラン」です。広告のテクノロジーと営業では米Microsoftと提携し、成熟した広告市場のある複数の国から展開していく可能性を挙げています。

COOのグレッグ・ピーターズ氏は、「長期的にはテレビ広告より優れた体験を実現する」との方向性を打ち出しているものの、サービス開始当初は慣れ親しんだ形式になるとも語っています。

詳細はまだ分かりませんが、もし作品が盛り上がってきた場面で関係ないCMによって中断されるとしたら、元の料金のままでいいと考える人が多いでしょう。

Netflixの見立てでは、既存プランのユーザーが広告付きプランに一斉に乗り換えるような事態にはならないようです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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