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マスクしたまま使える「顔認証決済」広まる可能性は?

山口健太ITジャーナリスト
マスクをしたまま買い物ができる実証実験(筆者撮影)

4月11日、大阪・梅田の地下鉄駅にオープンした新店舗で「顔認証」を利用した決済の実証実験が始まりました。マスクをしたまま買い物ができる便利なサービスですが、広まっていく可能性はあるのでしょうか。

今回、オープンした「Metro Opus 梅田店」は、Osaka Metro(大阪メトロ)による初めての直営ポップアップ型店舗とのことです。場所は御堂筋線梅田駅の北改札で、ヨドバシカメラの近くです。

御堂筋線梅田駅の北改札にオープンした「Metro Opus 梅田店」(筆者撮影)
御堂筋線梅田駅の北改札にオープンした「Metro Opus 梅田店」(筆者撮影)

オープン初日から「顔認証決済」の実証実験も始まりました。カウンターに設置されたiPadに顔を向けるだけで数秒で個人を識別し、支払いが終わります。タッチ操作などはいらない完全な非接触で、両手がふさがっていても利用できます。

顔認証決済の端末としてはiPadを利用(筆者撮影)
顔認証決済の端末としてはiPadを利用(筆者撮影)

利用にあたっては事前にユーザー登録が必要です。実証実験用に、iPhoneとAndroidに対応したスマートフォン用のウェブサイトが用意され、顔情報とクレジットカードを登録します。一般に公開されており、12月までの実験期間中なら誰でも参加できます。

特徴の1つは「マスクをしたまま」高い精度で顔認証ができる点です。この技術はNECによるもので、カメラがマスクを認識した場合、目の周辺の特徴点を抽出、照合することで、社内評価では99.9%以上の精度を誇るといいます。

カメラはiPadのインカメラをそのまま利用しています。レジには店員用のiPadが設置されており、顔認証結果を目視で確認しています。お客さんから見ると何も操作をすることなく進んでいきますが、支払いの前に店員さんによる確認が必ず入るというわけです。

顔認証の結果は店員さんが目視で確認する(筆者撮影)
顔認証の結果は店員さんが目視で確認する(筆者撮影)

店員用iPadの画面には「名前」や「電話番号」といった項目がありますが、この実証実験では未使用で、ユーザー登録時の入力項目も存在していません。支払い情報はクレジットカードの国際ブランドとカード番号の先頭6桁、末尾2桁が表示されていました。

大阪メトロでは今夏に難波駅にも直営店を展開する予定ですが、ここで取得した顔データを流用するようなことはせず、あくまで梅田店での実証実験専用にとどめるなど慎重な姿勢です。

大阪メトロでは、社員を対象として顔認証を用いた改札機の実証実験も進めていますが、今回の顔認証決済とはまた別の取り組みとのことです。

顔認証決済は広まるか

実際に筆者もユーザー登録をして買い物をしてみたところ、ほぼ一瞬で顔が認識され、支払いができました。状況によっては認識にやや時間がかかる場合があるそうですが、多くの場合は一瞬で成功するようです。

今回はあくまで実証実験であり、この店舗で買い物するためにわざわざユーザー登録をする手間がかかるのはやむを得ないものの、将来的に商業施設で一斉導入するといった段階になれば実用的になりそうです。

一方で、顔認証などに抵抗を感じる人もいることから、受け入れられるかは未知数といった印象です。非接触の決済手段として、地下鉄駅では改札機を通るために交通系ICカードを持っている人も多いと考えられます。

実証実験でユーザー登録をした人が繰り返し店舗を訪れるか、現金や電子マネーなどに比べて買い物金額が増えるかなど、導入の効果が数字に表れるかどうかが今後の注目ポイントになりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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