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【光る君へ】『栄華物語』が記す藤原道隆、道兼、道長の三兄弟の性格

渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役
藤原道長。(提供:イメージマート)

 大河ドラマ「光る君へ」の主人公は紫式部であるが、ほかにも魅力的な人物が登場する。藤原兼家の子の道隆、道兼、道長の三兄弟は、物語の進行上、欠かすことができない。歴史物語の『栄華物語』には、三兄弟の性格が見事に描かれているので、紹介することにしよう。

 そもそも『栄華物語』は正編と後編から成り、11世紀後半から12世紀初頭にかけて成立した歴史物語である。藤原道長・頼通の時代を中心にして、約200年の公家社会の歴史を編年体で描いている。

 作者は不詳であるが、正編の作者は赤染衛門が有力視されている。以下、三兄弟の性格を確認しよう。

◎藤原道隆

 道隆は容姿端麗で、性格も極めて上品だった。しかも、優れて優美だったという。次に紹介する弟の道兼とは、雲泥の差だった。道隆の正室は非常に才覚があり、多くの人から注目されていた。

 道隆はことのほか正室を愛し、子をもうけたが、好色だったので側室との間にも子があった。しかし、道隆は正室の子をいちばん大切にしたという。

◎藤原道兼

 道兼は毛深いうえに顔の色が悪く、格別に醜かったという。性格は男らしくも老獪で、かなり扱いが面倒だった。兄の道隆には、常に教えてやるという尊大な態度を取っていた。

 ただし、道兼は女性への浮気心が乏しく、正室との間にたくさん男子をもうけたが、姫がいなかったことを遺憾に感じていたという。

◎藤原道長

 道長は容貌や性質が兄の二人とは違い、男らしく、信仰心が厚かった。また、自分に心を寄せる人に対しては、特別に目を掛けた。それは尋常なものではなく、とても考えられないくらいのものだった。姉の詮子は、ことのほか道長を寵愛し、「自分の子」とまで言っていた。

 道長は歳が20歳になっても、恋愛への興味がなかった。それは、つまらないことで人から恨まれたり、女性からつれない人と思われるのが煩わしいからだったので、目立たない女性に密かに声を掛けるようなところがあった。

 こうした道長の性格が世の人に広まり、婿にしたいという人があったが、道長は「今しばらくは娶りません。考えがあります」と一向に耳を貸さなかった。兼家は「道長は何を考えているのか」とボヤいていたという。

 『栄華物語』には、このように三兄弟の性格が描かれており、ドラマの内容にも反映されているようだ。道長の性格は、ほぼそのもので描かれている。

株式会社歴史と文化の研究所代表取締役

1967年神奈川県生まれ。千葉県市川市在住。関西学院大学文学部史学科卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。大河ドラマ評論家。日本中近世史の研究を行いながら、執筆や講演に従事する。主要著書に『大坂の陣全史 1598-1616』草思社、『戦国大名は経歴詐称する』柏書房、『嘉吉の乱 室町幕府を変えた将軍暗殺』ちくま新書、『誤解だらけの徳川家康』幻冬舎新書、 『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』柏書房、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』星海社新書、『関ヶ原合戦全史 1582-1615』草思社など多数。

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