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au経済圏での資産形成に好影響?「米国株取引」開始

山口健太ITジャーナリスト
auカブコム証券が米国株サービスを発表(Webサイトより)

auカブコム証券が2022年1月24日から米国株式のサービスを開始します。米国株の好調を背景とした投資ブームが続く中で、「au経済圏」を利用した資産形成の魅力が高まりそうです。

auブランドの金融サービスは「連携強化」を進めています。auじぶん銀行の口座残高をauカブコム証券から自動的に使えるサービスに加え、9月からは「au PAY」やクレジットカードの連携による最大「年0.20%」の優遇金利(税引き前)を提供開始。楽天などに真っ向勝負を挑んでいます。

au PAYを中心に金融サービスを連携する(KDDI 2022年3月期 第2四半期 決算説明会資料より)
au PAYを中心に金融サービスを連携する(KDDI 2022年3月期 第2四半期 決算説明会資料より)

auカブコム証券は、2019年12月にカブドットコム証券から社名を変更。これまで日本株や投資信託の取引が中心でしたが、新たに米国株取引に対応します。取引手数料や為替手数料は比較的低く抑えつつ、三菱UFJフィナンシャルグループとしての強みを活かしたレポートを2022年春から配信予定としています。

とはいえ、ただちに他社に対抗できるほどの内容ではない印象を受けます。サービス開始当初の取り扱い銘柄は主要な約360銘柄に絞り込むとしていますが、SBI証券は5000銘柄超に拡大しているなど、ネット証券各社はそれぞれに特徴ある米国株式サービスで競っているからです。

この点について、auカブコム証券はこれから始める人の取り込みを狙っているようです。「投資の裾野は広がっている。すでに他社で取引している人も多いと思うが、米国株は初めてというお客様も多数いる」(auカブコム証券 執行役員の榊原一弥氏)といいます。

決算説明会の資料によれば、auカブコム証券の顧客全体は40代以上が8割を占めており、20代・30代の割合は19%にとどまっています。しかし2021年4月以降に限ってみると20代・30代はあわせて47%を占めており、若年層の口座開設が増えていることがうかがえます。

auカブコム証券の顧客属性(2022年3月期 第2四半期 決算説明会資料より)
auカブコム証券の顧客属性(2022年3月期 第2四半期 決算説明会資料より)

その背景として、スマホ決済のau PAYアプリから金融サービスに触れる機会が増えていることや、Pontaポイントによる投資信託の購入など、資産形成を始めやすいツールが充実してきたことが影響していると考えられます。

2021年は米国の株価指数が大きく伸びたこともあり、米国株式自体の人気も高まっています。2022年も好調が続くかどうかは分からないものの、auカブコム証券は「若年層の方を中心にグローバルな投資意識が高まり、米国株式に対するニーズが顕在化した」としています。

「外貨預入0銭」のauじぶん銀行との連携はある?

資産形成を始める上で、au経済圏をメインに利用することは選択肢の1つといえるでしょう。その中で筆者が期待したいのは「auじぶん銀行」との連携です。

auじぶん銀行は外貨預金に注力しており、日本円から外貨に預け入れる際の手数料は0銭(無料)です。しかし米ドルで預金している人が米国株を買おうとすると、日本円に戻す際に1ドルあたり25銭、auカブコム証券での円貨決済で1ドルあたり20銭の手数料がかかる計算になります。

米ドルで米国株を買えるサービスについて、auカブコム証券は2022年度内に始める予定ですが、現時点ではauカブコム証券のアカウント内での外貨決済を予定しているとのことですが、「auじぶん銀行とあわせて使っているお客様は多く、ニーズがあれば連携も検討していく」(榊原氏)と語っています。

ネット証券各社の米国株式サービスとしては、楽天証券がポイント利用や積立を開始。SBI証券は2022年のサービス拡充を宣言、2022年2月には松井証券が新たに参入を予定しているなど、競争は激化しています。auカブコム証券がどこまで頭角を現してくるか注目したいところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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