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国内初「SIMフリーGalaxy」登場。なぜ今までなかったのか?

山口健太ITジャーナリスト
国内初のSIMフリーGalaxy(アマゾンのWebサイトより、筆者撮影)

4月7日、サムスン電子ジャパンは「Galaxy」シリーズの発表会において、国内初となる「SIMフリースマホ」を発表しました。これまで携帯キャリア向けに特化してきたサムスンにとって、新たな挑戦になりそうです。

世界のスマホ市場は、携帯キャリアの販売チャネルを通した「キャリア市場」と、キャリア以外の家電量販店やメーカー直販による「オープン市場」(SIMフリー)に分かれています。

現在では日本で売られるキャリアモデルのスマホにSIMロックはかかっていないので、この呼び方は紛らわしいのですが、過去の経緯からオープン市場向けをSIMフリーと呼んでいます。

日本ではキャリア市場が圧倒的に大きく、MM総研の調査では2021年のスマホ出荷台数の92.9%を占めています。メーカーにとってキャリアは、まとまった台数の端末を買い上げ、販売やサポートを一手に引き受けてくれる存在です。

日本市場でNTTドコモとKDDIの2社と密接な関係を築いてきたサムスンにとって、残りの7.1%に過ぎないオープン市場に取り組むビジネス的な優先度は低かったといえます。

その一方で、「通信と端末の分離」が進んだことや、メーカー独自のマーケティングが可能になるといった理由から、SIMフリーを見直す動きもあります。最近ではソニーが、キャリア向けとは発売時期をずらす形でSIMフリーモデルを販売しています。

今回、サムスンがSIMフリーで発売するのは6.6型の大画面ミッドレンジモデル「Galaxy M23 5G」です。一部のコラボモデルを除き、SIMフリーは国内初としています。キャリアによる取り扱いはないモデルで、販路は「Galaxy Harajuku(原宿の直営店)」「Amazon.co.jp」「一部家電量販店のオンライン」のみと限定的です。

Galaxy M23 5G(発表会動画より)
Galaxy M23 5G(発表会動画より)

Galaxy Mシリーズはインドなど新興市場向けとして知られており、トリプルカメラや5000mAhの大容量バッテリーが特徴。Amazon.co.jpでの価格は税込み4万975円です。オンラインでハイエンド価格帯のモデルを売るのは難しいこともあり、まずは気軽に手を出しやすい価格帯を狙ってきた印象です。

また、キャリア向けモデルでは難しい「デュアルSIM」を採用しているのも大きな特徴で、これもGalaxyシリーズでは国内初としています。バンド対応についても、キャリアモデルで問題になりがちなLTEバンド18/19の両方をサポートしています。

Galaxy M23 5Gの特徴(発表会動画より)
Galaxy M23 5Gの特徴(発表会動画より)

モバイル業界的には「サムスンがSIMフリー」というのが最大のニュースといえますが、消費者向けの見せ方としてはグローバル同様に「サステナブル」を強調。ハイエンドのGalaxy S22シリーズが「漁網」のリサイクル素材を活用していることをアピールしています。

韓国のアイドルやブランドに馴染みのある若い世代は環境保護や持続的な消費に関心を高めていることから、Galaxyに「サステナブルなスマートフォン」のイメージを定着させることを狙っているようです。

Amazon.co.jpもスマホ販売を強化

キャリア向けのスマホとは異なり、オープン市場ではメーカー自身で販売チャネルを開拓していく必要があります。発表会の中で目立っていたのはアマゾンの存在です。

アマゾンジャパンからはエレクトロニクス&ITソリューション事業本部 ワイヤレス事業部の平山文洋氏が動画でコメントし、スマホやタブレットの販売を強化していく意向を語りました。こうした場面でアマゾンが出てくるのはなかなか珍しい光景といえます。

すでにAmazon.co.jpにはGalaxyのストアが設けられ、Galaxy M23 5Gや同時に発表したタブレットの新製品「Galaxy Tab S8+」の予約販売のほか、従来のウェアラブルやアクセサリー製品が売られています。

Amazon.co.jp内のGalaxyストアページ(Webサイトより)
Amazon.co.jp内のGalaxyストアページ(Webサイトより)

ここでは単にスマホ本体だけでなく、本体の保護ケースやSIMカードとのセット販売もしています。Galaxyをきっかけに、「アマゾンでスマホを買う」体験をもっと広めていきたいとの思惑が感じられる動きといえるでしょう。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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