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ヤフーも参入「クイックコマース」 配達員にメリットも

山口健太ITジャーナリスト
「Yahoo!マート」商品ピックアップの様子(Yahoo!マート提供画像)

1月26日、Zホールディングスグループの3社が食料品や日用品を取り扱う「クイックコマース」事業の本格展開を発表しました。デリバリー市場に欠かせない配達員にとっても、メリットがあるようです。

今回発表した「Yahoo!マート by ASKUL」は、2020年に福岡で実験した「PayPayダッシュ」や、2021年7月から「PayPayダイレクト by ASKUL」として展開してきたサービスがもとになっているそうです。

実態としてはデリバリー専門のミニスーパーのようなサービスで、「出前館」のアプリ内にYahoo!マートが表示されるようになります。注文した商品は出前館の配達員がデリバリーする仕組みです。

Yahoo!マート配送拠点の様子(Yahoo!マート提供画像)
Yahoo!マート配送拠点の様子(Yahoo!マート提供画像)

通常のネット通販とは異なり、最短15分程度で届くのがクイックコマースの特徴です。最近はフードデリバリー事業者の参入が相次いでおり、フィンランド発の「Wolt」や、残念ながら1月末で日本から撤退する「foodpanda」の事例がありました。

背景として、食事だけでなく日用品のデリバリー需要が高まっていることがあります。基本的には自分で買い物に出かけるという人でも、仕事や子育てで買い物の時間が取れないとき、体調不良、天候不良で外出が難しいときの選択肢として利用が広がっているようです。

実際に注文できる商品を見てみると、カップ麺やドリンク、お酒だけでなく、調味料、アイスクリームや冷凍食品、マスクや化粧水など幅広い商品を選べます。その数は約1500種類で、「ネットスーパー」と「コンビニ」の中間を狙うような位置付けといえます。

Yahoo!マートで注文できる商品の例(出前館アプリより筆者作成)
Yahoo!マートで注文できる商品の例(出前館アプリより筆者作成)

最低注文金額は800円から、送料はキャンペーンで無料となっています。野菜や魚といった生鮮食品はないので、日常的な買い物をすべて置き換えるものではありませんが、コンビニよりも便利な面はありそうです。

ただし、当面は利用できるエリアが限られています。まずは2022年度中に東京23区の全エリアをカバーし、その後は23区以外の東京都や、全国の主要都市に展開していくとの方針です。

同時に、全国のネットスーパーやコンビニは宅配事業の強化を進めています。1月27日にローソンは店内厨房を活用した宅配調理事業を発表したように、サービス内容も多様化しています。競争激化が予想される中で、Yahoo!マートがどれくらい存在感を示せるのか、注目といえるでしょう。

配達員にとってのメリットとは?

消費者にとって「ほしい物がすぐに届く」体験が広がる一方、それを支える配達員の存在はますます重要になっています。出前館によれば、クイックコマースの拡大は配達員にとってもメリットがあるといいます。

出前館の配達員には、時給制のアルバイトと歩合制の業務委託の2つの形態があり、特に後者は1件の配達で最大1980円もの高額報酬を得られるとのことから、人気が高まっています。

これまでのフードデリバリーの課題としては、ランチやディナーといった食事時間に需要が偏りがちでした。しかしクイックコマースで日用品を取り扱うようになることで、配達需要を平準化できると出前館は見込んでいるようです。

配達需要を平準化できるという(Yahoo!マート発表会資料より)
配達需要を平準化できるという(Yahoo!マート発表会資料より)

物流業界を含め、デリバリー事業者の間では配達員の奪い合いが起きており、いかに魅力的な仕事環境を提供できるかの勝負になっています。「出前館なら稼げる」という評判を維持することは、クイックコマースの展開において欠かせない要素になりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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