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木村花さんの悲報、SNS書き込みが「凶器」か--ネットいじめの社会問題--

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:ネットは人を救い人を殺す(写真:アフロ)

■木村花さん悲報、SNS書き込みが“凶器”に

一人の若い女性が命を失いました。

恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演中だった女子プロレスラーの木村花(きむら・はな)さんが23日未明、亡くなったことが分かった。22歳。神奈川県出身。死因は不明で、自殺とみられる。木村さんは番組での行動を巡り、ネット上で激しい誹謗(ひぼう)中傷を受けていた。

出典:木村花さん悲報、米でも衝撃…番組盛り上げに一役買ったSNS書き込みが“凶器”に 5/24(日)スポニチY!

■世界もネットいじめと問題視

とても痛ましい出来事ですが、この問題は木村花さん一人の問題ではありません。世界も、日本で起きた悲劇に注目しています。

木村花さんが22歳の若さで亡くなった衝撃のニュースは世界を駆け巡った。〜海外メディアも木村さんの早すぎる死を「ネットいじめ」の社会問題としてクローズアップした。〜

人を死にまで追いやるSNSでの誹謗中傷問題は、世界中で社会問題となっている。木村さんの死因は不明だが、SNSでの誹謗中傷に悩んでいたことと無関係とは思えず世界中に問題提起する衝撃的なニュースになった。

出典:海外の主要メディアも女子プロレスラー木村花さんの悲報を「ネットいじめ」の社会問題として伝える 5/24(日)THE PAGE Y!

ネットいじめ、ネット上の誹謗中傷で悩んでいる人が、世界中にたくさんいます。

■有名人へのネット上の悪口は自由か:ネットコミュニケーションの特徴

有名人が、活動に関して批判されるのは当然です。政治家は政策に関して批判されます。プロ選手も、怠慢プレーで喝(かつ)を入れられることはあります。小説家も映画監督も、作品が批評されるのは当然です。

有名人がプライバシーを売り物にしているなら、報道されたくないプライバシーが報道されるのも仕方がありません。結婚式をマスコミに公開して人気を集めようとするなら、離婚が大きく報道されるのも、我慢しなくてはなりません。

「有名税」などとも言われますが、世の中に名前を出すのは、リスクが伴います。

けれども、有名人に対してなら、何をしても良いわけではありません。

ネット上の匿名の誹謗中傷に関して、以下は全て言い訳になりません。

「表現の自由」

「ネットだから良い」

「相手が有名人なら良い」

「みんながしているから良い」。

私的なおしゃべりなら、構いません。居酒屋のおしゃべりで何を話しても、社会的問題にはならないでしょう。しかし、ネットは公の場です。個人の発信でも、本質的にはテレビや新聞と変わりません。責任が伴います。

それは自動車の運転と同じです。18歳の免許取立ての青年が、小さな中古車に乗っていたとしても、事故を起こしたときの責任は、高級車に乗っているベテランドライバーと同じです。

ネットの発言は、世界に開かれた公の場での発言であり、可能性としては、世界の人が見ますし、本人が見ることもあります。

ところが、ネットは公の場なのに、まるでプライベートの場のような気がしてしまうのが、ネットコミュケーションの特徴です。

リアルな場で、実名と所属をきちんと出し、本人の目の前や、テレビに出演してでも言えることでなければ、ネットでも言ってはいけません。

お笑い芸人が、テレビで熱湯風呂に逢っているからといって、街で出会った時に熱湯をかけてはいけません。テレビで、「はげ!」と相方に言われているからと言って、あなたが街中で言ってはいけません。

芸人が、ステージ上でバナナの皮で滑って転べば、大笑いして結構です。しかし、駅の階段でその人が転んだ時には、笑わずに、手を差し伸べて助けます。

悪役が正義の味方にパンチされるのは、リンクや物語の中だけです。

■人間関係とネットコミュニケーションの基本:どんなに有名な人にも、どんな悪人にも

たとえばヤフーも、表現の自由を守りつつ、表現の自由は無制限ではないと語っています。

ヤフーニュースのコメントポリシーで禁じられている投稿内容の一つが、次のような「公序良俗に反する内容」や「悪質な批判」です。

公序良俗に反する内容としては、「特定の個人(公人を含みます)に対する人権侵害、誹謗・中傷に該当しうるコメント」が禁止です。

悪質な批判としては、「被害者・被害者の親族、加害者・加害者の親族および関係者などに対する人権侵害、誹謗・中傷に該当しうるコメント」「根拠のない批判や全否定的なコメント」は、禁止です。

政治家のような公人に対してですら、正当な批判はOKですが、人権侵害や誹謗中傷は公序良俗に反し、禁止です。事件の加害者に対してですら、同様です。

これは、ヤフーがネット上の表現を制限してるわけではありません。ヤフーの外で、自分のサイトで自分の責任で発言するなら、ヤフーのコメントポリシーに縛られることはありません。

しかし、ネット上でも、友人相手でも有名人に対してでも、どんなに悪い人だとあなたが思う相手に対しても、公の場で言って良いことと悪いことがあります。

ヤフーのコメントポリシーは、これがネットの基本であり、人間関係の基本です。

マスメディアの発信は、二重三重のチェックを受けています。そして場合によっては、自分たちが訴えられることを覚悟の上で、情報発信しています。

以前なら、一般の人が公に情報発信することはできませんでした。しかし今や、私たちはネットという強力なツールを手に入れました。でも、私たちはみんなネットの使い方に慣れていません。

自動車の運転の仕方はわかり、誰でも運転が許可され、高速道路もできた。でも、安全教育を受けておらず、事故を起こした際の責任も覚悟もない。そんな人たちがみんなで車の運転をしたら、悲劇が起こるのも当然です。

ネットも自動車も、便利な道具で、人の命も救います。けれども、一歩間違えれば、恐ろしい凶器になるのも、同じでしょう。

大きな事件があるたびに、規制の話題も上がります。しかし問題解決に必要なのは、長い目で見た教育です。交通事故も、交通安全教育によって激減してきました。インタネットの未来を左右するのは、私たちネットユーザーです。

ワシントンポスト紙は、語っています。

「木村さんは、実在の人物で、物語上の角の人物ではないことに気づいてほしい」。

追記:今度は、山里亮太さんなど番組関係者への誹謗中傷が始まりました。5/30

誹謗中傷とは言葉のテロリスト--日の丸マスク、室井佑月さん、木村花さん、山里亮太さん--

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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