Yahoo!ニュース

「アップルAI」の対応iPhoneは2機種のみ 買い替えは進むか

山口健太ITジャーナリスト
Apple Intelligence(アップルの発表イベント動画より)

6月10日(米国時間)、アップルはWWDCの基調講演において、待望の生成AI関連機能を発表しました。

プライバシー重視の方針から、プロセッサーの処理能力が求められており、対応するiPhoneの機種は限られています。これをきっかけに買い替えは進むのでしょうか。

アップルのAIはプライバシー重視

最近のアップルは「生成AI」ブームへの乗り遅れが指摘されており、株価が伸び悩むなどの影響が出ていました。

その中で開催されたWWDCの基調講演では、最初の1時間でiOSやmacOSの新機能を駆け足で発表。後半40分をAI機能「Apple Intelligence」の説明にあてることで印象付けることを図っています。

残念ながら、まずは英語での提供となり、日本語を含むその他の言語への対応は2025年に持ち越されたものの、マイルストーンが明らかになったという点では一歩前進といえます。

主な機能としては、文章や画像の生成、要約、録音の書き起こし、入力支援や複数のアプリにまたがったアクションの実行など、他社が発表しているものと大きな差はなさそうに感じます。

ただ、その中でも特徴といえるのがプライバシー重視の方針を踏襲している点です。基本的な機能はiPhoneやiPad、Macの端末内で完結する「オンデバイス」処理であることを強調しています。

端末だけでは処理能力に限界があり、クラウドも利用しますが、これもクラウド上に自分だけのプライベート空間を設けることで、その中身はアップルも見ることもできないなど、プライバシー保護を徹底しています。

プライバシーを保護する代わりに、iPhoneやアップルのクラウドに個人情報を預けて、Apple Intelligenceをフルに活用してほしい、という意図を感じます。

また、パートナーとしてはOpenAIと連携し、音声アシスタントの「Siri」では、質問への回答にChatGPTを利用できるようになります。

ここで注目すべき点として、ChatGPTを利用する際には確認の画面が入ることを基調講演では示しています。

ChatGPTを使う場合は確認画面が入るようだ(アップルの発表イベント動画より、筆者作成)
ChatGPTを使う場合は確認画面が入るようだ(アップルの発表イベント動画より、筆者作成)

文章作成に利用する際にも、ChatGPTのアイコンが表示され、ChatGPTを使っていることをユーザーがしっかり意識できるようになっています。

文章作成時にもChatGPTを利用できる(アップルの発表イベント動画より、筆者作成)
文章作成時にもChatGPTを利用できる(アップルの発表イベント動画より、筆者作成)

ChatGPTという外部のAIを呼び出す機能が組み込まれるだけで、ChatGPTそのものは外部のサービスとして独立しているように見えます。

すでにMacにはテキストを選択して「Google検索」ができる機能がありますが、それと同様に、アプリやブラウザを立ち上げてChatGPTを利用する行為を簡単にする機能というのが筆者の理解です。

基調講演では、将来的には他のAIモデルが利用できるようになるとの説明もありました。これもChatGPTと同様に、外部のAIとして、必要に応じて呼び出す方式になると予想しています。

iPhoneの買い替えは進むか

生成AIは「重たい」処理なので、クラウドに任せるなら端末は何でも良いのですが、端末内で処理するのであればプロセッサーの性能が重要になります。

現時点でApple Intelligenceに対応するのは、「A17 Pro」搭載のiPhoneと、「M1」以降のMac、iPad製品のみと発表されています。

特にiPhoneはiPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxの2つのみとなり、現行モデルのiPhone 15や、日本で人気の高いiPhone SEなど、多数のモデルがApple Intelligenceに対応できないことになります。

Apple Intelligenceの対応機種(アップルのWebサイトより)
Apple Intelligenceの対応機種(アップルのWebサイトより)

一方、Macでは2020年発売のM1搭載モデルにも対応していることから、なるべく多くの機種に対応しようという姿勢は伝わってくるものの、プロセッサー性能が追い付いていない印象を受けます。

次の「iPhone 16」が対応するかどうか、またソフトウェアの最適化などで旧機種への対応が広がるかも気になる点ですが、これからiPhoneの買い替えを考えている人にとっては無視できない要素になりそうです。

こうしたAIの進化は、ハードウェアの買い替えを促す起爆剤としても期待されています。日本語対応は2025年とはいえ、Apple Intelligenceの登場をきっかけにiPhoneの買い替えが進むかどうか注目といえます。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

山口健太の最近の記事