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感染者いじめ、コロナ差別を許すな:夏休み明け文科省緊急メッセージ:感染を怖がり人を怖がらない

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:コロナから体も心も守ろう(写真:アフロ)

<夏休みが終わり、学校が始まりました。けれども今、感染者いじめ、コロナ差別の危険性が高まっています。>

■文科省緊急メッセージ:誹謗中傷、感染者いじめをなくせ

小中高では、短い夏休みが終わり、2学期が始まりました。でも、新型コロナウイルス感染の不安は続きます。

文科省は、子供と大人に、呼びかけています。

文科省によると、全国の学校で集団感染が相次ぎ、感染者らへのいじめや学校への誹謗(ひぼう)中傷が起きていることから、多くの学校で2学期が始まるこの時期にメッセージを出した。

児童や生徒、学生には「感染した人が悪いのではありません。早く治るよう励まし、治って戻ってきたときには温かく迎えて欲しい」と呼びかけた。

出典:「感染者責めないで」 文科相、いじめや誹謗中傷に声明 8/25(火) 16:30朝日新聞Y!

教職員に対しては子どもたちが誤った認識や不確かな情報に惑わされず、科学的根拠に基づいて行動できるよう指導することを求めています。

保護者や地域住民に対しては、感染者への差別や偏見、誹謗中傷などを許さないこと、感染した個人や学校を特定して非難するなど、周囲で差別につながる言動があった時は同調せず、やめるよう声を上げてほしいと呼びかけています。

出典:差別中傷で文科省緊急メッセージ 08月25日 16時52分 NHK NEWS

■コロナ感染者いじめ

大人の世界なら、偏見差別、誹謗中傷と言われますが、子供の世界なら、コロナいじめ、感染者いじめです。以前から、感染したらいじめられるの?という不安は、子供たちの間にありました。

「感染したら、いじめられるの?」――不安を抱える子供たちへ【#コロナとどう暮らす】

コロナによる混乱は、学校内でも続いています。いじめを防ぐためには、子供の心の問題だけでなく、いじめが起きにくクラス作りが大切なのですが、多くの教員たちが不安を感じています。

コロナ禍で、先生も子供も、心と時間の余裕を失いがちだからです。

「いじめが起こりにくいクラスを作れない」現状も? “コロナ禍で今後いじめ増”教職員の9割が懸念

感染予防のためにソーシャルディスタンスを取れとの指導は、一歩間違えると、相手をバイキン扱いし、いじめにつながる恐れがあるでしょう。大人の世界でも、自粛警察などと呼ばれる乱暴や、感染者を出した学校への偏見差別誹謗中傷が頻発したのですから。

■感染を怖がり人を怖がらない

感染は、正しく恐れましょう。感染予防のために工夫をしましょう。しかしそれは、都会からきた人を忌み嫌うことではありません。病院関係者の家族や、病気が治って戻ってきた人を避けることでもありません。

そんなことは、非科学的な態度でしょう。

コロナに関する偏見差別や誹謗中傷は、悪人の行為ではありません。むしろ、自分や家族や地域を守ろうとする行為でしょう。しかし、不安か過剰になると、「疑わしきは罰せよ」という気持ちになり、人権侵害的な中傷やいじめが起きてしまうのです。

科学的には、なかなか「絶対」はありません。しかし交通事故が考えられるからと言って、横断歩道を渡らないのは、正しい行動ではありません。それは科学的根拠に基づく行動ではありません。

不安がる人の心には共感を示したいと思いますが、差別中傷、いじめの行動には、同調してはいけません。

■文科省緊急メッセージは、どう報道されるか

コロナ問題は、今も最も多く報道されるテーマです。いじめ問題も、普段なら大テーマです。でも、今回の文科省緊急メッセージは、地味なニュースかもしれません。ワイドショーが、長時間扱うようなニュースではないでしょう。

私たちは、コロナとどう戦い、どう生きようとしているのでしょうか。もちろん、感染予防が大切であり、毎日の感染者数の報道も必要でしょう。新しい薬や、スーパーコンピューターを使った解析も興味深いものです。

けれども、私たちの心の問題も重要です。健康とは、単に体が病気ではなないということではないからです。

「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」

子供も大人も、コロナウイルスがあっても、真に健康でありたいと思います。本当なら、文科省の緊急メッセージに合わせて、コロナの偏見差別誹謗中傷、コロナいじめを許さないぞ!と、社会的に盛り上がれば良いのですが。

夏休み明けの子供達が、健康的に、楽しく充実した学校生活を遅れますように。

 

 

文部科学大臣からのメッセージ:新型コロナウイルス感染症に関する差別・偏見の防止に向けて(令和2年8月25日

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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