大河ドラマ「鎌倉殿の１３人」では、源実朝が公暁に暗殺される展開になった。公暁は三浦義村にそそのかされて実朝を暗殺したのか、詳しく掘り下げてみよう。

■源実朝の暗殺

　建保７年（１２１９）１月２７日、鶴岡八幡宮において、実朝の右大臣拝賀の儀式が執り行われた。前年、実朝は２７歳という若さで、右大臣に任命されたからである。

　式の当日は、２尺（約６０ｃｍ）もの雪が降り積もっていたといわれている。実朝が参拝を終えて帰ろうとしたところ、公暁に襲撃されて殺害された。実朝は、あっけなく殺されたのだ。

　一説によると、公暁が討とうとしたのは北条義時だったといわれているが、逆に実朝暗殺の黒幕こそが義時だったとの説もある。黒幕の一人としては、三浦義村の名も挙げられている。

■三浦義村が暗躍したのか

　義村は、公暁の乳母父を務めていた。乳母父が養育した子供に大きな影響力を持ち、ときに後見として絶大な権力を持つこともあった。比企能員と源頼家の関係は、好例であろう。

　仮に、実朝が暗殺され、公暁が代わりに征夷大将軍になれば、義村は後見として大いに権勢を振るうことができる。それゆえ義村は、公暁に実朝を暗殺するよう、そそのかしたといわれている。

　しかし、実朝の暗殺後、情勢は公暁にとって不利になり、義村も考え直すところとなった。そこで、義村は公暁を裏切り、義時の指示に従って、公暁を殺害したというのである。

　あるいは、義時はこの策謀を事前に知っていたが、あえて止めることなく傍観し、事の次第が終わった後に公暁の討伐を指示したという。つまり、義村も義時に踊らされていたようなものであるといえよう。

■まとめ

　義村が公暁をそそのかして実朝を暗殺したことを裏付ける史料はない。ここまで書いたことも、当時の状況から考えた推論に過ぎない。

　やはり、義村が危険を冒してまで、実朝暗殺を公暁に指示したのか疑問が残る。こうした陰謀説は、真に受けるべきではないだろう。