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『ブギウギ』スズ子(趣里)を守った、愛助(水上恒司)「命がけの手紙」

碓井広義メディア文化評論家
趣里さんが演じるヒロイン・福来スズ子(番組サイトより)

第18週(1月29日~2月2日)の連続テレビ小説『ブギウギ』。

スズ子(趣里)は、大きな「喜び」と深い「悲しみ」の両方に遭遇しました。

お腹の中で大きくなっていく、赤ちゃん。

その一方で、「(病気を)絶対治して、結婚するで」と言っていた愛助(水上恒司)が、危篤に陥ったのです。

それでも最後の力をふり絞って、スズ子に宛てた手紙を書きます。

泣く、母のトミ(小雪)。

一文字ずつ、鉛筆を動かす愛助。その目元のアップ。

水上さんの静かな熱演が光ります。

その頃、スズ子は出産のときを迎えていました。痛みに耐えながら、頑張るスズ子。その顔のアップ。

そして、赤ちゃんが無事に生まれます。女の子でした。しかし、愛助は亡くなってしまいます。

愛すべき者の「誕生」と、愛する人の「死」。喜びと悲しみが交差する、荘厳な瞬間が丁寧に描かれていました。

愛助の死を知って、打ちのめされるスズ子。

「……なんで……やろ。なんで……ワテの大切な人は……早よういなくなってしまうんや……なんで……ワテも死にたい」

そう訴えるスズ子を、山下(近藤芳正)が泣きながら、たしなめます。

「あんたは……ボンの分まで生きなあかんのです! 生きてください! 頼んますわ! ワシらがでけることは何でもします! 何があっても支えますから……次に死ぬ言うたらドつきまっせ!」

ようやく、スズ子は愛助の手紙を開いて、読み始めます。

「スズ子さん、僕はスズ子さんに出会えて、ほんとうに幸せやった。約束を守れなくて、ほんとうに申しわけない。生まれてくる子が男の子やったら、名前は兜(かぶと)にしてください。僕みたいに弱い子になって欲しくないから、その名前や。生まれてくるんが女の子やったら、名前は愛子にしてください」

さらに・・・

「スズ子さん、つらいことがあったら、歌ってください。そして今、スズ子さんの横で、かわいい顔をしている赤ちゃん、見てください。その子は、僕らの宝物や。きっと、その子と一緒なら、何があっても生きていけるはずや。ほんまに……ごめんなさい」

愛助と愛子の名を呼び、手紙を抱きしめて、泣き出すスズ子。

看護婦長の東(友近)が部屋に入って来て、愛子をスズ子に渡しました。

母親を見て笑う、かわいい赤ちゃん。スズ子は涙を流しながら決心します。

「愛子、お母ちゃんな、あんたと一緒に生きるで! なあ、愛子。かわいいなあ」

スズ子の泣き笑いです。

そのあと流れたのは、以下のような映像でした。

愛助とスズ子と愛子の親子3人が、家の縁側に並んで座り、あたたかな陽光をあびています。青空の下、愛助がシャボン玉を吹き、愛子もうれしそうです。そうそう、「ラッパと娘」も聴こえてきます。

それは、ベッドで愛子と共に眠る、スズ子の夢でした。切なくも、温もりに満ちた夢。スズ子の顔には、やさしい微笑みが浮かんでいました。

愛助が命がけで書いた手紙は、スズ子と愛子の命を守り、明日へと送り出したのです。

「つらいことがあったら、歌ってください」という愛助の言葉通り、スズ子が運命の一曲「東京ブギウギ」に出会う日も、そう遠くありません。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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