大河ドラマ「鎌倉殿の１３人」では、北条義時は公暁が源実朝を討つことを事前に察知していたが、その点について詳しく掘り下げてみよう。

■公暁の計画

　源頼家の遺児だった公暁は実朝（頼家の弟）の猶子となり、祖母の北条政子の配慮によって、鶴岡八幡宮の別当に就任することになった。次期将軍候補から外れたとはいえ、それなりの処遇をされたわけである。

　ドラマの中では三浦義村が公暁に父・頼家の無残な最期を教え、実朝の暗殺を促していた。義村は公暁の乳母父だったので、実朝の代わりに公暁が将軍になれば、自分も権勢を振るえると考えたのだろう。

　しかし、義村が権勢を握るとするならば、公暁に暗殺を促すのは愚策であり、ほかの者に命じるのが筋だろう。公暁が暗殺に失敗すれば、事が露見するので、義村のリスクが高いからである。

■北条義時は事前に察知したのか

　ドラマの中では、北条義時がすでに公暁の実朝暗殺計画を知っていた。義時は計画を知っていたが、あえて公暁を泳がせようと考えた。その理由は、いかなるところにあったのか。

　右大臣就任の拝賀式で、公暁が実朝を殺害したあと、義時はその場で公暁を斬るという算段だった。そうすれば、実朝も公暁もいなくなるので、以後の政局で義時が有利になるということだろう。一方、公暁のもう一人のターゲットは義時だった。

　しかし、史実においては、義時が急に体調不良を訴え、代わりを務めた源仲章が巻き添えで亡くなった。ドラマでは、仲章が義時に太刀持ちの役を譲ってほしいとのことだった。いずれにしても、実朝殺害後、速やかに公暁を討ち取ることができたのか疑問ではある。

■まとめ

　義時が公暁の実朝暗殺計画を知っていたというのは、一種の陰謀論かもしれないが、これは成り立たないだろう。どうせ公暁を殺すならば、計画を知った時点で捕縛して殺害すれば、ことはスムーズだからである。

　すでに、義時は公暁の父・頼家を伊豆に追放し、のちに殺害した。実績はある。ドラマの話とはいえ、あえて公暁を泳がせるという生温い手を使ったとは考えられないだろう。