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アメリカ人の心を知るために:アメリカとキリスト教福音派:福音派≠トランプ氏支持

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:福音派の伝道者ビリー・グラハム師が死去 遺体を議事堂に公開安置(写真:ロイター/アフロ)

トランプ氏と共に語られることが多いアメリカ福音派。しかし、福音派の人々がみなトランプ支持派ではない。揺れるアメリカ社会、議事堂に突入するような暴走するアメリカ人の心理を理解するために、福音派の歴史と現状を知ろう。

■世界を理解するための宗教理解

世界を理解するためには、キリスト教や聖書を理解する必要がある。世界の総人口73億人のうち23億人(人口比で32%)をキリスト教徒が占めている。次いでイスラム教徒が18億人だが、イスラム教も、キリスト教で言う旧約聖書に基づいている。

キリスト教は、イエスキリストを救世主と信じるが、イスラム教ではイエスも預言者のひとりであり、さらに偉大な預言者がマホメット(ムハンマド)だと信じている。

ユダヤ教も旧約聖書に基づき、今も救世主の登場を待ちわびている立場だ。

日本人は世界の宗教にうといのだが、宗教の歴史がわからないと、ユダヤ教イスラム教キリスト教が絡み合う中東問題もわからないだろう。彼らの信仰、信念、願い、悔しさ、怒りの心が、わからないだろう。

さらに、現代のアメリカ人の心と行動を理解するためには、宗教の歴史だけでなく、今のキリスト教のことを知ることが必要だ。

■アメリカと福音派

「福音派」といった言葉を、一般のニュースで聞くことはほとんどなかった。しかし、アメリカの元大統領トランプ氏の名前が大きく報道されるとともに、福音派のニュースが日本でも聞かれるようになってきた。福音派は、トランプ氏の強力な支持母体だ。

実は、トランプ氏登場以前から福音派はアメリカで大きな力をもってきた。この記事の最初にある写真は、福音派の代表的な伝道者だったビリーグラハム師の遺体が議事堂に公開安置されたことを伝える報道写真だ。

それほどまでに、福音派は大きな力をもっている。中南米やアフリカ諸国でも、福音派は力を増している。

■キリスト教福音派とは

現在のキリスト教は、2000年かけて作られたものだ。様々な教会の会議や神学者たちの議論、民衆の運動の中で、カトリックとプロテスタントに分かれ、プロテスタントの中でも多くの教派が生まれてきた。福音派(Evangelical)も、その一つだ。

キリスト教神学、聖書学の発展に伴い、キリスト教の思想も近代化していった。しかし、18世紀ごろから繰り返し起きた信仰復興運動を経て、福音派は生まれてきた。

福音派のあり方も国によって異なるが、アメリカの福音派は、キリスト教原理主義、宗教右翼と呼ばれることもあり、進化論を否定する人たちもいる。

日本のマスコミが報じる福音派は、極端な活動をしている人たちが多いように思う。福音派とトランプ氏は、共に手をたずさえ、リベラルな思想と闘っているように見える。

しかしそれは、一面的な見方だ。むしろトランプ氏の登場によって福音派自体も大きく揺れている。それは、アメリカ人の心を揺らし、アメリカ社会に変化をもたすことになるかもしれない。

福音派も様々だ。日本の福音派は、むしろトランプ氏のような考え方に反対する人が多いだろう。実は、アメリカでもそれは起きようとしている。

■トランプ氏を支持しない福音派牧師たちの苦悩

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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