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ウイルスの次にやってくるもの:日本赤十字社からの大切なメッセージ

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:コロナの次にやってくる「恐怖」に負けないために(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

■ウイルスの次にやってくるもの:日本赤十字

新型コロナウイルスは恐ろしい。でも、その次にやってくるものは、もっと恐ろしいかもしれない。

手を洗っても流せない。

それは、過剰な防衛本能から生まれる。

それは、ウイルスよりも恐ろしい。

それは、「恐怖」と「相互不信」。

不確かな情報にふりまわされず、

笑顔と優しい会話を取り戻そう。

「恐怖」に餌を与えるのをやめよう。

■ウイルスの次にやってくるもの:「恐怖」「不安」「相互不信」

日本赤十字社作成の動画は、私たちにとても大切なことを伝えています。

この動画は、注目が集まり始め、今日4月30日現在、160万回を超える再生数があります。

動画は語ります。

感染拡大を防ぐためには?

「きちんと手を洗うだけで、感染の確率はぐんと下がる」

でも、

暗いニュースばかりに触れ、間違った情報に惑わされると、絶望(もう、みんな助からない)や、陰謀論(誰かが大切なことを隠している)が心の中に湧いてきます。

人は、不安と恐怖の中で、疑心暗鬼が生まれ、誰かを責めたくなります。

「新型コロナは誰のせい?」という犯人探しが始まり、誰かを責めて、誰かを攻撃したくなります。その結果は、傷つけあいと分断です。

感染したことを個人が謝罪し、組織が謝罪し、感染を恥と感じるようになります。あなたもきっと、「地域(職場)で最初の感染者にはなりたくない」と思ったことでしょう。

そうすると、病気への恐怖だけでなく、人から非難されることへの恐怖に怯え、症状を隠す人も出てきます。その結果は、さらなる感染拡大と恐怖と相互不信です。

報道ステーション富川悠太アナウンサーのコロナ謝罪:人はなぜ不当に責められるのか

■対策:「恐怖に飲み込まれる前にできること」

○「恐怖に餌を与えない」

暗いニュースばかり見ない、不確かな情報をうのみにしないことは、大切です。

「共感疲労」コロナ報道を見て苦しんでいるあなたへ:テレビを消してラジオをつけよう

○「立ち止まって考えよう」

恐怖は恐怖を生み、人々に伝わります。わからないことは、わからないと認めましょう。

恐怖と不安に飲み込まれたまま、話し続け、ネットで情報を集め続け、発信、リツイートし続けると、さらに混乱が人がります。

「〜らしい」「〜という言う人もいる」。そのような曖昧な表現でも、デマや誤情報は広がり、私たちの心を蝕みます。

リツイートする前に、立ち止まって考えましょう。

○「恐怖から距離を取る」「恐怖や差別の根っこには、過剰な防衛本能がある」

意地悪な悪人が、買い占めや偏見差別をを起こしているのではありません。動機は、家族愛であり、自分や家族を守りたい思いです。

でも、冷静さを失うと、過剰な買いだめや偏見差別につながります。自分に人が近づくと怒鳴り声を上げ、お釣りを直接手渡されたといって怒り、マスクをしていないと懲戒処分にし、病院スタッフや家族、宅配の配達員さんをバイキン扱いする人まで出てきます。

マスクをつけないと懲戒処分!?:終わらないマスク騒動・もっと必要なコロナ対策

○「冷静に客観的に恐怖を見つめれば、恐怖は薄れていく」

人の気持ち、感情は大切ですが、感情的になりすぎると、人間関係が破壊されます。科学的で正しい情報に基づいて、冷静に。

たとえば、新潟県内の郵便局で配達業務の担当者が感染しました。でも、配達された郵便物から感染する可能性はとても低いと専門家が説明したことで、県民は納得し、郵便物の配達地域を追求するようなことは起きませんでした。

店でも家庭でも、短気を起こしてはいけません。激しい怒りの感情は6秒です。ちょっと冷静になれば、突発的な暴言暴力は防げます。

誰がいつ感染するかはわかりません。明日は我が身です。自分が偏見差別を受ければ、すぐにわかるのに、人に対して偏見差別するとき、私たちはそれに気付きません。どうか、客観的に自分の行動を振り返りましょう。ゆっくり考えて見ましょう。

新型コロナウイルスによる偏見差別いじめ防ごう

○「恐怖の嫌がることをする」

笑顔と日常を取り戻しましょう。

会えないなら、電話などで話しましょう。楽しいおしゃべりは、最高のストレス発散方法です。

「いつものように」。食事、睡眠をとりましょう。

日常的な活動は、ストレスを下げ、恐怖と不安を和らげます。

○「恐怖は誰の心の中にもいる」「だから励ましあおう、応援しあおう」

ウイルスの恐怖で、冷静さを失っている人がいます。ストレスで、抑うつになったり、イライラしている人もいます。人を差別し、失礼な言動を取っている人もいます。

でも、その人たちを頭ごなしに非難しても、問題は解決しません。みんなの心に恐怖があり、みんながストレスにさらわれています。だから、お互いに理解し合い、優しい言葉をかけ合いましょう。

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○「人は団結すれば恐怖よりも強く、賢い」「正しく知り、正しく恐れれる」

新型のウイルス、新しい脅威、みんなが経験していない世界の混乱。この中で、正しく怖がることは、簡単ではありません。でも、正しく知ることこそが、ウイルスと戦う武器です。

知的ワクチンを打とう:新型コロナウイルス肺炎の感染予防とリスク・コミュニケーションの心理学

○「今日、私たちのできることを、それぞれの場所で」

医療には医療の仕事があり、スーパーやドラッグストアの店員さんの仕事があり、役所にも民間企業にも、家庭にも、するべきことがあります。

自分のするべきことをすることが、ストレス対策になり、みんなのためになります。現場はいつも混乱しています。議論は必要ですが、それぞぞれの場所で頑張っている人を、応援しましょう。

今は緊急事態です。頑張ることは大切ですが、テレワークも、遠隔授業も、子供の教育も、無理せずに。

それぞれの人が、自分のできることを自分のできる範囲で。

ウイルス対策で、懸命に頑張っている人たちがいます。私はワクチンは作れませんが、私にもできることがあります。あなたにもできることがあります。

ウイルスの次にやってくるものが、恐怖と憎しみではなく、愛と希望になりますように。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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